ココおかしいと思いませんか?No.28
箱根駅伝の弊害


1987年に日本TVで完全中継が始まって以来正月の風物詩となり、絶対的とも言える人気を誇っている箱根駅伝。箱根駅伝が世界レベルの選手育成の妨げになっているという指摘もあり、改めてその弊害について考えてみたい。

箱根駅伝のHPに行き、データベースを閲覧すると、箱根駅伝→五輪選考3大マラソン→世界選手権→五輪と箱根駅伝が世界への登竜門的な役割を果たしていると言いたげのページが出てくる。
ただ、箱根駅伝の人気が出て以降走った箱根駅伝出身者の五輪での成績を見ると2004年の諏訪の6位のみが目立つだけで後は惨憺たる成績しか残っていない。つまり、箱根駅伝で活躍した選手は五輪で結果を残していないことがよく分かる。諏訪にしても現在の佐藤悠基や竹澤のような大エースではなく、箱根のスーパースターは渡辺を筆頭に大学を出ると伸び悩み、結局は世界レベルには到達できていない。

箱根駅伝というのは10区間217.9kmで争う長距離駅伝だ。最短でも4区の18.5km、最長区間は5区の23.4kmとなっており、ハーフマラソンの距離を超える区間が8区間もある他の駅伝では例を見ない長距離駅伝となっている。
箱根駅伝で勝つには絶対的なエースによる爆発力よりも10人の安定した速さと山上りに失敗しないことが肝心となっている。

2008年に優勝した駒澤大学は最もこの条件に当てはまっており、戦前の前評判通りに優勝した。駒澤は絶対的なエースはいないものの、10人の平均走力が高く、上位選手と下位選手の差が小さい金太郎飴のような選手を揃えてきた。
箱根駅伝を制するにはそれベストかもしれないが、世界レベルの選手育成という観点からすると物足りない選手しか生まれてこない。

日本人が長距離で結果を出すにはマラソンしか生きる道がないが(5000,10000mは到底太刀打ちできない)、マラソンも高速化が進んできており、五輪と言えばアップダウンの激しい難コースが定番だったが、北京では気温次第だがフラットコースのためタイムが上がる可能性がある。2012年のロンドンでは気温もそれほどでもなく北京以上に高速レースとなり、五輪も高速化していく可能性が出てきている。

日本人に最も欠けているのは高速レースに耐えられるスピードだ。10000m26分台を持つ選手の中で27分後半では太刀打ちできるはずがない。
19〜22歳というのはスピードを高められる時期でこの時期に高速マラソンに耐えられるスピードを養成することによって世界と戦える礎となるように思える。
二十歳前後でハーフマラソン強の距離に耐えられるように距離を踏む練習を重視するとスピードを養成することは難しい。ケニア人のように早熟で仙台育英出身のワンジルのように高校卒業して次のシーズンに26分40秒で走れるスピードがあるのならばそのままマラソンを見据えた距離を踏む段階に移行しても全く問題ないが、成長が比較的遅い日本人は高校卒業段階ではどんなに良くても28分台のスピードしか身につかないので大学年代でさらにスピードを磨く必要があるが、箱根駅伝は明らかにスピード養成の邪魔にしかなっていない。

箱根駅伝は正月に行われるということもひとつの問題となっているように思える。主要大学は10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝、そして大本命の箱根駅伝のスケジュールとなっている。
当然4月から10月まではトラックシーズンで長距離にシーズンオフはない。短距離やフィールド種目はシーズンオフの冬季練習で次のシーズンの基礎を作り(冬季は木の幹を太くするような感覚でシーズン開幕直前からシーズン中にかけて調整を行う感じ)、冬季練習の充実度が翌シーズンの成績を大きく左右する。
しかし、大学長距離選手にとって最も重視する箱根がある限り、腰を落ち着けた練習を冬にこなすことができない。

箱根駅伝の長所はその圧倒的な人気によって長距離に取り組もうという子供達を多く生み出せることが挙がる。底辺が広がりピラミッドのように底辺が長くなれば頂点も高くなればいいが、ハーフを1km3分ペースで走る選手を大量に生み出し、選手層が台形のようになってしまっては元も子もない。
日本TVと読売新聞は視聴率が稼げ、部数が伸びれば万々歳でこのままで全く問題ないだろうが、世界レベルの長距離選手を育成したいのならば箱根駅伝はマイナス面の方が圧倒的に大きいように思える(駅伝利権から大手マスメディアで批判は出てこないだろうが)。
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