−弱小国脱却のきっかけにできるか− ラグビーのワールドカップが2019年に日本で開催されることが先日決定した。恐らく日本人のほとんどにとって馴染みのない世界大会だろう。 ラグビーは南半球が特に力を入れている球技でニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの3ヶ国は自国の球技の中で最も世界に対して競争力のある競技だ(この3ヶ国は安定した実力を発揮する世界トップ3と言える)。この3ヶ国にアルゼンチンを加えた4ヶ国が南半球でラグビーが盛んな国だ。 この南半球4ヶ国に加えて毎年六ヶ国対抗で試合をしているイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド、フランスの5ヶ国(チーム)の計9チームが上位を占めてきた(W杯で成績は出ていないがイタリアも力をつけてきている)。 日本のW杯での成績は1勝18敗1分けと惨憺たるもので唯一の勝利は1991年第2回大会でジンバブエから挙げたのみとなっている。 日本はホスト国として決勝トーナメント、つまりベスト8を目指すとしているが、先に挙げた9ヶ国のうち少なくとも2ヶ国を蹴落とさねばならず、この9ヶ国以外にも台頭してくる国が出てくる可能性も考えると非常に困難な道のりだ。 ラグビーはサッカーとは違って実力差がそのまま試合の勝敗に直結するということだ。実力が拮抗したチーム同士ならば試合は盛り上がるが、実力差があると一方的な展開になってしまう(サッカーのように自陣で引いて守り切るということが出来ない)。運よく勝つということが期待できないので実力をつけてベスト8にチャレンジするしかない。 ラグビーの代表選手制度が他の競技とは違うのは国籍を持っていない外国人が代表選手になれることだ。3年間継続してその国に居住すれば代表選手としての資格が得られる(ただし代表になれるのは1ヶ国のみ)。 この制度を利用してトップリーグに外国人を集めて出来るだけ多くの外国人を代表に入れてチーム力をアップさせるという策も考えられなくはない。 しかし、W杯だけのために外国人を多く入れてベスト8に入ったところで日本のラグビー界に残るものがあるかといえば大いに疑問が残る。 −いびつな構造を改められるか− 日本のラグビーが構造としておかしなところは大学ラグビーが最も人気があり、もっと言えば早稲田や慶応、明治といった人気大学の露出が多く、実力的には断然上のトップリーグが全く脚光を浴びていないいびつな構造をしている。 これはマスコミに早稲田出身者が多く、その影響で大きく取り上げられるということもあるが、国内でレベルの1番高いリーグに人が集まらないということは大きな問題だ。 大学ラグビーが人気といってもトップリーグと比較しての話でラグビー人気全体が下火で大学ラグビーの人気も下降線を辿っている。 どんなスポーツでも国内リーグの活性化が代表の強化に繋がる。ラグビーは居住地にも代表の資格があるだけにトップリーグのレベルアップが必須だ。それだけにJリーグのようなきちんとしたプロリーグではない中途半端なリーグを変革していけるかが代表の強化のひとつの鍵となるだろう。 そしてこれから重要になってくる若年代の方に目を向けてみても高校ラグビーの県予選決勝で大差がついてしまう県も多く、全国大会でも頻繁に大差ゲームがあり、普及の面でも大きく遅れている。 10年後は現在の中高生が主力の多くを占めると予想される。若年層の普及と強化にも課題があるだけに今の状態で強化が進むのかは大いに疑問が残る。 −W杯は諸刃の剣− ワールドカップを開催するに当たって日本協会は国際ラグビーボード(IRB)に9600万ポンド(156億円)支払わなければいけない。 10年後の為替がどう変動するかは分からないが、少なくとも100億円以上IRBに納めないといけない。日本協会の収入は入場料のみでTV放映権料や広告料収入は全てIRBの取り分となっている。 つまりIRBへの拠出金9600万ポンドと諸経費を入場料収入で賄わないといけない。日本協会は拠出金を含めた開催経費を300億円と見積もり、12億円の黒字を見込んでいるとの事だ。 こういう見積もりは非常に甘いものになりがちで、恐らく経費は予定を大きく上回り、入場料収入は予定を下回ることになるだろう。 世界陸上でさえガラガラのスタンドが目立ったが、世界大会だからといって有名国以外でスタンドが埋まるとは考えにくい。サッカーW杯のような黙っても人が押し寄せると協会が考えていたとしたら大失敗に終わるだろう。広告代理店の電通とTV局がどれだけ国民の関心を集めさせるような取り組みが出来るかが大きな鍵を握っているかもしれない(2019年までTVの影響力が残っていればの話だが・・)。 バスケットボールの世界選手権が終わった後、赤字の責任を巡って協会が内紛状態に陥ったが、ラグビーもバスケ協会以上の赤字を背負う可能性が高いように思える。 W杯開催は日本ラグビーの発展のきっかけになる可能性もあれば、日本ラグビーにトドメを刺すものになる可能性もありW杯日本開催は日本ラグビーにとっては賭けのように思えてならない。 |
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