スポーツコラムNo.31

北京五輪を見て(3)(2008/06/01)


−金メダルは素晴らしいことも前途は険しいソフトボール−

野球とともに2008年のロンドン五輪では削除されることが決まっているソフトボール。アトランタ五輪から続くアメリカの4大会連続金メダルを阻み悲願の金メダルを獲得した。

しかし、日本が金メダルを獲得したからといってソフトボールを取り巻く環境が良くなることはない。ソフトボールはMLB派遣を頑なに拒否し、五輪復帰がほぼ100%不可能な野球とセットにされることを嫌っているが、それでは男子ソフトボールとともに五輪復帰できるかというとまず無理だ。

さらにアメリカから金メダルを奪うことによってアメリカ1強の競技ではないということをアピールしたいのかもしれないが、シドニー・アテネ・北京と3大会連続メダルを獲得した国はアメリカ・日本・オーストラリアが独占している。

このような12年間も特定の3カ国が独占している球技は知らない。それだけ普及していない競技ということの証明にもなってしまう。

日本のソフトボールを取り巻く環境も厳しさを増すのは容易に考えられる。星野JAPANの惨敗を覆い隠すために異常な露出をしているソフトボールだが、これによってソフトボールが一定期間を過ぎても注目を集め続けるということはありえず、リーグ戦が盛況になるということもないだろう。

五輪から削除されることによって当然JOCからソフトボールへの補助金は減らされる。北京五輪まではメダル有望競技ということで特Aランクに位置していたが(五輪競技は特A・A・B・Cにランク付けされる)、五輪外競技のDランクに位置づけされると思われる。
ともなると海外遠征もままならなくなる恐れもあり、五輪という晴れ舞台がなくなることによりソフトボールから手を引く企業も出てくるだろう。
日本女子ソフトボールにとって金メダルというのは素晴らしい結果だったが、そのことによってソフトボールを取り巻く厳しい環境が変化はしないということは彼女達も薄々は感じているはずだ。

−五輪への取り組みを考え直さなければいけない男子サッカー−

24歳以上のOA(オーバーエージ)での召集を神戸(大久保)に実質的に拒否され、召集が決まっていた遠藤が体調不良によりOAなしで臨んだ反町JAPAN。
対戦相手がアメリカ、ナイジェリア、オランダに決まった時からグループリーグを突破するのはほぼ不可能で、アメリカに引き分けて1分け2敗ならばまずまずの結果で3戦全敗も十分にあり得るというのは多くの日本人の戦前の予想だったであろう。

そして十分ありえた3戦全敗の結果となるとメディアの過剰な日本サッカーの未来への悲観論には正直違和感を覚えた。
アメリカやオランダのコンディションが悪く、内容とすれば絶望的な差は感じなかったが、OAも使用せず、A代表の主力が一人もいない五輪代表が3戦全敗することなど当たり前の結果といえば当たり前の結果だ。

日本サッカー協会が考えていかなければいけないのは五輪の位置付けだ。今回五輪でメダルを獲得したのはこの世代が主力だった2005年のワールドユース(現U-20W杯)でメダルを獲得した国でその力関係が北京にも引き継がれたことになる。
日本にとってもそれは同様で2005年のワールドユースは2分け1敗の勝ち点2で奇跡的に決勝Tに進出したもののオランダ戦ではクィンシーに完膚なきまでに引き裂かれ世界と絶望的な差を味わった谷底世代だ。その世代が中心では五輪で躍進することなど誰が監督でもほとんど期待できない。

ワールドユースと五輪という関係を見ると今回だけに限らず密接にリンクしてくる。日本がメダルを獲得してもおかしくなかったシドニー五輪代表はワールドユースベスト8と準優勝をした世代で、1勝2敗でグループリーグ敗退したアテネ五輪代表はワールドユースではベスト16で負けている。

今回のアルゼンチンのメッシなどを見てもそうだが、五輪代表の中にA代表の中心選手が存在する。23歳以下というのはA代表でバリバリ活躍している選手が出ていないといけない世代だ。しかし、日本はA代表と五輪代表は区別され五輪代表からA代表にステップアップするというような意識があるように見える。

世界の潮流はU-20を卒業すると次はA代表を目指すように見える。日本もそのような意識を持ち込むべきだろう。若年層ではまずU-20代表で結果を残すこと。そしてそのU-20からA代表に優秀な選手を送り込む形にし、五輪代表はA代表の実力までは届かないような選手も強化するための場と考えた方が良いように思える。五輪を特別視しがちな日本人の感覚にはなじみにくいかもしれないが、サッカーはあくまでワールドカップが頂点でA代表を強化することが最優先事項ということを肝に銘じて今後の強化を図ってもらいたい。
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