スポーツコラムNo.8

騒動を経ても確実に衰退の道を歩むプロ野球(2004/12/23)


−外野は注目を集めるも・・・−

事実上近鉄が消滅し、オリックスへの吸収合併を発端に史上初のストへ突入した2004年。結局は新規参入(予想通り楽天に決定)で12球団維持で一件落着をみた。
スポーツニュースはスト騒動期間中は他のスポーツをないがしろにしてスト関連ばかりを報道し(煽って?)、番組内の視聴者テレゴングでは必ずといっていいほど選手会側が圧倒的な支持を得ていた(TV局側にとっても放映権を持っている以上、実際にプレーする選手側の肩を持ちたい思惑もある)。

−右肩下がりの視聴率−

他のスポーツをないがしろにしてあれだけ、煽りに煽って迎えたスト明け9/20のフジTVで放映された中日-巨人の首位攻防戦の視聴率はわずか9.8%と騒動に興味がある人と実際に試合に興味がある人は全く別という結果が出た(そもそも騒動自体に興味がある人が多いのかも疑問が残るが)。

一般的に視聴率が二桁を切ると打ち切りを考えさせられる数字である(TV東京を除く)。今シーズンの巨人戦のナイターの平均視聴率は12.2%と歴代最低を更新した(日本シリーズ・日米野球も歴代最低を更新し、プロ野球自体の人気の低落を浮き彫りにした)。
12%ならまだコンテンツとして放映できるレベルではないかと思う方も大勢いると思う。
今年の数字をよく見るとある日を境に流れが全く変わっていることが読み取れる。6/13の近鉄・オリックス合併問題発覚してからだ。
それまで視聴率一桁を記録した試合は1試合で平均14%ほどだったのが、6/14以降74試合で37試合が一桁を記録し、8/21には4.2%という明らかに避けられているとしか思えないほど低い視聴率を記録した。

プロ野球(セリーグ)はJリーグと違って巨人戦の放映権料に大きく依存していて、放映権料がなくなればパリーグと同様に年間何10億も赤字が出て興行として成り立たなくなる。

巨人戦1試合の放映権料が1億円前後だと言われている。今年の低視聴率を受けて放映権料が値下がりし7000〜8000万になると言われている。これだけでも巨人は20億円ほどの減収となり大打撃となる。しかし、減収ならまだしも近い将来ゴールデンタイムでの放映がなくなる可能性も十分ある。

視聴率トップを争うフジTVや日本TVのゴールデンタイムの平均視聴率は13〜14%だ。つまり放映権を買ってくる以上最低でも平均以上の数字を期待しているわけだ。さらに突っ込んで言えば放映権料を考えれば最低でも15%は欲しいというのが本音だろう。それが一桁連発では目も当てられない。2004年、日本TVは巨人戦低視聴率の煽りを受けて視聴率争いでフジTVに惨敗している。

80年代巨人戦の好視聴率の恩恵を受けてきて、読売グループでもある日本TVは巨人戦のゴールデンタイムからの撤退はなかなかしないかもしれないが、他の局は数字が見込めなければ撤退を決断すると思われる。既にフジTVは放送試合数の削減を念頭に入れており、数字の回復が見込めないのなら撤退も十分視野に入っているはずだ。

TV局としては視聴率と同様に巨人戦を放送する上で頭の痛い問題がある。それは視聴者層がお年寄りに極端に偏っていることだ。なんと50歳以上が7割を超え、35歳以上からだと85%を超える異常な偏り方だ。これでは視聴率の先細りは目に見えているわけで、これから下がることはあっても上がることは考えにくい。
もうひとつの問題はTV局的にはF1(20〜34歳女性)と呼ばれる購買力のある若い女性に視聴して欲しいのだが、巨人戦は全くの逆である。同じ視聴率でもF1層が見ていればCMも高く売れるが、ほとんど見ていない現状では値段を安くしてもCMが売れないのである。
このようなところを見ても意外と早く巨人戦がゴールデンタイムから消える日が来るかもしれない。2005年に平均視聴率が一桁に落ち込めば既得権益にべったりのメディアも掌を返すことも考えられる。

−過去最高の観客動員では・・?−

TVの放映権にそれほど依存していないJリーグのクラブが黒字を出して成功しているのは、実際に試合に足を運んでもらう観客を大事にしているからだ。そして、その入場料収入などの総収入を元にクラブの身の丈にあった年俸を選手に支払って健全経営を行っている。

対してプロ野球では名目上観客動員はセ・パともに過去最高の観客動員を記録していることになっている。それを素直に受け止めればどうしてそんなにお客さんが入っているのに球団が潰れなければいけないの?という話になる。

−水増しがどんぶり勘定を生む−

Jリーグは入場者の半券をきちっと数えて入場者数を下一桁まで正確に発表する。
対してプロ野球はどんなに空席があっても東京ドームなら55000人というふうに悪質なまでに水増しを行っている。東京ドームの消防法に届けている定員は46314人である。キャパから水増しいているのだから呆れるしかない(ほとんどの球団がそうである)。福岡ダイエーの場合は前年より1試合早く観客動員300万人突破をするために逆算しながら観客数を発表するといった具合だ(実際の観客動員は150〜180万程度だと思われる)。
記事にもなっていたが、観客が300人ほどの試合が10000人と発表されるのだからプロ野球の数字は嘘ばかりと思われても仕方がない。

正確な観客数を発表せずに名目上は観客数が増えているというのなら選手の方も年俸アップのために強気に契約交渉でき、大赤字なのに超高額年俸選手が続出という奇妙な現象が出てくる。

−実数発表はできるのか?−

当たり前の実数発表に向けてようやく動き出したが、本当に実現できるのだろうか?今まで東京ドームで55000を連発していたのが25438人のような半分以下の発表ができるのだろうか?
事実、「実数に近い数字で発表する方向で検討する」といった本当にやる気があるのか?というような記事も出ている。
もしも実数で発表されれば平均観客数ではJリーグに負けていることが白日の下にさらされ、プロ野球のイメージダウンも考えられる。ただ、それを避けていては衰退の道しか残されていない。実際に足を運んでくれるファンを無視していてはプロスポーツとして成り立たなくなる。



ネガティブな話題に事欠かなかった2004年のプロ野球。個人的には他のスポーツに対して害にしかなっていないプロ野球の衰退は歓迎すべきことである。来年の視聴率、観客数の発表の仕方によってはさらに速度を速めて衰退の道を歩むだろう。そしてマスメディアがプロ野球を見限った時に健全なスポーツ文化が生まれる出発点になるだろう。
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