ファジアーノ岡山関連コラムNo.13

ファジアーノ岡山の挑戦:Jリーグ1年目を終えて(3)(2009/12/26)


−各選手の来年への課題−

恐らく夏に複数年契約を結んでクラブからも重要な選手だと思われている今季FC琉球から加入した右サイドバックの澤口雅彦。
センターバック陣が不安定だっただけに余計に澤口の安定感が際立った。1対1の守備も粘り強く最下位のクラブにいるのは勿体無いというのが正直な感想だ。
注文をつけるとすればクロスの質だろう。安易なクロスで楽々と相手DFに跳ね返されてクロスに工夫がない場面も見られた。しかし怪我から復帰したラスト3戦ではクロスに工夫をしていこうという意図が感じられた(代役で入っていた玉林のクロスの質が良かっただけに自身の反省点としてしっかりと戦列を離れている時も自身を見つめ直していたのだろう)。

レンタル移籍で浦和レッズから加入し、来季もレンタルが継続される左サイドバックの野田紘史。野田が移籍してくるまでのレギュラーだった尾崎のパフォーマンスが今ひとつだっただけに野田の加入も大きかった。
ただ第3クールは調子を落としていた感じでシーズンを通したパフォーマンスの維持が求められる。
そして野田もクロスに難がある。ボールの質というよりもボールを送り込む場所が今ひとつという印象を受ける。どうしてもクロスを上げた時にキーパー寄りに蹴ってしまうのでキーパーに楽々キャッチされる場面が目に付いた。ボールスピード、質共になかなか良いものを持っていると思うのでキーパーからもう少し遠い位置にクロスを放り込む意識を持てば良いのではないかと思う。

第1クール最終戦からボランチのレギュラーを掴んだ竹田忠嗣。試合後のコメントを見ると監督よりも状況を的確に把握しているように見え、非常に頭の良い選手だ。しかし、その頭脳に体がついてきていないのは勿体無く、体に1本の芯が通っておらずフニャッとした印象を受けてしまう。オフシーズンの間に頭のレベルに追いつける体を作っていくことが求められる。顔を見ると太りやすい体質のようにも見え、今シーズン序盤ではオーバーウェイトのようにも見えただけに自己管理をきちんとしていくことが重要だ。

3年間東京Vからのレンタルから2009年12月晴れて完全移籍することが発表された喜山康平。
喜山自身はFW指向が強く、シーズン途中からボランチにコンバートされたことは不満に思っていることだろう。
ただ筆者が見る限り明らかにボランチの方が適性が遥かにある。喜山の最大の特長は広い視野からのサイドを変えられる展開力にある。
守備などはまだまだ発展途上だが、ボランチ経験1年未満の選手に現段階で多くは求められない。
喜山の問題はスピード不足だと以前指摘したが、FWとしては致命的な問題であってもボランチだと致命的な問題ではない。ただ猫背で骨盤が後傾している姿勢は矯正する必要がある。しっかりと骨盤を前傾させてボールを点で蹴るのではなく、押して加速させる感覚が得られれば力んで打ち損ないが多かったミドルシュートの精度も良くなるだろう。
そしてトラップが浮いてしまうのも日頃から気をつけたい。どうしてもボールが体から離れてしまう場面が目に付いてしまい、もっとボールが体にピタッと吸い付くようになればボールロストも減ってくるだろう。各チームともボランチの喜山のところでボールを奪って速攻を狙いに来ている印象があったので他のチームも喜山のボール扱いの不安定さを認識していたのかもしれない(もちろん喜山の位置でボールを奪うとチャンスになりやすいというのもある)。

岡山の星と言われている地元岡山出身のサイドハーフの妹尾隆介。ドリブル突破はJ2でも十分通用し、観客をワクワクさせてくれるファジアーノ岡山の中心選手だ。
ドリブルが上手い選手にありがちなボールを持ちすぎてチャンスを潰してしまうという傾向は全くなく、ペナルティーエリア内でフリーになっている選手にパスを出す能力はずば抜けていて何度も決定的チャンスを演出し、アシスト数もチームナンバー1だった。ドリブルで突破できながら周りも見えるという相対するDFにすれば厄介な存在だけに妹尾の決定的なチャンスメイクを決めきれるFWがいればより一層妹尾が生かせる。
妹尾の課題はシュート力にあるのは誰もが思うところだが、徐々に向上しており来季は今年以上の得点ができると思う。
もうひとつ気になるのがゴールから遠い位置からのクロスがフンワリクロスになってしまって全く恐さがないことだ。遠目の位置からクロスを上げたいのであればもっと速いクロスを練習するべきだが、妹尾の場合はドリブルで中に入ってこれる能力があるのでもっとゴールに近い位置まで侵入してシュートするなり丁寧なパスを出すなリするほうがゴールという結果に近いと思う。妹尾はとにかくゴールに近いところで恐さを発揮するように見える。

妹尾の逆サイドでプレーをすることが多かったのが小林優希(ゆうすけ)。左足のキックの精度という武器はあるものの逆に言えば左足しかないという弱点をどう克服するのかが来年のファジアーノトップチームで生き残っていけるかの鍵になるかもしれない。相手チームとしても当然小林の左足は重点的に気をつけて左足を使えないような守備をしてくるだろう。小林というとどうしても左足でのクロスというイメージを持ってしまうのでそのイメージを打ち破って積極的にゴールに絡む意識が必要かもしれない。

ファジアーノ岡山の10番を背負い岡山県出身でキャプテンの川原周剛。ルックスも良くファジアーノ岡山の選手の広報役も担っているという面もあり、簡単には切れない選手という実力以外の部分も働きチーム残留となった。
川原が岡山出身でなければ契約更新はなかっただろう。そのくらいパフォーマンス面では見劣りしてしまうのが正直なところだ。年齢的にフィジカルを鍛え直すのも厳しく、これまで何故体を強く、大きくしようとしてこなかったのかという疑問がどうしてもつきまとう。
川原はスピードがない上に華奢で体を寄せられると何も出来ない傾向にある(スピードがあればディフェンスが距離を取ってくれるために多少体の強さがなくてもなんとかなるが)。
そのためスタメンで使われると何も出来ずに途中で交代するという最悪の流れが何度も見られた。相手が疲れてスペースが空く後半途中交代では活躍することもあったが、監督的にはスーパーサブはどうしてもスピードのある選手を使いたいと思われるので来季の出番はよほどパフォーマンスを上げないと厳しいと言わざるを得ない。来年は正念場の年になることは間違いなく、心してオフシーズンのトレーニングに取り組み、自分に出来る限りの最高の体を作り上げるしかない。

来季もレンタル移籍が継続されるFW西野の課題を挙げたい。
まずは怪我以前の状態に戻すことだ。怪我をする直前の西野は非常に頼り甲斐があり、絶好調の西野には何も言うことはない。シーズン通して怪我なく安定したパフォーマンスを発揮することが西野に求められることだろう。絶好調になる前の西野はシュートがなかなか枠を捕らえられず決定的場面は作るものの決定力に大きく欠けていた。怪我直前のゴールを量産していた状態と決定力不足の状態とどちらが本当の西野なのかは分からないが、前者であることを願いたい。

シーズン途中で完全移籍でファジアーノにやってきた三木良太。不慣れな1トップに苦しみ、自身のパフォーマンスを発揮できたとは言えない不本意なシーズンに終わった。
まず三木は体を強くすることが求められる。せっかく184cmと上背に恵まれているのだからその背の高さを生かせる体の強さが必要だ。今の三木では背が高いだけで弱弱しい印象で恐さを全く感じない。湘南の田原や草津の都倉のような強いフィジカルを求めるのは酷かも知れないが体幹を重点的に鍛えて当たり負けしない強い体を作っていく必要がある。

最後に選手構成に関して記しておきたいことがある。ファジアーノ岡山は若い選手のみで構成されていると言って良く、最年長は来年30歳になる川原で20代前半から半ばの選手がほとんどを占める。
やはりプレー面でも生活面でも若い選手の手本となるとなるベテランの必要性を感じる。若い選手中心の選手構成に異論はないが、経験のあるベテランが全くいないというのは問題だと思う。若い選手の能力を伸ばすためにも経験豊富なベテラン選手の必要性を感じたシーズンだった。
年間主要スタッツ

勝敗 8勝12分31敗 勝ち点36 18位(最下位)
ホーム 5勝6分14敗 勝ち点21 17位
アウェイ 3勝6分17敗 勝ち点15 18位(最下位)
得点 40 17位
失点 84 18位(最下位)
ホーム得点 18 17位タイ(最下位)
ホーム失点 35 14位
アウェイ得点 22 16位
アウェイ失点 49 18位(最下位)
シュート数 478本 9.37本/1試合 18位(最下位)
被シュート数 627本 12.29本/1試合 15位
シュート決定率 8.15% 17位
被シュート決定率 12.91% 15位
ホームシュート決定率 8.33% 14位
ホーム被シュート決定率 12.69% 12位
アウェイシュート決定率 8.01% 16位
アウェイ被シュート決定率 13.07% 16位
観客動員数 154,039人 6,162人/1試合 7位
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