ナイトウィザード
シナリオ#1.悪夢の陰に潜むもの
シナリオ概要
柏田睦月はかつて飛行機事故で両親を失っている。生き残ったのは自分と弟(正也=モリーダイバー)だけだった。しかし事実はこうだ。エミュレイターによって作為的におこされた事故。生き残ったのは自分だけ。エミュレイターは弟になりすまして睦月と共に生活している。そして、いつまでも両親を見捨てた睦月を苛み続けているのだ。高純度のプラーナを得るために。
しかしもはや睦月の精神は限界に近づいている。幾度にも渡って正也(メモリーダイバー)にプラーナを供給し続けたためだ。メモリーダイバーはプラーナの獲得のため、睦月に新しい生贄を要求するようになった。苦しみながらも、それに答えざるを得ない睦月。「もうこれ以上、何も失いたくない・・・、パパもママも死んだの。正也まで、失いたくはない。」
クライマックス。PCはメモリーダイバーの作り出した月匣の中でエミュレイターにとりつかれた睦月と戦うことになる。
プリプレイ
推奨クラス
聖職者、竜使いはワークスさえ変えなければ、クラスは別のものでも構わない。竜使いはある程度高い年齢のほうがよい。子供にすると設定以上つらくなる。PLが4人の場合は聖職者を推奨から外すこと。
大いなる者−輝明学園の神。守護神。
コネクション:秋月竜也。
ワークス:教師。
転生者−5年前の飛行機事故で死んだ。睦月に対し、奇妙な親近感を覚える。
コネクション:柏田睦月。
ワークス:高校生。
夢使い−久しぶりに旧友であるDr.クドラクの医院を訪れる。
コネクション:Dr.クドラク。
ワークス:風来坊。
聖職者−パトリシア・フォルツァ(銀十字騎士修道会)の部下。
コネクション:パトリシア・フォルツァ。
ワークス:宗教家。
龍使い−伶子から仕事の依頼。輝明学園の生徒の調査。
コネクション:伶子・アーラッカー。
ワークス:私立探偵。
オープニング
1.龍使い
5年前。「竜使いのPC]はあるエミュレイターを追い詰めていた。エミュレイターの名は“メモリーダイバー”。「竜使いのPC]がダイバーを倒すが、その死体から黒い悪魔のような影が抜けていく。「オレは死なねぇ。コアを破壊しない限り、何度でも蘇る。次に肉体が復活したときには、真っ先にオマエを殺してやるぜぇ」
そういって影は消えていく。
伶子・アーラッカーから仕事を頼まれる。「最近、輝明学園の女子生徒が、夜の繁華街の、そーゆートコに出入りしてるってウワサ、ちょっとつかんじゃったんだけど、ちょっと記事にしてみたいかなぁ、とか思って。調べてくれない。」
調査料は10万円。
2.聖職者
フォルツァからの命令。東京・池袋にある輝明学園に潜入せよとのこと。そして画像が送られてくる。16〜17歳の少女。「この少女の調査が今回の仕事です。彼女はまだ覚醒はしていないようですが、ウィザードとしての素質を持っているようです。他の機関に発見される前に、直接私のところに連れてきなさい。仲間になるのを拒否するようであれば、その後の処理はあなたに任せるわ。」できるだけ冷たく言い放つとクールだ。
3.夢使い
久しぶりに旧友であるDr.クドラクの医院を訪れる。「久しぶりだな。[夢使いのPC]。実はオマエに頼みがある。昨日来た患者なんだが、ちょっと気になってな。調べてみてくれないか。・・・オレの勘が正しければ、お前の力が役に立ってくれるハズだ。」
柏田睦月の調査を依頼される。
4.大いなる者
自分のクラスの出席をとる。しかし、名簿から何人かの名前が消えている。生徒に確かめようとすると「先生、そこの席は元から誰もいないんですけど・・・」という答えが返ってくる。
最近、生徒が連続してその存在を消されている。気がついているのは自分だけのようだ。
*このクラスは転生者と同じクラスということにしてもよい。
5.転生者
授業中、突然奇妙な感覚(違和感)を感じる。突然背中に氷柱を差し込まれたような感じ。柏田睦月が近くにいた女子生徒に話しかけている。話しかけられた女子生徒は「[転生者のPC]のほうをチラッと見ると、ポッと顔を赤らめてそむける。女生徒は睦月となにやらヒソヒソと話している。*この女生徒は後で行方不明になる。
リサーチ
リサーチでは各PC&NPCが出会うシーンが一番重要である。後はイベントシーンをきっちりやればOK。月匣に進むことができるはずだ。
特に、できるだけ多くのシーンに睦月を登場させるよう心がけること。
また、リサーチシーンにおいては、シーンが変わるごとにプラーナ、HP、MPは全快させてよい。
イベントシーン
イベントは、孤立してしまったPCに優先的に割り振るようにすると、セッションがうまくいきやすい。また、できるだけ早く睦月に弟がいるという情報を与えること。
最後に「睦月を探す」とダイブ&クライマックスへ移行する。
・ イベント:輝明学園
睦月によってだまされた女子生徒が行方不明になる。PCの一人が、「行方不明になった女生徒は[転生者のPC]に呼び出されたまま行方不明らしい」というウワサを聞く
実は睦月が「[転生者のPC]が、――さんに用があるって、体育館裏で待ってるって。」という誘い方で女子生徒を引き込んでいるのだ。よって嫌疑が[転生者のPC]にかかる。
このイベントは他のかかわりの薄いPCが [転生者のPC]とからむ因子を作り出すためのギミックである
・ イベント:フォルツァと連絡を取る−その1
[聖職者のPC]はいつでもレイ・フォンでフォルツァと連絡を取ることができる。情報が欲しい場合は情報シーンのデータを参考に答えること。
・ イベント:正也(メモリーダイバー)と接触を取る
正也は小学5年生である。下校中なのか。背中にランドセルを背負っている。「お兄ちゃんたち、お姉ちゃんのトモダチ?」
彼からは不自然な様子は感じられない。「ちょっと頼みがあるんだけど、お姉ちゃんが最近、夕方になって出かけるんだ。そんでもって朝方になって帰ってくるの。ちょっと気になって。お兄ちゃんたち、調べてみてくれないかなぁ。でもこのことは秘密にしておいて欲しいんだ。・・・あの、変な噂とかが立つと、嫌なんだ。」
これは頭のいい正也(メモリーダイバー)が仕掛けた罠であり、ミスリードであるとともに、シナリオを円滑につなげるためのギミックである。頭のいいPCは正也をシロと思った上で、睦月と接触を取ってくれるかもしれない。正也=メモリーダイバーはまだまだ未熟なウィザードであるPCのみを罠に落とそうと企んでいる。
ただし、[竜使いのPC]が登場していた場合には「竜使いのPC]のみ「知覚ジャッジ:18」を行わせること。成功すると、正也の影が、ちらりとゆらめいたように感じる。
・ イベント:繁華街
夜、繁華街へ行くと、16〜18歳ぐらいの少女(睦月)が男を連れて怪しげな店へと入っていくのを目撃することができる。店は会員制のパブで、PCは基本的に入ることはできない。朝方まで待っていれば彼女が一人で出てくるのに出くわすことができる。彼女はPCが話しかけようとすると、そのまま逃げるようにして走り去ってしまう。
・ イベント:睦月に事情を訊く
睦月は一見人当たりのいい控えめで物静かな女性だ。PCが話を聞くと、困惑したような眼差しを返す。「ちょっとよく分からないんですけど・・・」
彼女は[転生者のPC]と同じ癖や特徴を持っている。それが何であるかはGMが適時決めること。ただし無理をして決める必要はない。
「ワ、ワタシ・・・」話が核心に迫ったちょうどその時、睦月がバタリと倒れる。クドラク医院に連れて行くことになる(ことが多いだろう)。
・ イベント:夢の中
誰かの夢の中に[夢使いのPC]はいる。飛行機が堕ちていく。そして爆発。炎上。飛行機の中の映像が頭の中に入り込む。機内には煙と血、悲鳴、そして小さな男の子を抱えた女の子。[転生者のPC]の前世での姿もある。母親(もしくは父親)の体がひしゃげた窓の間に挟まれている。首が妙な方向に曲がっている。「正也を連れて逃げなさい。早く! 正也のこと、頼んだわよ」泣くのをぐっとこらえて、走り去る女の子。正也は動いていない。
後ろから、飛行機の陰が追ってくる。恐怖に引きつった顔で、何度も何度も後ろを振り返りながら逃げる女の子。陰が低くうなるような声で語りかける。
「お前は親を見捨てたのだ。お前が親を殺したのだ。自分だけ生き残りやがって。恥ずかしくないのか? 弟も、オレがいなけりゃ一秒だって生き残れねえ。 もっと悲しめ! もっと苦しめ! ひゃはははぁ!」
ここで[転生者のPC]は思い出す。自分が睦月の父親(もしくは母親、PCと同性にしたほうがよい)だったことを。そして最後に見たことを。墜落の直前、黒い影が機内に入り込み、エンジンを停止させたことを。
・ イベント:Dr.クドラクの医院
「お前の話では、あの娘はエミュレイターにとりつかれている可能性も高いな。もしもの場合は連れてこい。手遅れでなければ治療してやる。有料でな。」「吸血鬼が人助けしたなんていわれたら、とんだ恥さらしだろ?」
・ イベント:伶子・アーラッカーからの連絡
龍使いのレイ・フォンに連絡が入る。「どう? 調子は?」何か様子がおかしい。いつもの伶子ではない。「や、やめてもいいのよ。な、なんてね。アレ? なんかおかしいな。何でそんなこと言うんだろう? アタシ。」
とりとめのない話をされた上で、一方的に切られる。これは[竜使いのPC]に「なんかヘンだな」と思わせるのが目的である。
・ イベント:フォルツァと連絡を取る−その2
[聖職者のPC]はいつでもレイ・フォンで連絡を取ることができる。睦月がエミュレイターに侵されていることが分かった時点で連絡をとった場合、「なるほど。それは残念ね。いい素質を持っていたのに。だからこそ狙われた、ということはあるかもしれないけど。・・・あなたへの命令を変更します。これ以上の調査は必要ありません。エミュレイター・柏田睦月を殺しなさい。我々はウィザードとして生まれた以上、エミュレイターと戦う以外の選択肢など、ないのよ。」
と冷たく言い放ってレイ・フォンを切る。なお、PCがこの連絡を失念している場合、フォルツァからレイ・フォンに連絡があることにしてもよい。
・ イベント:睦月が消える
睦月が忽然と医院から消えてしまう。後を追うことは可能である。
・ イベント:睦月を探す
夜、睦月は一人、繁華街に入っていく。睦月は不似合いな濃い化粧をしている。男を誘って会員制のパブに入る睦月。そこには正也(メモリーダイバー)が待っていた。頭から吸い尽くされる男。「かー、ぺっ、ぺっ、欲望にまみれた魂てのはうまくねぇ。こんなしけた魂じゃ、腹の足しになんねぇんだよ。オイ」そう言ってからPCの方を向く。「ようやくおそろいかい。ウィザードのヒヨッコどもが。オレに食われるためにノコノコ誘い出されたってワケだ。」「[竜使いのPC]、ようやくアンタに借りが返せるぜぇ。後ろを見な。」PCやってきた方向から、伶子・アーラッカーが現れる。虚ろな目をしたまま、夢遊病患者のようにふらふらとしながら近づいてくる。「これがオレの復讐だぜぇ。さぁ、夢の世界へご招待、っと。」
正也=メモリーダイバーは「夢語り」を使用し、伶子の夢の中へと潜り込む。PCたちも全て強制的に引きずり込まれる。
足元の背景がサッと変わり、あたりは迷宮へと姿を変える。壁と床がさまざまな記事と思い出で埋め尽くされている。[竜使いのPC]との思い出も記事として壁に貼られている。「ここはもう、伶子の夢の中。オレの月匣の中だ。コアは柏田睦月。こいつを殺せばオレも死ぬ。だが、お前らにこいつが殺せるかな?」
情報シーン
調べたい情報をPLが宣言したら、適時そのためのシーンを作ること。
情報は、PLがキーワード(睦月のことを調べる、等)を言い、知力ジャッジに成功したら教えること。ただし、目標値は目安に過ぎない。GMは状況によって望むだけの情報をPLに与えてよい。目標値が設定されているのは、ただ単に1セッション中にダイスを振る回数を調整するためである。
苦労して足で稼いだ情報なのか、レイ・フォンやネットを使ったのか、前から知っていたことなのか等はPLの演出に任せてよい。
ただし、*のついている情報はGMのみのものである。クライマックスまではPLに教える必要はない。
・ 情報:伶子・アーラッカー
14:最近、調子がおかしい。夜うなされるとも言っている。
18:何者か、エミュレイターに操られている。
* *操っているのはメモリーダイバー。[竜使いのPC]を事件に引き込むために利用された。
・ 情報:転生者の前世
28:[転生者のPC]の前世は睦月の父である。
・ 情報:柏田睦月
判定なし:高校2年生。弟がいる。最近ノイローゼ気味で、病院に通っている。
12:[転生者のPC]と同じ癖や特徴を持っている。それが何であるかはGMが適時決めること。
14:5年前、飛行機事故で両親を失っている。事故で生き残ったのは彼女と弟の正也(メモリーダイバー)だけだった。
16:現在は子供のいない叔父夫婦に引き取られ、暮らしている。そのせいか、いつも弟と一緒にいる。
18:最近夜、よく繁華街に繰り出している。
*実は弟は既に死んでいる。現在の弟はエミュレイターに体を貸すことで、仮の命を保っている。しかし、既にその意識はエミュレイターのものとなっている。
*彼女自身もエミュレイターに侵食されている。
・ 情報:柏田正也(メモリーダイバー)
10:小学5年生。友達はあまりいない。
12:5年前、飛行機事故で両親を失っている。事故で生き残ったのは彼女と弟の正也だけだった。
14:現在は叔父の家で暮らしている。いつも姉と一緒にいる。
16:飛行機事故の際、1度は完全に死亡かと思われたが奇跡的に一命をとりとめる。医者は信じられないと言っていた。
*実はエミュレイターである。姉を苛むことで、高純度のプラーナを生み出し、それを糧に生きている。決して正体のバレるようなことはせず、密かに睦月のプラーナだけで暮らしていた。(彼がエミュレイターであることが分かったあとは、正也とリサーチにおいて会うことはできない)
*最近になって、睦月のプラーナも底をつき始めてきた。そこで彼は睦月を使ってプラーナを集め始める。しかし睦月のようにランクの高いプラーナを生み出すものは少なく、未だに新たな奴隷を見つけ出すには至っていない。メモリーダイバーは焦り始めた。このままでは自分の「チカラ」が保てなくなる可能性もある。巫女クラブやその他のウィザードがいない隙を狙ってまだ力の弱いウィザード(PC)からプラーナを狩り、一旦身を隠すことにしたのだ。
・ 情報:巫女クラブ
10:現在、「全国巫女コンテスト(通称巫女コン)」に出場のため、京都に行っている。
12:去年までは2年連続で優勝。3連覇に期待がかかる。
・ ウィザードの教師たち
10:現在、研究会のためニューヨークに出張中。
12:実は他のエミュレイター退治のために出かけている。
・ 行方不明の生徒たち
10:帳簿(出席簿)上では「元からいなかったかのように」改竄されている。
12:[大いなるもののPC]以外は、その生徒がいたことさえ覚えていない。
*生徒たちは全て、睦月によって誘い出され、正也(メモリーダイバー)にプラーナを奪われてしまった。
*正也=メモリーダイバーはプラーナを手に入れることによってより強い力を手にいれ、今や他人の夢と現実を操作するほどになっている。
*彼の正体は、5年前に「竜使いのPC]が倒しそこなったエミュレイター“メモリーダイバー”である。
エンディング
エンディングは以下の4通り。
このシーンでは、大いなるものが「小さな奇跡」を使うことによってエンディングの結果を変えることができる。
・ メモリーダイバーを倒し、睦月が生きている。
・ 睦月は死んだが、「小さな奇跡」を使った。
・ 睦月は死に、「小さな奇跡」も使っていない。
・ 全滅した。
@ メモリーダイバーを倒し、睦月が生きている。
睦月はクドラクの元で、次第に回復し意識を取り戻す。しかし、再び目覚めたそこには、今までの弟も、家族ももはやない。自分の犯した罪に苛まれる彼女。転生者のかける言葉が彼女にとっての救いとなればよいが。
また、メモリーダイバーはコアを破壊しない限り何度でも蘇ることのできるエミュレイターだ。「竜使いのPC]は今回もメモリーダイバーとの因縁に終止符を打つことができなかったことになる。果たしてこれでよかったのだろうか? その結論を出すことも、今はまだ困難である。
A 睦月は死んだが、「小さな奇跡」を使った。
睦月のために「小さな奇跡」を使った場合である。半年後、子供のいなかった叔父夫婦に子供が生まれる。こころなしか、その子供の顔は「彼女」に似ているような、そんな気がする。
B 睦月は死に、「小さな奇跡」も使っていない。
彼女は死んだ。転生者はようやく発見した前世の因縁を再び失ってしまった。
C 全滅した。
薄れゆく意識の中、メモリーダイバーの高笑いが聞こえる。彼は再び闇の中へ消えていく。もはや、どんなウィザードもあのエミュレーターを見つけ出すことはできないだろう。そう、彼は悪夢の陰に潜む者なのだから。