スポーツコラムNo.11

2006年W杯ドイツ大会へ向けて(2006/6/8)


−ブラジル最強?−

一般的な評価ではブラジルが圧倒的な優勝候補として挙げられている。ロナウド、アドリアーノ、ロナウジーニョ、カカの魔法のカルテットと呼ばれる攻撃陣は大会随一の呼び声が高い。

確かに攻撃力を取ればブラジルが大会ナンバー1であることは間違いないだろう。この攻撃陣を無失点に抑えることは至難の業で不可能に近いかもしれない。しかし、ブラジルから得点することは他の強豪国にとって非現実的とは思わないだろう。

一発勝負のトーナメントを勝ち上がるためにはディフェンスが安定していなければいけない。トーナメントに入って4試合勝たねば優勝まで辿り着けない。ブラジルの守備陣は攻撃陣と比べるとタレントに不足しており、ブラジルよりも明らかに守備力のある国が複数存在する。

今回のボールはより球体状に近づき、ボールが揺れやすくキッカーにとって非常に有利になっている。セットプレーとミドルシュートが大きな鍵となってくるのは間違いないだろう。ブラジルにはFKの名手ジュニーニョ・ペルナンブカーノがいるが控えである。ロナウジーニョは他のプレーに比べてFKの精度はかなり落ち、ロベルト・カルロスも決まれば派手だが、精度という面ではかなり悪い。

コンフェデレーションズカップの日本戦の中村のミドルシュートに見られたようにブラジルのDF陣はミドルレンジであまりプレッシャーを掛けて来ない。その辺りも各国は狙ってくるだろう(直接入らなくともはじいたところを押し込む)。

親善試合で弱小相手としか試合をしてこなかったことで守備の問題が露呈せず、強い相手とした時にいきなりそこを突かれて慌てふためく可能性も十分ある。

勝つときは派手に勝つものの意外と脆く、今回のブラジルは前評判は高いものの優勝はないと見ている。今回も前評判が高いチームが勝てないというジンクスが生きるのではないか。

−ルーニー完全復帰でブラジルを超える戦力−

守備力という点ではイングランドが堅いものを持っている。リオ・ファーディナンドとテリーの強固なセンターバックコンビに左SBのアシュリー・コール、右SBのギャリー・ネビル(もしくはキャラガー)と経験豊富なディフェンスラインだ。

イングランドの中盤はブラジルをも凌ぐ陣容で、ジェラードとランパードのダブルボランチはやや攻撃色が強いものの守備もそつなくこなす。ジェラードの無回転でのミドルシュートは相手国にとって相当の脅威となるだろう。

右サイドのベッカムは2002年の時はコンディションが悪かったが、今回はかなり良さそうだ。持ち味のキックの精度は健在でピンポイントで合わせて来るクロス、FK、CKは非常に武器となる。CKではテリーのヘッドという得点源があるのも心強い。

左サイドはジョー・コールが務める。世界的には他の3人に比べて知名度は劣るが、ジョー・コールがイングランドの浮沈の鍵を握ると思っている(復帰できればもちろんルーニーも)。
ジョー・コールはイングラン人にしては珍しいドリブラーで柔らかいタッチで相手を抜き去っていく。ジョー・コールのドリブル突破、もしくは相手がファールを犯してセットプレーで得点を重ねるパターンを確立できればイングランドは優勝候補筆頭まで躍り出る。

問題はFW陣でルーニーの骨折によりクラウチとオーウェンの2トップになることが濃厚だ。オーウェンはまだ100%のコンディションにはなっていない。クラウチはクラブでのプレーとは打って変わって絶好調だ。背の高さばかり注目が集まるが、ヘディングでゴールを決めるよりも足で決めるほうが多い(あまり強いヘディングが打てず、頭を使うときはシュートよりもポストプレーが多い)。足元もかなり巧みだ。

オーウェンが絶好調にならなければ、ルーニーが復帰した時にクラウチ、ルーニーの2トップも面白い。
監督のエリクソンに2人としていない選手と言わしめたルーニーはブラジルで言えばロナウジーニョに値するほど貴重な選手でドリブル、パス、シュート力と高レベルでバランスされた選手だ。
ルーニーが万全の状態で復帰した時、チームとしてのバランスはブラジルを凌駕する国になる。

−アンリシステムを築けるか−

前評判は高くない前々回王者のフランス。監督の評価が低く、若手の育成に失敗し、ジダンを始め一度代表を引退した選手を呼び戻してなんとか予選突破を果たした。

以前から言われているのがジダンとアンリの相性が悪いことだ。アンリは生粋のストライカーというタイプではなく、前線で張るのではなく至る所に顔を出す。
特に左サイドからの攻撃が得意だ。しかし、それではジダンと被ってしまい、アンリのスペースが潰されてしまう。
現時点でアンリはブラジルのロナウド、アドリアーノを凌ぐFWだ。フランスのタレントは他の強豪国に引けを取らないのだからアーセナルのようにアンリを中心としたシステムを築けるかどうかがフランスの躍進がかかっている。ジダンが運動量に乏しくアンリの邪魔をするようならばリベリと交代させる思い切った采配も必要だが・・。

−ダークホースになれるか日本−

3大会連続出場を果たした日本。直前の親善試合のドイツ戦ではドイツホームながら内容では勝り、勝負で引き分けた。

日本の強みは同世代の選手で長期間プレーしてきたことにより、連携が良いこと。2002年からほとんどメンバーは変わっておらずさらに言えば中核はシドニー五輪から変わっていない。

日本がやってはいけないことは先取点を取られないこと。引かれた相手を崩すのは最も苦手としている。グループリーグでは最初から相手が引いてくることはないと思われるのでとにかく点をやらないことをファーストプライオリティーにし、後半からでもいいので攻撃的にして点を取りたい。

親善試合を見る限り、適わなさそうな相手はいない。クラブチームに比べて各国とも2人目3人目の動きに乏しいので日本でも十分やれそうな感触はある。

とにかくオーストラリアに勝つことで道が開ける。ビドゥーカの当たりの強さ、シュウォーツァーの堅守はかなり手強いが、相手のラフプレーにも気持ちで負けないで立ち向かえば十分勝てる相手だと思う。

−グループリーグ敗退濃厚の韓国−

マスコミは相変わらず韓国を持ち上げるが(2002年の時は気持ち悪いほどだった)、今回の韓国がグループリーグを突破することはまずない。

FIFA製作のW杯10大誤審に2002年大会の韓国絡みが4つもランクインしているほど(全て韓国有利の判定に対して)サッカー先進国での韓国に対する印象は悪い。
今回韓国のグループは前回大会直前の親善試合でジダンを負傷させられたフランスとブラッター会長の出身国のスイスと初出場のトーゴがいる。

元々韓国はサウジアラビアにアジア最終予選で2敗していることからも実力に乏しい上にある意味復讐に燃えるフランスと絶対審判を味方につけることができないスイスでは分が悪すぎる。
スイスは飛び抜けた選手こそいないものの2008年の自国開催のユーロ(欧州選手権)に向けて非常にまとまったいいチームでダークホース的な存在になりえる。

トーゴに関してはアーセナル所属のアデバヨールしか分からないが、セネガルを下して初出場を果たしているので実力的に落ちるということはないだろう。アデバヨールに関しては高く、スピードもあり、足元も上手い。ただ決定力にやや難があるが、アンリのパートナーを務めるだけの実力は韓国のFW陣をはるかに超えるものがある。

初出場のトーゴが初戦で韓国と当たることが吉と出るか凶と出るかで変わってくるが、トーゴが伸び伸びとプレー出来れば韓国の全敗も十分可能性がある。
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