ココおかしいと思いませんか?No.40
若い選手の芽を摘みかねない目の前の利益しか考えない過剰な取材(2009/5/6)


日本のスポーツ振興を妨げる最大のガンが国民に最も影響力のあるTV局や新聞社の報道姿勢。マスメディアは目の前の利益を最優先にして若い選手を徹底的に取り上げてスターシステムに乗せてメディアが儲かることを最優先にしていて、その選手が持っている才能を最大限に引き出すにはどのような報道の仕方をすれば良いのかなど微塵も考えていない。

最近で言えば浅田真央や石川遼の10代の選手に対するマスメディアの取り上げ方は常軌を逸している。浅田に関しては最近というよりもトリノ五輪シーズンからずっとであるが、安藤美姫のコーチであるニコライ・モロゾフは2007-2008シーズンで安藤が取材攻勢によって潰されたように2008-2009シーズンは浅田がメディアによって潰されたと4位に終わった世界選手権が奮わなかった原因にメディアによる過剰な取材を挙げている。

サッカー界にも久しぶりに10代で活躍する選手が出てきた。浦和レッズに所属する17歳歳の原口元気と18歳の山田直輝だ。当然のごとくメディアは飛びついている。その選手のことを考えていない振る舞いに浦和の監督のフィンケは5/5の試合終了後、メディアの報道姿勢について苦言を呈している。

メディアは当然のこととして視聴者にも理解してもらいたいことなのでここでこの発言を紹介する(全文はこちら)。

”皆さん今日は根本的なことについてひとつお話したいと思います。もしかしたら記者の皆さんには都合の良いことではないかもしれませんが、非常に大切なことですし、これは私から記者の皆さんへのお願いでもあります。私は数週間前から何度も何度も警告していたのですが、あのように実力もあって、もちろん才能のある若い選手が毎日のようにメディアに出てしまうのは良くないことだと思います。実際に彼に対しても悪影響を与えることが十分あるわけです。現在の原口元気の状態を見ますと、やはり色々な意味で自分が問題を抱えている状況だと思います。もちろん彼がリーグに出て活躍した時期もありました。しかし今日のようなパフォーマンスを見ると私は悲しくなります。なぜなら彼の持っている能力、才能を発揮できていないからです。やはりここ数週間、ほぼ毎日のように彼について書かれていました。彼がインタビューを受けたり、彼についての記事が出ていたり、写真が大きく出ていたり。もちろんこれは日本なので日本の状況かもしれませんから、できるかぎりリスペクトしたいと思っています。もし私がドイツにいて、ドイツで同じことが起きていれば、私は彼を約3ヵ月間メディアには一切出さないようにするでしょう。なぜなら彼が毎日取り上げられるということをリスペクトする必要がないからです。大切なのは彼がサッカー選手としてのキャリアに集中すること。そしてサッカーという一番大切なプレーに集中することです。今日のプレーに関しては残念ながらあまり良くありませんでした。そのことに悲しんでいます。しかし忘れてはならないのは、まだ彼が非常に若い選手だということです。これは非常に真面目なテーマですので皆さんにもはっきりとお伝えしたいのですけど、私は謙虚な意味でも、ここで大きく自慢するわけではないですが、実際に若い選手たちをたくさん育ててきました。ドイツでも私の下で育った選手が代表選手になったり、現在とても大きなヨーロッパのクラブでプレーしている選手という例はたくさんあります。彼らは17歳、18歳、19歳の時に私のところに来てプロとしての道を歩み始めたわけですけど、その時私はこれらの若い選手を数週間、もしくは数ヵ月間メディアに一切出さないようにしました。そのようなことを現地の記者たちもリスペクトしてくれました。なぜかというと選手の成長を考えれば、これは大切だと理解してくれたからです。しかし私は日本にあくまでもゲストという形で来ていますし、日本のやり方があるのも知っています。しかし、この間記事でもフィンケという新しい監督が情報を規制しているという報道がありましたが、これは事実ではありません。大切なのは選手が成長していく環境を整えることです。しようがない。皆さん、一人の選手がまた良いパフォーマンスを見せることができるように、また、彼を助けなくてはいけないのは監督の仕事なのです。その仕事をするうえで誰も助けてくれません。大切なのは長い目を見ること。この一人の優れた選手が1年後2年後3年後、非常に優れた選手になれるように助けることです。これが大切な私たちの仕事です。皆さん、私が日本にゲストとして来ていることは理解していますし、もし皆さんが、私が言ったことに関して傷つけられましたらこの場で謝罪をしたいと思います。ただし、私が情報を規制しているとか一切ありません。大切なのは選手の成長です。”

オシム前日本代表監督も少し活躍しただけでメディアがどんどん取り上げて、活躍しなくなったら知らんぷりするのは選手にとって良くないことだと苦言を呈していた。日本のメディアの目の前の食い扶持を消費してあとは知ったことではないという姿勢が個人にしか注目できない日本のスポーツ文化を貧困にしている最大の原因であろう。
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