−中途半端なポジション− 五輪、世界選手権、ワールドカップ(W杯)の3大大会に加えて、フジテレビが毎年行われるワールドグランプリ(WGP)を大々的に放送することによってより注目を集める存在となった女子バレー。 過去の栄光に比べると成績は今ひとつ(日本の実力が低下したというよりも諸外国の強化が進んだ結果だろう)で世界トップレベルのブラジル、ロシア、中国、イタリアなどの国には勝てる雰囲気さえないのが現状だが、組み合わせの妙と多くの国が3大大会で好成績を残すための育成と経験を積む場としているWGPで日本はゴールデンタイムで放送されているので一定の結果が求められるために、ベストメンバーで戦ってなまじ決勝大会まで進んでしまうためにそれほど弱いという印象は一般的には持たれていない。 しかし、WGPであまり新戦力選手を試せないために選手層が極めて薄く、日本男子のような12人で戦うのではなく、リベロを含めた7人で戦っている。女子は男子に比べると各国の競争はそれほど激しくなく(男子は紙一重の争いで群雄割拠の勢力図となっている)、トップ20の中でも実力差が大きくあるので上位国には全く勝てないが、それでも下位国にも負けにくいという状態が続いてきた。 しかし、今回の世界選手権ではホームにも関わらず格下と見られてきた台湾に敗れ、中国、韓国以外にもアジアの国で日本を脅かす国が存在することを一般視聴者にも知らせる結果となった(現在韓国は大型化にチームを方針転換してチームとしてまとまっていないので日本のライバルにはなりえていないが、台湾以外にも大型チームでロシアの血も入っているカザフスタンも日本の脅威の存在となっている)。 五輪は北京で行われるために日本が逆立ちしても勝てない中国が予選に参加しないために五輪に行ける可能性は十分あると思うが、このままのチームでは五輪への道が閉ざされることもありえると思わざるを得なかった世界選手権だった。 −ブロック− 全日本女子の最大の問題はブロックにあることは素人・専門家でも共通した認識だと思う。 世界選手権のメンバーを見るとセッターの竹下が159cm、その対角の高橋が170cmとヨーロッパの大型チームが3人も4人も190cm以上を揃えて来るのとは対照的だ。試合を見る限り180cmある小山、184cmの木村も身長がただ高いだけで有効なブロックを見せておらず、センターの荒木・杉山しか世界と戦えるブロッカーがいない(186cmと184cmのセンターではやや高さが足りていないのは否めないが・・男子で言えば2mあるかないかくらいか?)。 筆者はVリーグまで目を通しているわけではないので、代替選手は示せないが竹下がセッターを務めている限りメダルは遥か遠いということは言える(代替選手がいるにも関わらず竹下を使っているのなら柳本監督の責任で、使えるセッターが日本にいないのならそういうセッターを育成してこなかったバレー界の責任となる)。 159cmの竹下の指高(腕を上に精一杯伸ばした状態での最高地点)は200cmを多少超えた程度だ。ブロックジャンプ(ブロックでの最高到達点)は公称270cmとなっているが、試合中の映像を見るとネット224cmに対して20〜30cmほどしか手が出ておらず実際は250〜260cm程度だろう。これでは偶然のブロックしか期待できず、かなりの頻度で上を抜かれるためレシーバーもコースを絞れない悪循環となる。 高橋も竹下を多少マシにした程度にしかならないが、レシーブとジャンプサーブが良く、スパイクの巧さでかなり貢献するのでその辺りを考えると高橋まで切ることは得策ではないように思える(実際は高橋がピンチサーバーなど流れを変える控えの切り札の存在のなるほど層が厚くなるのが理想だが)。 竹下・高橋が共存すると常にブロックに大きな穴が存在することとなり、トップチームはそこを徹底的に突いてくる(特にイタリアはそれで日本をカモにしている)。 サーブレシーブでも背の低い竹下に返す場合ではレシーバーは上に返してはいけないという意識が強くなりすぎて逆にレシーブが短くなることが多く見られた。 やはり的は大きくした方がレシーバーもプレッシャーから開放されることになりレセプションの率も向上するだろう(現在のバレーはいかにレシーブをきちんと返して多彩な攻めを展開できるかも重要な要素)。 現実問題として世界選手権でMVPに選ばれてしまった竹下を外すことはまずないだろう。竹下が怪我をしない限り、大きな穴を抱えながらのワールドカップ、五輪予選に突入する。高さのない全日本が常識外れの超小型セッターで考えられるデメリットを上回るメリットを示せるのか、このままではジリ貧になるとしか思えないのだが・・。 −目の引いた外国チームは?− 世界選手権は24チームの参加と五輪・W杯と比べて参加国も多く、特にレベルの高い欧州勢では普段埋もれてなかなか五輪やW杯に参加できないチームが光り輝くことがある。今回目についたのは準優勝国ブラジルにフルセット、アテネ五輪金メダルの中国を破ったオランダだ。 オランダは日本戦に敗れたり、カザフスタンにフルセットまでもつれるなど波のあるチームだったが、ポテンシャルはかなりのものを感じさせ、今後の成長が楽しみだと感じた。オランダはナショナルチームのメンバーを国内のひとつのクラブに集めてクラブとナショナルチームを一体化して強化を行っている。 オランダで目を引くのは22歳のフリールがまず挙がる。191cmの長身エースでバックアタックもこなせ、サーブも強力だ。派手なところに目が行きがちだが、ブロック、レシーブ、2段トスもかなりのレベルでこなせるオールラウンドプレーヤーでつなぎで果たしている貢献度もかなり高い。190cm台にも関わらず身のこなしが軽く、器用になんでもこなせるだけにもう少しのパワーと高さが備わると世界を代表するプレーヤーになる可能性を秘めている(容姿も端麗だけに人気も爆発するだろう)。 オランダの弱点はセッターにある。171cmと小柄なセッターのフレッデルスのトスアップは安定せず、ここが安定するとコンスタントな力が発揮できるようになりそうだ。控えのセッターで1ポイントブロッカーに入っていたキム・スタイレンス(日本で言えば高橋翠のような使い方)は182cmと身長もあり、キム・スタイレンスが成長して正セッターになり安定したトスを上げられるようになると堂々のメダル圏内のチームになりそうだ。 |
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