ココおかしいと思いませんか?No.21
チャレンジ精神を減退させる得点設定


フィギュアスケートは以前の相対的な旧採点方式からジャンプやスピンなどの個々の要素を積み上げた技術点と全体的な演技の評価の演技構成点を合わせた新採点方式に2004年より変更された。
個々のジャンプを評価するため回転不足もビデオで判定し、年度や大会ごとにバラつきはあるもののきっちりと取り締まる傾向にある。

3回転ジャンプに挑戦して回転不足のジャンプになると評価するときは3回転から2回転ジャンプにダウングレードされた得点をベースにGOEで加・減点する。回転不足のジャンプなのでもちろんジャンプの質は悪くGOEで減点される。ということは3回転ジャンプに挑戦しながら質の悪い2回転ジャンプ分の得点にしかならないということだ。

例えばトリプルアクセル(3回転半)を武器にしている浅田真央や中野由加里がトリプルアクセルに挑戦して回転不足だった時の得点はまずダブルアクセル(2回転半)の基礎点の3.50点から減点され2点台の得点が予想される。トリプルアクセルの基礎点は7.50点で成功すれば7.50点近辺が見込まれるが、回転不足に加えて転倒でもしようものなら転倒による減点1を引くと実質1点台の得点しか獲得できないことになる。
それに対してダブルアクセルはシニア選手にとっては非常に簡単なジャンプで、相当余裕を持ってジャンプできる浅田の場合は(トリプルアクセルも可能なほどのジャンプ力があるのだから当然だが)、ステップからの大きなダブルアクセルで基礎点の3.50点+大量の加点がもらえ、2007年のスケートカナダでは加点1.4点を加えた4.90点をダブルアクセルで稼いだ。
トリプルアクセルは女子選手には非常に難しく価値あるジャンプだが、浅田とて回転不足や両足着氷、最悪の場合は転倒の可能性もかなりある。回転不足だけなら2点台、転倒があれれば1点台、両足着氷で済めば6点付近でまずまずだが、ほぼ100%5点近く稼げるジャンプがあるのならば絶好調や状況的に相当追い込まれない限りトリプルアクセルを封印するのが賢いやり方となってしまい、観客の立場から見てもあまり面白くないダブルアクセル連発を見せられてしまう。

スケートカナダでの浅田真央や韓国のキム・ユナはダブルアクセルを3回もフリープログラムに入れて安全に技術点を荒稼ぎする。

ここで何が言いたいかというと回転不足の時の得点の扱いである。トリプルアクセルに挑戦するような選手はダブルアクセルを楽にこなせる選手であり、トリプルジャンプでも同様に3回転ジャンプに挑戦できる選手にとって2回転ジャンプなど朝飯前である。
つまり回転不足だった場合はダウングレードせずにトリプルアクセルならトリプルアクセル、トリプルジャンプならその跳んだトリプルジャンプの基礎点を採用してGOEで大きく減点するようにしないと難しい技に挑戦する選手が減っていくことが懸念される。2回転がいっぱいいっぱいの選手が3回転に挑戦したところで全く回転が足りずに転倒するのでGOEで-3、転倒の-1で4点引けば問題ないだろう(演技構成点においても印象が悪くなるのでそちらにも響く)。

チートジャンプには厳しく対処するのは賛成だが、ダウングレードと大きな減点を恐れて保守的な演技ばかりではフィギュアスケートの発展は見込めないのではないか。事実浅田はトリプルアクセルを封印したり、3回転+3回転を出来る選手がトリノ五輪時のように安全に3回転+2回転で確実に得点を拾っていく傾向を見せ始めている。どんなスポーツでもリスクに挑戦し、それに打ち勝ってあっと驚くパフォーマンスを目撃したとき観戦者は興奮と感動を覚えるように思う。今のルールと運用方法ではリスクチャレンジではなく、無謀な挑戦になってしまい、安全運転の選手が大勢を占めてファンは物足りなさを感じることだろう。
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