スポーツコラムNo.58

あまりにも軽い罰となった大宮水増し問題(2010/11/29)


−毎試合水増し発表−

2007年にNACK5スタジアムが完成した1試合目から観客数水増しを行い続けていた大宮アルディージャ。
水増し発覚はホームのNACKスタジアムではなく、浦和レッズがホームとする埼玉スタジアム2002で発表された数字に対して浦和での入りとの違和感からだった。
大宮アルディージャは資料が残っているだけで2007年終盤戦のNACK5スタジアムこけら落としからNACK5スタジアムだけではなく、埼玉スタジアムや熊谷でも場所関係なく水増しを続けてきた。
2007年は4690人、2008年が25809人、2009年が48610人、2010年が32628人とほぼ丸3年で11万1737人の水増しを行ってきた。

そして大宮に下された処分は制裁金2000万円。これはサポーター間の暴動騒ぎで浦和に科された処分と同じで過去最高額となった。
また過去にはJリーグ側の対応が曖昧でベストメンバー規定に違反したとして広島が1000万円の制裁金を科されている例もあり、制裁金2000万円という処分に対して違和感を持った方も多いだろう。

実際に来場した観客数を正確に数えるというのはJリーグの根幹部分だ。先行のプロ野球がどんぶり勘定で適当な発表をしている中でJリーグが始めたこのシステムはスタジアムを訪れた観客一人一人を大切にし、スポンサーに対しても説得力のある数字で営業を行えるのでJリーグの一人一人きちんと観客を数えるという方針に対して筆者は非常に評価している。
しかし、Jリーグの方針を無視して水増しを行えば意味はなく、また水増しをしたことが発覚すればそのクラブだけではなくJリーグ全体の信用問題に関わる話だ。

この問題はサポーターが暴走して起きたものでも、解釈の相違から規定に違反したわけでもなく、クラブそのものが意図的に水増しを行ってきたというのは悪質だ。
大宮は水増しした数字を基にスポンサーに営業をして広告料収入を得ていたと思われるだけに制裁金2000万円で罰則になるのかという思いもする。また大宮はNTTグループがバックについているだけに多少の制裁金は痛くも痒くもないだろう。

大宮はJ1,J2問わずJリーグ全体に迷惑をかけたわけであり、制裁金2000万円で済んだのは納得できないと考えている人が多いだろう。これ以上水増しをするクラブを出さないためにも最低でも何点か勝ち点をはく奪する処分が必要だったと思う。

−他のクラブでも水増しが?−

筆者は昨年からJ2を主にCSで視聴しており、J1はJリーグアフターゲームショーをチェックする程度だが、昨年視聴していて観客動員数に違和感を感じたクラブが3つあった。
ひとつは今回水増しが発覚した大宮だ。大宮はNACK5スタジアムの収容数に対してそれほど席が埋まっているようには見えないのに収容率の高さに違和感を感じ、昨年埼玉スタジアムで行われた川崎フロンターレ戦でかなりの空席があるにも関わらず70%近い収容率となる4万人オーバーの発表を目にした時にこのクラブは水増ししていると感じていた。

2つ目は東京ヴェルディだ。大宮と浦和で埼玉スタジムで観客数を比較できると同じようにヴェルディとFC東京で味の素スタジアムの入りを比較できる。
ヴェルディは昨年バックスタンドはほとんど人がおらず、メインもほとんどいないような状況で平気で4〜5000人の発表を続けていた。FC東京が1階席をほとんど埋めた状況でも2万前後の発表でしかないのに両ゴール裏だけで4000人以上も入っているとはとても思えなかった(両ゴール裏というよりも実質ヴェルディ側のゴール裏だけ)。

3つ目は昨年新規参入した栃木SCだ。大宮と同様に日頃から数字が少し多いなという感じがしていたが、鳥栖戦での15857人発表で確信した。
栃木がホームとしている栃木グリーンスタジアム(グリスタ)は2009年当時はメインスタンドのみが椅子席で残りの両ゴール裏、バック側は芝生席となっていた(2010年はバックスタンドを椅子席に改修中)。芝生席というのは見た目よりも人は入らない。よって水増ししても観客に違和感を持たれにくく、水増しするには格好のスタジアムだ。
グリスタのメインスタンドは約6000席で両ゴール裏とバックスタンドの芝生席だけで約1万人も収容できるとはとても思えない。今年の改修で全体の収容人数は3400人も減ることになることも芝生席の定員を実際の可能収容人数よりも大幅に多く計算していることが良く分かる(ゴール裏も多少改修しているため3400人全てがバックスタンド改修による現象ではない模様)。ファジアーノ岡山のホームスタジアムのkankoスタジアムも公称2万人となっているものの椅子席15600席に芝生席を加えて2万人としているが、実質18000人前後が限界だろう。それだけ芝生席の収容人数の計算はいい加減なのだ。

東京ヴェルディと栃木SCに関しては2009年のことで今年水増ししていたかは分らない。他のクラブでも水増ししていたクラブもあったかもしれない(芝生席の多いクラブは怪しい)。しかし、大宮の一件を機にどのクラブも観客数を正確に数えるJリーグの方針を改めて肝に銘じしてもらいたい。
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