人嫌いなこの花を、生垣にするのはどんな人物なのだろう。
彼女はいつものように校門をくぐり、 家に続くまっすぐな道を歩いていた。 太陽は西に傾いて、ほぼ60度。 秋と言うにはまだ暑い日の午後である。
「加奈子〜ちょっと待ってよ」
すたすたと一人で歩いていく彼女を追いかけて、
友人が走ってくる。
加奈子は足を止めて、友人が追いつくのを待った。
「まっすぐ帰るの?」
「うん。別にやる事もないし・・・」
二人とも部には所属していたが、さほど活動していない。
「そうだね」
学校を出て、商店街を歩いていく。
商店街を抜けたらそこでさよなら。
約10分ほどの付き合いを毎日繰り返している。
「加奈子って、たくさん友達持ってるよね」
「そうでもないよ」
「いや。いるって。人あたりいいし」
「そう見えるだけだって」
「そんな事ないよ」
「美奈子のほうがよっぽど親しい人多いんじゃない?」
「私の場合はねえ、限られた人とだけだよ。
加奈子みたいに社交的じゃないから」
「私のは社交的ってのとは違うと思うよ」
(ただ、人に合わせてるだけ)
「私だったら切れてそうなところでも、上手くやりこなしていけるし。
そのへん大人だよね。人間ができてる」
「もめごとに使う体力が惜しくてね。単に横着なだけなのよ」
(関わりたくないから)
「それでも、偉いと思うよ。加奈子がいれば、大体の”事”は片付くからね」
「あれを片付いたって言うかなぁ?」
「言う!」
人が増えれば、そこに生じる問題も鼠算式に増えていく。
「私ね、そう簡単には人のこと信用しないんだけど、加奈子は信用できる。
間違った事言わないし」
「それは、買かぶりすぎ。私より、美奈子のほうがよっぽど信用できるよ」
「お?加奈子に言われると嬉しいね。
他の人に言われると変に勘ぐっちゃうけど・・・」
「これだけは、自信もって言えるよ」
「ありがと。じゃ、またここで・・・」
「うん。またね」
二人は商店街の出口で別れた。
美奈子は良い人。きっと裏切ったりはしないだろう・・・
いや、美奈子にだたら裏切られても良いかな。
裏切られてもいい・・・そう思えるまで全てを疑う。
そうして、疑うものが何一つなくなって・・・やっと信じられるようになる。
裏切られてもいい・・・そう思えるまで。
全てを。
加奈子は歩きながらポケットに手を入れた。
いつもと何一つ変わらない情景の中、同じ動作を繰り返す。
鍵を取り出し、ドアを開け、無言のまま靴を脱いだ。
そのまま二階の自分の部屋へ向かう。
鞄をベットの上にドサッと置き、窓から庭を見下ろすと、
白い夾竹桃
の花が咲いていた。
