ファジアーノ岡山関連コラムNo.5

ファジアーノ岡山の挑戦:2009年第1クールを終えて(2)(2009/5/30)


−落ち着けて練習できる環境が最重要課題−

自分達は上手いわけではない。これはJFLを戦っていた時でさえ選手から出た言葉だ。JFLレベルでえ技術的に優位に立てないのにJ2で活躍しようというのは非常に難しい。

ファジアーノ岡山の選手の技術力不足が顕著に表れたのは雨での試合となった第15節ホーム愛媛FC戦だ。
雨が降っているもののピッチに水溜りは全くなく、ピッチコンディションはやや滑りやすいものボールは滑るように進んでいく超高速ピッチとなっていた。

やや滑りやすいために運動量と激しいプレスが生命線となっているファジアーノ岡山の戦術が機能せず、パススピードが速くなることもあって愛媛に完膚なきまでやられて1-3で敗れた(決定機を決められていれば5点は失っていた)。
ファジアーノの大きな問題点としてグラウンダーの速いパスが出せないことにある。雨で速いピッチになるとグラウンダーでの速いパス回しが非常に生きてくる。パス回しを身上とするイングランドのアーセナルなどは晴れていてもパスが速くなるように試合前に水を撒くほどだ。

ファジアーノ選手はピッチを滑っていくようなパスが出せない。近くで観戦している子供でさえ「(中盤で)ヘディングばかり」とボールが落ち着きなく行ったり来たりしてボールをコントロール出来ない。強いチームというのはしっかりと止めて蹴るということが出来て、グラウンダーで滑るようなパスが出来る。ファジアーノの選手のパスはスピードの遅さもさることながらグラウンダーで出したつもりなのにポンポンとボールが跳ねてしまい、受け手が浮いた状態でボールを受けることが多く、必然的にピタリとボールを収めることが出来ず、相手に寄せられる時間を与えてしまい、最悪ボールを奪われてしまう。

なぜグラウンダーのパスが出せないのか、選手の能力不足というよりも練習の環境がそうしている可能性が高い。ファジアーノは専用の練習場を持たず何ヶ所も転々として練習している。
そしてその練習場も芝生が剥げていて土のグラウンドに近くなっていたりとどんなに意識してグラウンダーのパスをしても跳ねてしまう。そのような練習環境の悪さがきっちりとグラウンダーのパスを送る重要性を希薄にさせ、速いパス回しの練習さえできないのに、本番のピッチは非常に綺麗で相手はしっかりと繋げるのにファジアーノはドタバタしてしまう原因に繋がっているように見える。

ファジアーノ岡山に最も求められているのはしっかりと管理の行き届いた芝生の専用で利用できる練習場だ。専用練習場を持てれば最高だが、財政的に難しいので行政が専用で利用できるように手配する行政のバックアップが必要だと感じる。

ファジアーノ岡山は泥臭いサッカーをするんだと監督選手がよく口にするが、泥臭さも必要だが、技術力を向上させる環境を整備して確かな技術を育成するのはもっと大事だ(さらに言えば下部組織で綺麗な芝の上で練習して徹底的にグラウンダーのパスの重要性を叩き込むことが重要)。

専用の練習場を持たないことでフィジカルにも悪影響が出ている。本来ならば専用練習場にウェイトトレーニングの施設を併設して自由に利用できるようにするのが効率的だが、当然ウェイトトレーニングが出来る環境はない(スポンサーになっているスポーツクラブで一般会員と一緒にトレーニングしている状況)。
ファジアーノ岡山の選手は明らかに線が細く、フィジカル不足は明らかだ。特にキャプテンの川原や右サイドの臼井は簡単に体を当てられてボールを失う姿は悲しささえ覚えてしまう(真近で見た川原は驚くほど華奢)。

−3つのスピード不足−

サッカーは止めて蹴ることが重要だが、筆者は3つのスピードも非常に大切だと感じている。一つ目は走るスピード。オシム前日本代表監督がインタビューでで日本人に欠けているのはスプリンターだと話していたが、日本人は陸上の短距離で強い割にはサッカー選手のスピード不足はかなり感じていたので大きくうなづいたものだった。

ファジアーノでスピードがあるのは妹尾くらいなもので武田もスピードが持ち味と言われるが、他に特徴がないのでスピードくらいしか目立たないのでスピードが持ち味と言っているに過ぎず、走るスピード自体はそれほど脅威にはならないというのが正直なところだ。

スピード不足が深刻なのがチームの中心選手でサポーターから絶大な支持を受ける喜山だ。FWとしては致命的なほどスピードがなく、かといって体が強いというわけではなく、ヘディングも苦手でJFLでは通用してもJ2でFWとしてはかなり厳しいと言わざるを得ない。
喜山に速く走る才能が全くないとは思わない。まだ21歳でやり方次第ではそれなりのスピードを持てる可能性はある。喜山のスピードが出ない問題はマジメな性格にあるのかもしれない(その真面目さがサポーターに受けているひとつの理由だろう)。
恐らく非常に真面目な喜山なので腹筋も徹底的に鍛えてきているのだろう。しかし、走る時に使う腹筋は筋肉を縮めて使用するのではなく、伸ばして力を発揮するようにしないといけない。

というのも腹筋に力を入れてみると分かるが、腹筋を収縮させると体が丸まってしまう(猫背)。必然的に骨盤が後傾してしまい、走る時に地面を押す時間が短くなってしまい体が進んでいかない。喜山は非常に力を入れて走っているように見えるのに体が進んでいかないのはそこに原因がある。今のままではFWとしては全く通用しないだろう。走り方を変えるというのはキックに悪影響が出る可能性が出るので走り方を変えることに責任は持てないが、腹筋の使い方に伴う姿勢とそれに連動する骨盤の位置を変えないとFWとしての生きる道がないのも確かだ。

2つ目のスピードは判断スピード。これはファジアーノも重要性を認識しており、シーズン前のキャンプで高校サッカーで実績を持ちS級ライセンスを取得した作陽高校野村監督を招いて判断スピードのアップに取り組んだ。
すぐ効果が出るようなものではないと思うが、このような取り組みは評価したい。試合を見ていると逆サイドまで見られず視野が狭い印があるので判断力をアップさせて余裕を持ったボールの受け渡しと広い視野を持った選手が出てくればと思う。

3つ目のスピードはパスのボールスピードだ。前述したようにグラウンダーでの速いパス回しは高いレベルに行けば行くほど重要性が増してくる。ピッチを滑るようなパスでピタリと足下に収まれば守備に対しても詰められることもなく、自分優位でプレーが行える。しっかりとした強いインサイドキックで滑るようなパスを出せるようになればどことやってもそれなりに戦えるようになるはずだ。それだけにしっかりとしたパスが出せる専用の練習場の確保が急務となる。
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