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 プログラマー日常用語

■営業 【05/22】
■仕様追加
■納期
■脳内計画

■営業【えいぎょう】
同じ集団に属していてこうも個人の利益が相反する役割も珍しい。 プログラマー立場で考えた理想的な仕事が「単純な」構造のコンテンツを「長期間」「複数人」で担当することだとすれば、 営業のそれは、彼らに「複雑な」構造のコンテンツを「短期間」「少人数」で担当させることである。 これは、純粋にコンテンツの受注、売り込みなどの面から クライアントに近い立ち位置で商品価値を設定せざるえない状況から来るもので、 自社に戻れば(開発4:営業1くらいの)圧倒的人数比率の中で 同じ空気を吸わなければならないことを考えても、進んで恨まれようとする意図はないと思われる。 役割の本質からいけば誰の意向がどうであろうと、 最終的に所属している集団に利益をもたらせば正しいことになるが、実際は 誰の意向も無視する形なった挙句、会社が維持できる利益しか出せない者が平均である。 特に優れてない普通のプログラマーでもコンテンツは作れるが、 コンテンツを商品としてを扱う営業は優れていなければ利益は出せないのだ。 誤解されている方も少なくないだろうが、決して口が上手いだけで適正とされる職業ではない。 前述の性質上、その最大の活躍の場である受注や金額設定の駆け引きでは納期や人月といった開発者よりの部分ほど簡単に犠牲にする傾向あり。 しかし、不況状況下の買い手市場で、開発労力から想定できる適正な金額で契約を成立させるのが困難であることもまた事実である。 それぞれの立ち位置における仕事が比較的効率良く利益に結びついている限りは 尊重を忘れず、うまく共存することが集団に属する者として望ましい姿勢であろう。

■仕様追加【しようついか】
仕様(コンテンツの開発計画として正規に認められた設計)に新たな機能を追加すること。 設計が完璧であればある程プログラムの完成像は与えられた役割に必要な機能を追求する方向に向かう。 特化したシステムに追加要素を加えることは予期せぬ不具合の要因となりえることから、 プログラマーは仕様追加を極端に嫌い、当然ながら自ら発動させることは稀である。 他者によってもたらされる場合、実装された各機能と想定していたそれに開きがあった、 他の類似コンテンツと比べた結果不満を覚えた、あまつざえあまりにスムーズに計画が進行したために先方が欲を出したなど、 ほとんどが本来は仕様や設計以前の段階で解決していなければならない問題を抱えている。 所詮プログラムは人から与えられた動きしか行わない。想定外の動作不良も確実に人が原因となって作り出すものである。

■納期【のうき】
1つのコンテンツが完成するまでの正常な流れがアイデア検討→計画立案→実装作業→デバック→完成という手順であるなら、 全ての工程内で予想される時間にいくらかの余裕を合わせたものが必要開発期間として算出され、その後に発売日や公開日が決まるのが妥当である。 しかし、一見当たり前のように見えるこの流れもコンテンツの話題性確保や会社としての都合が絡むと途端に実現性がなくなっていく。 何故なら自社企画であろうと受注仕事であろうと提案される計画はまず発売日が念頭に置かれるからだ。 そこからアイデア検討→(計画立案)→制作作業→(デバック)→完成という手順になる。 年度末決算やイベント開催といった要素は、コンテンツのアイデアよりも先に発売日が決まるという笑えない冗談すら簡単に作り出すのである。 もちろん必要となる作業時間や品質管理ための時間(デバック)が考慮に入る余地など存在しない。 1ヶ月先のイベント用コンテンツに2ヶ月掛かる筈の工数の開発を求められることも決して少なくないし、そんな離れ業が存在理由と化している開発会社すらある。 つまりは「納期≠必要開発期間」ということであり、その事実はプログラマーに、わざわざ物作りを生業にして生きる者の感情と、営利を目的とする集団に属する者の思想の間で葛藤し妥協点を探すことを義務付けている。

■脳内計画【のうないけいかく】
特に良心的なプログラマーでなくても、お金を取る以上、または信頼関係の構築などの観点から、なるべくクライアント(制作依頼者)の意向に添ったコンテンツを提供しようとする気持ちくらいはあるものだ。 しかし現実にはどんな優秀なプログラマーであろうと、作れるものは仕様書やイメージ画面のサンプルなど、目に見える形で提供されている資料から読み取れる範囲の内容でしかない。 「脳内計画」とは主にクライアント側の一部の人間が、そういったプロセスをおざなりにし人任せにした挙句、開発末期に発動させる行為を正当化するための理屈である。曰く「俺の想像していたものと違う!」。 2003年5月現在、人の脳内に発生したイメージを具体化し他者に完全な形で伝達するような発明は筆者の知る限り存在しない。 依頼者と製作者が同じモノを視界に捉えることができるとしたら、それは今だ入念なコミュニケーションの末の産物でしかありえないのだ。

*ちなみにささやかな抵抗として最近は開発会社に就職すると初めに必ず「外部とのやり取りは必ずメールなど記録に残るもので行うこと」という御達しがある。

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