スポーツコラムNo.40

浅田真央はこのまま沈むのか(2)(2009/11/12)


−政治的に負けている日本−

日本人で相手のミスを待つことなく実力でメダルを取れる可能性があるのは浅田真央と安藤美姫の二人で韓国のキム・ヨナ、地元カナダのジョアニー・ロシェットの4人がミスがなければ180点を楽に超えられる可能性を持っている選手だ。

しかし、日本人の二人は昨シーズン共通の武器を失ってしまった。それはコンビネーションジャンプの2つ目のトリプルループだ。
男子選手ですらほとんど跳ばない難しいジャンプだが、浅田と安藤とアメリカの選手が武器としていたが、どんなに綺麗に着氷しても回転不足と判定され、キム・ヨナのコンビネーションジャンプのトリプルトゥループはどんなに回転が怪しくても回転不足を取られないのとは対照的だった。

エッジエラーに関しても浅田は苦しんだ。トリプルルッツはエッジの外側で踏み切らないといけないところを2007-2008シーズンにおいてイン側で踏み切ってしまうために常にエッジエラーと判定され、どんなに綺麗なジャンプを見せても「e」マークがついてGOEで減点され続けた。
そして浅田は2008-2009シーズンでエッジエラーを矯正しようとしたが、長年の癖がそう簡単に抜けるわけではなく、エッジはほぼフラットで踏み切れるようになってエラーはつかなくなったが、成功率が非常に低くなって使い物にならなくなってしまった。

対してライバルのキム・ヨナも浅田とは逆にトリプルフリップに問題があり、イン側踏み切りのところをアウトで踏み切っていたが2007-2008シーズンでは何も指摘されず浅田がエッジエラーで減点されていたのを尻目に毎回2点前後の加点をもらっていた。
そして2008-2009シーズンになってようやくエッジエラーに関して指摘がされたが、そのシーズンから導入された「!」に留まり、「e」が強制減点に対して「!」は必ずしも減点する必要がないため相変わらず大きな加点がついて実質問題なしという判定だった。

エッジに関してもトリプルループに関しても非常に強い日本勢を標的にした感じがあり、2大会連続の金メダルは取らせないという意志を感じざるを得ない。フィギュアスケートはことさら政治力がものをいう世界に見えるが、完全に日本は政治力で負けているように見える。

これだけ浅田真央の精神を乱す要素があり、キム・ヨナに対しては伸び伸び滑れる状態だと例え浅田が非常に強い精神力を持っていたとしてもこのような流れになるのは仕方ないかもしれない。

−早過ぎたシニアデビューが浅田を苦しめる−

浅田に対しては選曲が悪いという声が一般のファンも含めて非常に多い。浅田は19歳でまだ10代である。浅田の魅力は純粋さであったり天真爛漫であったりとイメージとしては天使というのがピタリと当てはまるように感じる。

浅田は15歳でシニアデビューをしたことにより、年々大人びた曲にしなければという呪縛にかかっているように思える。
同年代のロシアのレオノワが今年ジュニアからシニアに移行したということで元気一杯のはつらつとした演技を行っているのとは対照的で浅田もレオノワ系のプログラムの方が確実にフィットすると思われるだけに重苦しい曲しか使えないような状況に陥ったのはシニアデビューを間違えたツケが回っているとも言える。

浅田はトリノ五輪の年にシニアデビューをし、いきなりグランプリファイナルを制してその眩しいばかりの才能を見せ付けた。
しかし年齢制限で五輪に出場することは出来ず、金メダル級の実力を持ちながら4年後のバンクーバーまで待たないといけなかった。
シニア転向後は浅田のイメージに合った曲で滑っていたが、ここ数年は重苦しい曲で多くの人が浅田に合っていないと感じているのではないか。
五輪シーズン以外ならばそういう曲で滑って自分の幅を広げることも必要だろうが、五輪シーズンは自分にピタリとはまった選曲をしなければいけない。
男子の織田信成が自身のイメージにジャストフィットしたプログラムを組んだのに対して浅田はどうしても曲が合っていない印象を受ける。

今の曲ではキム・ヨナにはまず勝てないだろう(キム・ヨナがミス連発すれば別)。
トリプルアクセルの不安に曲のミスマッチと不安材料が多過ぎる浅田真央。楽観的に考えればシーズン序盤ということでトリプルアクセルの調子が上がっていないと考えることも出来るが、トリプルアクセルが3回のうち最低でも1回は決めないと全日本選手権3位以内すらも危ういのがシーズン序盤の出来だ。安藤、中野に加えて鈴木明子が台頭してきているのでどんなにミスを重ねても3位以内に入れた以前の状況とは変わっている。
浅田がバンクーバー五輪で金メダルを取るには最低でもトリプルアクセル2発成功に曲のミスマッチの解消と超えなければいけないハードルが非常に高い。苦手のショートプログラムを完璧にこなせれば展開は変わるかもしれないが、プレッシャーを受ける大一番で今までほとんど成功してこなかったショートが決まるのかは疑問が残る。しかし、それでも浅田にはショートからトリプルアクセルを跳ぶ攻めのプログラムしか活路はないのは確かだ。
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