ファジアーノ岡山ホームゲーム感想

2011年J2第10節vs栃木SC(1位)
試合結果スタッツなど
中3日で開幕3連勝で首位に立つ栃木SCを迎えての一戦。昇格初年度はほとんど同じ成績だった両チームの力は非常に大きなものになっていると改めて感じさせる一戦となった。

前半のファジアーノ岡山はホームゲームながら栃木に何もさせてもらえない最悪の45分となった。
栃木は3バックのチームとの試合が連続3試合目ということで3バックを攻略するポイントを的確についてきた。
3バックの弱点は誰もが分かっているように3バックの後ろのスペースが空くことと、そのスペースをケアしようとすると5バックになって中盤で数的不利になることにある。
ボールを支配して前からプレッシャーを掛ければ相手は5バックになって苦し紛れのロングボールを蹴ることが多くなり、それを拾って波状攻撃を仕掛ければ良いことになる。
岡山の前線はチビッコ揃いなので苦し紛れのロングボールを蹴ると尽く、そして必然的に栃木ボールになり岡山は守備に忙殺される時間帯が続いた。
岡山とこれから対戦するクラブは栃木の前半を手本にしてくると思われるほどアウェイながら栃木が岡山を圧倒した。

得点はいずれもコーナーキック(CK)からだったが、CKの守備は大分戦でも破綻しており何度もフリーでシュートを打たれていて今回の失点は必然だった。
昨年まではヘディングに強い西野がニアサイドで立ってニア側のボールは西野がうまく処理していることが多かったが、今季から西野はいない。192cmのチアゴがいる時はチアゴを立たせておけば西野の代わりができると思うが、チアゴがいない時のコーナーの守備をどうするのかは大きな課題だ。

今回引き分けに持ち込めたのはチアゴのおかげということに異論はないだろう。やはりJ2では高さは大きな武器であることを改めて感じる。現時点では怪我もありフル出場が難しい中で前半をいかに凌いで後半勝負というのがゲームプランになってくる。


今年から3バックを導入して昨年までの4バックから大きくシステムを変更した。ストヤノフを一番生かすことを考えてのことだと思われるが、逆に適性に問題のあるポジションで苦闘している選手も多い。
3バックで最も難しいのはウィングバックと呼ばれるサイドハーフの両翼だろう。日本代表もチャリティーマッチで3バックを試し、こちらはうまく機能していたが、このポジションを担当するのがインテルの長友、シャルケの内田であり、特に長友は運動量があり一対一に強く攻撃力もあるスーパーな力を持っている。
対して岡山は右に澤口、左に一柳と守備に持ち味のある二人のため5バックになりやすく、中盤を厚くして数的有利を作るための3バックが5バックとなって数的不利になっている。
適性に問題があるからと言って澤口と一柳に代わる選手がいるかというといないのが現状だ。怪我をしている田所が復帰すれば左に入ると思われるが、田所に代わって劇的に向上するかというと難しいのではないか。
3バックは前線からプレッシャーを掛けられても落ち着いて交わして繋いでいくことでウィングバックが上がって数的有利を作っていかないといけない。プレッシャーを掛けられて前に意図のないロングボール(クリアのようなもの)を蹴ってもチアゴのいない前線ではボールを収められない。
セカンドボールを拾われて波状攻撃を受ける悪循環が続き、選手の体力も大きく奪われる。
チアゴが全試合フル出場できるのなら問題ないかもしれないが、半分の出場が目一杯でいつ欠場するかも分からない。そしてチアゴの代わりは誰もいないというのが問題だ。それなりに上背のある選手は中野だけだが残念ながら中野ではボールが収まらず、1トップとしての役割は果たせない(FWとしてJリーグで戦っていくには正直厳しいという印象)。
不満を持たれているウィングバックの二人に関しても代わりがいない。誰が入ってもある程度の水準を維持できるシステムが理想だが、少なくとも3バックだと主要メンバーが欠けると大きく戦力が落ちるだろう。
といっても4バックに戻すにも問題がある。左サイドバックがいないからだ。浦和に帰った野田が今年もチームにいれば4バックに戻すのが正解だと言えるが、左サイドバックの選手が決定的に足りない。もしも4バックに戻すのならば一柳を左サイドバックにして守備専にし、左サイドハーフにドリブラーを置いてサイドバックが上がらない分だけ大きなスペースを与えて仕掛けやすいようにするのが良いかもしれない。
3バックだと妹尾の使い方も難しくなる。鳥取とのトレーニングマッチでは右ウィングバックを担っている。妹尾は澤口のように最終ラインまで下がることはせず前でプレーしていたため妹尾の裏に広大なスペースがあり、そのスペースを使われると非常に厄介だと感じた。
ドリブラーの妹尾がウィングバックでは持ち味は生きず、ドリブラーはやはりペナルティーエリア近辺でプレーさせるべきだ。
今の選手構成を考えると3バックで繋いで相手を翻弄するというのは難しく、5バックになり守備に追われて攻撃に厚みが出ず得点力も乏しい状況が続きそうに見える。
短期的には熟成の問題や選手層・適性の問題もあって3バックでは結果が出ない可能性の方が高いように見える。そしてストヤノフやチアゴはベテランで年々パフォーマンスが落ちることはあっても明確に上がる見込みはほとんどない。短期も長期も見通しがあまり良くないことを考えると3バックを押し通していくのには懐疑的な目で見ざるを得ないのが現状だ。
山陽新聞試合満足度調査
やや満足58%
満足21%
やや不満18%
不満3%

MIP(投票者71人)
チアゴ79%
ストヤノフ%
筆者の試合満足度(10段階)
5