スポーツコラムNo.57

大メディアは報じることが出来ないほど一気に崩壊したプロ野球の視聴率(2010/8/20)


−人知れず危機的状況を迎えた視聴率−

プロ野球というのは親会社の宣伝を主とし、親会社の節税ツールとして存在していると言っても過言ではないほどこの二つの要素が非常に大きい興行だ。

毎日TV中継やニュースで大きく扱われることによって人気を維持し、親会社に多大な利益をもたらしてきた。
巨人戦中継のTV放映権料は巨人だけではなく、その他のセリーグ球団にとっても大きな収入源だったものの2007年から毎年大きく中継数が大きく削減され、2010年は現在のところ25試合しかナイター中継はされていない。

ビデオリサーチの歴代巨人戦視聴率の表を見るとその人気の凋落ぶりに愕然とするだろう。
現在TV業界そのものが徐々に縮小している衰退産業とはいえ、TV離れを遙かに上回る速度で巨人戦の視聴率は大きく下がっている。

特に今年の視聴率は一気に底が抜けている。メディアの中では大人気で特にNHKでは他スポーツを押しのけて野球ばかり報道しているにも関わらず、7月は月間平均4.0%というアメリカの視聴率かと思うほど常識を超えた低視聴率となっている。

視聴率に詳しくない方のために視聴率の目安を簡単に説明すると、今の時代だとゴールデンタイム(19〜22時)の視聴率が二桁を切れば打ち切り対象で、5%を切るような番組はTV東京を除けばほとんどなく、後番組の準備が出来次第即刻打ち切りになる。

今年のプロ野球中継はゴールデンタイムで3.1%という歴代最低のとんでもない低視聴率を叩き出している。
このくらいの視聴率になると100%確実に、大多数の視聴者が拒否反応を示してザッピング中にプロ野球が映ると即チャンネルをほとんどの人が変えていると言えるだろう。

プロ野球、特に巨人はJリーグとは違い地元の地域よりも全国展開が命である。その生命線となるのはいかに多くメディアに露出することにある。
しかしメディアに露出してもほとんどの人に拒否反応を示されているというのはあまりに衝撃的だっただろう。

−報じないことが最大の防衛手段−

巨人戦の視聴率が低下傾向を示していた時は新聞・TVを含む多くのメディアで巨人戦の視聴率の話題が報じられていた。

しかし、この3.1%の衝撃はあまりにも大きく、洒落にならなかったのか大メディアで報じていたところは筆者が知るところひとつもない。

この数字を適切な解説付きで報じてしまうと全国的人気が生命線の巨人がいかに国民から見放されている存在にも関わらず、毎日毎日押し付け報道をしているギャップが鮮明になり、多くの人がメディア自身の信用に対して疑いを持ちかねないことになる(日本は他国に比べてメディアを信用する人の割合が高い)。

プロ野球と大メディアは一心同体とも言っていいほど密接に繋がっている(プロ野球だけではなく高校野球も含まれる)。大メディアが最も利益になるスポーツはプロ野球でそのプロ野球を殺すことはメディアの大きな収入源が絶たれることを意味する。他のスポーツを育てれば良いのではと思ってしまうが、裏社会との関係もあるとみられ、そう簡単に物事は行かず、とにかく野球を生き延びさせようとNHKも民放も必死になっている。

よって月間視聴率4.0%や歴代最低視聴率3.1%を野球と関わり合いの深い大メディアは黙殺し、都合の悪い話題は無視することが近年のトレンドになっており、それだけ余裕がなくなっていることを示している。

野球と共に大メディアが滅んでいくのか、それとも本当に切羽詰まった状況に陥った時に野球を切るという手段に出るのか生暖かく見守りたいと思う。どちらにせよプロ野球もTV・新聞もかつての隆盛が再び訪れることがないことだけは確かだ。
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