ファジアーノ岡山ホームゲーム感想

2010年J2第24節vs.愛媛FC(13位)
試合結果スタッツなど
前半は今シーズンホームゲーム最低の出来だったことはほとんどのサポーターが感じたことだろう。
出場停止のキム・テヨンの代役は今シーズン初スタメンの竹田忠嗣が務め、妹尾隆佑も初スタメンとなった。FWはリーグ戦で最も結果を残してきた三木を控えに回して大逆転負けを喫した天皇杯福岡戦と同じ西野とリ・ドンミョンのペアを監督は選択した。

しかし、前半はどのようなサッカーを展開したいのか全く見えてこず、負けているにも関わらず最終ラインでのボール回しの連続に苦し紛れのロングボールが多かった。
選手自身も監督がどのようなサッカーを展開していきたいのか理解できていないのではないだろうか。そのくらいやりたいサッカーが見えてこない前半だった。

後半になると西野と川原を下げて岸田と喜山を入れる。愛媛が守りの意識が強く暑さのためか動きが止まったことにより押し込む時間帯が増えて妹尾が今季初ゴールを決めて1点差に追い上げる。そして愛媛に退場者が出て残り25分以上を1人多い状況となり猛攻が期待された。確かに押し込みはしていて何度かシュートシーンを作ったものの数的優位が長く続いた割にはシュート数は後半7本で1試合通じては8本とあまりにもシュート数が少ない試合となった。

今季のファジアーノ岡山は昨年の第2クール以降のボールを大切にする方針を継続したものの7試合連続無得点もあって三木へのロングボール中心の戦い方に変更し、結果は上向いていた。しかし、監督は愛媛戦前まででリーグ戦11戦(先発9試合)無得点、0アシストのFWリを使い続ける一方でFWで一番結果を残していた三木をベンチに追いやった。指揮官が迷走状態に陥っていては選手もどう動いていいのか分からないように感じた。

チームのやり方が明確でないこともあってとにかく各選手のフリーランニングが余りにも少ない。天皇杯の福岡戦では田所の思い切りの良い飛び出しが得点に繋がったように全力ダッシュでノーマークの状態を作ることで得点チャンスが増える。現に愛媛の1点目はサイドを全力で走ってスルーパスをもらうことを狙った選手がシュートのこぼれ球を詰めた。
また得点にならなかったもののボランチの選手が全力ダッシュで前線を追い越してキーパーと1対1の状況も作った(福岡戦の田所と同様の攻撃)。
岡山の1点にしてもリがボールを捌いた後にすぐペナルティーエリアにダッシュしてキーパーと競り合ったことでキーパーがキャッチできずこぼれ球となり妹尾の得点に繋がった。ジョギングではなくここぞという全力ダッシュの回数があまりにも少ないことが得点力不足でありシュート不足の一因になっているのは間違いない。

監督のやりたいサッカーが見えないがために選手間で同じ絵が描けていないように見える。よって負けているにも関わらずバックラインでのパス回しが多くなってしまって仕方なく前に蹴って相手ボールになることが多過ぎる。

どういうサッカーを指向するべきなのか。シーズン前のコラムでボールを繋ぐことを指向する場合は結果が出なくても貫けるか心配だと書いた(参照コラム)。まさしく心配した通りにロングボール主体に変更して袋小路にはまっている(中長期的どころか短期間で袋小路にはまったが)。
参照コラムにも書いているようにkankoスタジアムのピッチはまるで人工芝に見えるほど非常に奇麗なピッチだ。このJリーグでも有数のコンディションの良いピッチを利用しない手はない。個人的にはサッカーのレベルが上がるほど速いグラウンダーのパスが多くなり、意図のないボールが空中で行ったり来たりすることは少なくなると感じている。ロングボールは使うなとは言わないが、基本は長短織り交ぜながらしっかり繋ぐことを意識し、繋ぐことを前提としたことで選手の動き出しの早さに磨きをかけたい。当然機能するまでには時間が掛かる。だからこそボールをつなぐ戦術は結果が出なくても我慢して貫けるかを心配した。
技術レベルが低いとボールを取られるのではないかと心配して思い切った動きも取りずらくなるだろう。しかし、そこで足を止めていてはなかなか点は取れない。一人のミスは他チームよりも多く走って皆でカバーするという意識を持って思い切った動きを推奨していかないとスーパーなFWがいないチームなので今のままではなかなか得点力は上がらないだろう。

選手起用に関しても修正が必要だろう。今回は両サイドを妹尾と川原の岡山県出身選手を起用したが、両者とも守備力に難があり、相手に対する寄せが甘い。これでは前での守備の圧力が弱くなってしまう。
恐らく岸田がFWではなく左サイドで起用されてきたのも妹尾の守備力に不安を感じてのものだっただろう。
しかし妹尾は心もとない守備力を補って余りあるドリブルとペナルティーエリア内での冷静な判断力がある(シュート力に難はあるが)。岡山で唯一個人で打開できる選手であり、昨年から一貫して妹尾を攻撃の中心とせよと言い続けてきた。恐らくスタジアムに来ているサポーターの多くも妹尾に期待しているだろう(妹尾に対しての歓声は非常に大きい)。
ロングボール中心では全く妹尾は生きない。ペナルティーエリア付近で前を向いてドリブルさせる状況を作ることを考えるべきだ(FWに当てるにしても頭に合わせるのではなくボールをよりコントロール出来る足でポストプレーをさせるなど)。
また妹尾の反対のサイドは守備で体を張れる喜山を使うのがベターのように思われる。実際後半は喜山が入ることによって攻撃が活性化された。
そしてFWは岸田を使いたい。やはり岸田は前で使ってナンボの選手だろう。岡山のFW陣の中では最もシュートの意識が高く、走ることを厭わない選手だ。トリッキーなプレーに走り過ぎるきらいはあるものの一番得点を取っているのは岸田でありシュートの意識が最も高い選手を前で使いたい。シュートを打たなければ得点は奪えないのだから。
岸田の相棒は前線のバランスを考えて三木か西野の高さのある選手を入れておきたい。ただしヘディングは多用せずポストプレーがしっかりできる方を使いたい(高さが必要になる時はCKやサイドからのクロスなどを想定)。

今回の山陽新聞満足度調査では回答者の85%が何かしら不満を感じており、特に前半は不満度100%だっただろう。天皇杯を含めて4連敗中のクラブに6708人もの観衆が集まっている。もちろん多くのサポーターはなかなか勝利が望めない選手レベルであることは分かっているだろう。しかし、かといってそれに甘えた試合をしてはいけない。昨シーズンが終了した時社長は成績は0点とし、年末の報告会では多少無理して上を狙うと公言した。しかし、このままで昨年と変わらない順位で終わってしまう可能性が高い。満足な練習環境がないとはいえ、ボトムクラスで終わることは許されないだけの資金力があるクラブだ(昨年の収入は真ん中からやや下程度)。
負け続けても根気よく通い続けてくれるサポーターのためにもやりたいサッカーを明確にし、将来が明るいと思えるサッカーを展開してもらいたい。
山陽新聞試合満足度調査
不満44%
不満41%
やや満足15%
満足0%

MIP(投票者79人)
妹尾隆佑53%
喜山康平22%
川原周剛5%
野田紘史5%
澤口雅彦4%
筆者の試合満足度(10段階)
2
試合中気になったことを1点、スカパー録画を視聴して気になったことを1点付け加えたい。
愛媛が前半1-0とリードし、負けている岡山が攻め手がなくバックラインでボールを回さざる得ない不甲斐無い状況になっている時に愛媛サポーターから大きなブーイングが飛んだ。負けているのに前に行く姿勢が見えない岡山サポからのブーイングならば理解できるが、愛媛サポーターからブーイングが出るのは合点がいかない。
愛媛はリードし、岡山が攻めあぐねてバックラインで時間を浪費してくれているわけだから愛媛にとっては歓迎すべき状況で、愛媛の守備がうまく機能しているとも言える。
岡山のGATE10のサポーター(通常で言うゴール裏のサポーター)も少なくとも地域リーグ時代の頃からこちらが勝っている時に相手がバックラインでボールを回さざるえ得ない状況の時にブーイングをしていた。Jリーグのゴール裏にいるサポーターは相手ボールになると闇雲にブーイングすることを是としているのだろうか。こういう状況でブーイングしている姿を見ると私はサッカーを見る目がありませんと自白しているように感じてしまう。サポーターの見る目が肥えることが選手のレベルアップにも繋がるわけなので見ている側の目も肥えなければいけない(基本的に岡山サポは岡山の選手にはブーイングしない方針なのでシュート以外でも良いプレーには盛大な拍手がスタジアムから溢れることを願って個人的には良いプレーには拍手をしている)。

スカパー中継で気になったのはリ・ドンミョンの髪が茶髪になっていることだ。岡山はクラブの方針で茶髪禁止のはずだ(チャラチャラした印象を与えないためだと思われる)。当然外国人にも適用されると思われ、韓国人であればまず間違いなく茶髪は禁止だろう。クラブからの通達が徹底されていないのかリがクラブの方針を意図的に破ったのかは分らないが、周りの選手に茶髪が一人もいないことを見れば茶髪が禁止というのは分かるだろう(基本的に他クラブのJリーガーは髪を染めている選手が多い)。
キャンプ中の映像でリ・チャンガンが茶髪に染めてトレーニングしていたが、試合がない時期だからと言って茶髪OKとは思えない。選手は岡山に住んでいるわけで(キャンプ中は違うが)普段の生活にも市民・県民の目が向いているということを忘れてはいけない。プロとしての意識の高さがこういうところにも出るのではないかと思う。