−日本人に合った競技− 2006年トリノ五輪で成績不振の日本勢の中で日を追うごとに注目を集めた女子カーリングのチーム青森。体力的な有利さよりも戦略や技術が勝負の行方を大きく左右するカーリングは日本人に合っている種目だ。さらにジャンプやフィギュアスケートを見ても分かるようにアジア人に勝たれたくない欧米のルール変更などの政治的な圧力もないことも政治力のない日本には好都合だ(何か圧力を受けるとしても競技のルール変更ではなく、五輪や世界選手権の出場枠などくらい)。 個人的にはカーリングをウィンタースポーツの中ではフィギュアスケートと並んで重点的に強化すべき種目だと考えている。 −五輪出場を有力にする結果− カーリングの世界選手権は12ヶ国の間で毎年行われ、2007〜2009年の世界選手権の順位によって得られるポイント合計によって五輪の出場権を獲得する(枠は開催国枠を含めて10)。 昨年の日本(チーム青森)は地元青森での世界選手権で9位4ポイントを獲得していたものの、2009年の世界選手権が韓国開催ということでライバル中国とアジア枠を争うことにより2009年は出場できない可能性を考えると今年の世界選手権は上位に食い込む必要があった。 具体的には6勝5敗で勝ち越して5〜6位を得て五輪ポイントを二桁に乗せて五輪出場をかなり有力にすることだった。 結果は後半の連勝でタイブレーク(プレーオフ進出決定戦)を制し、準決勝で地元カナダを下す寸前まで追い詰めるパフォーマンスを見せる大健闘の4位に入って五輪ポイント9点を獲得して計13点となり、ほぼ五輪出場を決めた。 −期待を抱かせる好パフォーマンス− 地元青森大会で不完全燃焼に終わったチーム青森は2007-2008年シーズンに寺田に代わりリード(1番手)に経験豊富な石崎が加入することによってチームに安定感が出てきた。石崎の加入はリードとしてのパフォーマンスだけでなく、昨年まではうまく回転していたとは言い難いスキップ目黒とサード本橋の関係をスムーズにしている役割を果たしているように見える。 目黒と本橋の関係がうまく行くことによって昨年までは今ひとつ自信に欠け、スキップ(フォース)としてのパフォーマンスに物足りなさを感じさせていた目黒のパフォーマンスが大きく向上したことが世界ナンバー1のカナダと互角の戦いができた大きな要因となった(もちろんリード石崎がミスなく意図したところに石を置いたり、大会を通じて絶好調だった本橋のパフォーマンスも大きく寄与している)。日本に欠けていたスキップの自信が日本をひとつ上のステージに引き上げた。今回の4位はフロックではなく、実力で得た4位だった。 もちろん課題もある。さらなるスイープ(ブラシでアイスをゴシゴシ掃くこと)の強化と目黒のドローショット(ハウス=的に置きに行くショット)は特に必要性を感じさせた。スイープが強化されれば、少々悪い精度のドローショットでも何とかなるようになり、一気に解決する可能性もある。スキップが自信を持ってドローできるかできないかは非常に大きな差となる。目黒がスキップとしてカナダのジョーンズやスイスのオット、スウェーデンのノルベリのような絶大な信頼を得ているスキップに成長することができればコンスタントに世界の上位に食い込む(メダルを争える位置)ことが可能なほど日本のパフォーマンスは上がっているように感じる。 −競技環境の向上をどう考えるか− 今回の世界選手権で一番の驚きはなんといっても新興国中国の大躍進だろう。リーグ戦とプレイオフで2度もカナダを破っての準優勝は衝撃を与えた。中国躍進の最大の理由は競技環境の良さだろう。国による全面バックアップのもと本場カナダを本拠地にして競技力向上に専念して結果に結びつけた(その他にもドロー合戦に持ち込む戦略が当たった)。 日本に大きく欠けているのはまさしく競技環境だ。トリノ五輪時に比べれば大幅に向上したとはいえ、カーリング王国カナダでの合宿は短い期間限定で、強くなるための環境がまだまだ足りない。 この辺りはカーリング協会だけではなく、JOCが強力サポートする必要があり、長期的に考えればカーリングがどういう在り方をすべきなのかを考えなければいけない(継続的に好成績が期待できる競技なだけに特に)。 カーリングだけでなく、ウィンタースポーツ界全体も競技の在り方を考えなければいけない。ウィンタースポーツを取り巻く環境の劣悪さが増す一方の中で一企業に頼った今までの体制をどう構造改革して行くかを考えなければいけない。中国のような国を挙げての全面バックアップが期待できない以上答えは限定されていくはずだ。そのためには国民のスポーツに対する理解も進まなければいけない。 |
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