−2勝6分9敗勝ち点12で17位− 今年のJリーグディビジョン2(J2)は18クラブ総当り3回戦制(17×3)の51試合の長丁場のシーズンとなっている。 各チーム1通り対戦が終わった第1クール17試合を終えてJFL4位で今年からJ2に昇格したファジアーノ岡山は2勝6分9敗の勝ち点12で17位で3分の1を終えた。 ホームでは2勝4分3敗勝ち点10(得点6失点10)で12位と健闘している一方でアウェイでは0勝2分6敗勝ち点2(得点6失点19)で最下位とアウェイゲームは特に最近は相手クラブのボーナスゲームと化している。 ホームとアウェイが逆の成績なら目も当てられないが、昇格がかかっているわけでもないのであまりアウェイの結果には敏感ではないようでホームで無様な戦い方をしなければそれでいいような雰囲気をサポーターからは感じる。 このスポーツコラムで今年のファジアーノ岡山は成績面ではダントツの最下位にならなれければそれでいいということを書いたが、第1クールの成績はまずまずよくやっていると言える。特にホームで昇格候補の甲府、仙台、札幌相手に引き分けに持ち込んだのは期待以上の結果と言える。 ただし、開幕から最初の5戦が昇格候補5連戦だったためにそこにピークを合わせて来たのと、各クラブともファジアーノ岡山を研究してきたこともあって第1クール最後の4戦は得点1、失点13で4連敗とチームが崩壊しており第2クールに向けて大きく不安が募っているのは否定し難い。 −攻撃の核・妹尾隆佑− ファジアーノ岡山の今年の戦術は昨年と変わらないフラットな3ラインの4-4-2を主に用い、第1クール中盤戦では攻撃重視で行く場合は喜山をトップ下とするダイヤモンド型の4-4-2を採用していた。 昨年はボールを奪ったら即FWに預けるかサイドのスペースへ出してサイドハーフを走らせる速攻を徹底してJFLを勝ち抜いてきた。 昨年のJFLでは前半戦こそその戦術が通用したものの後半戦は通用せずJFL中位程度の実力に落ちてしまったところをどのように立て直すのかも注目された。 昨年は喜山・小林康剛が絶対的な2TOPと君臨して得点を量産した。しかし、J2になると選手のレベルが格段に上がり、両選手とも通用しているとは言い難い。 幸いにも大分トリニータから西野をレンタルで借りて来られたことで何とか攻撃になっているのが現状だ。 昨年の2TOPはお互いポストプレーを得意としていないのでプレスをかけて高い位置で奪ってスペースに2TOPなりサイドなりにボールを出して攻撃をしようとしていたが、西野が競り合いに強いことを利用して特に苦しい体勢になったら西野の頭めがけてボールを入れることを重視している。 シーズン序盤はそれが通用してこぼれ玉を拾ったりして攻撃の形になったが、西野を徹底的にマークされると打つ手がなくなった。 そのためファジアーノ岡山は開幕6試合で2得点と深刻な得点力不足に陥った(失点も3だったので引き分けで勝ち点を稼いだ)。 そこで攻撃の救世主となったのが去年はスーパーサブで活躍し、ファジアーノで唯一スピード豊かなドリブルで個人で打開出来る地元出身の妹尾隆佑だった。 妹尾は開幕6試合のうち先発は僅か1試合で後半20分くらいから投入されることが多く、妹尾を出てくると得点の匂いがしていた。 ようやく第7節から先発出場を果たすとファジアーノに決定的に欠けているボールを持って個人での突破を思う存分発揮し、西野のポストプレー以外では唯一個人で通用するパフォーマンスを見せて次々とチャンスを作り出した。 妹尾が先発するようになった第7節から12節までの6試合は全ての試合で得点を挙げ、6試合で8得点と得点力不足は下位チームとしてはかなり解消に向かっていた。 しかし、12節の熊本戦のアディショナルタイムに足首を捻り、全治8週間と診断され(ただの捻挫で全治8週間と言うのもおかしな話でメディカルチームの能力にも疑問だが)、第2クール中盤まで妹尾抜きで戦うことになった。 妹尾抜きの初戦でラッキーな形でゴールを奪って勝利を収めたものの、以前の得点力不足に逆戻りで妹尾離脱後5戦で2得点とあまりにも妹尾に頼っていたことが浮き彫りとなった。 −崩壊した守備− JFLで失点が多かったことで守備を重点的に強化してきたファジアーノ。その効果ははっきりと表れ、昇格候補5連戦での失点はわずか3で無失点試合が3試合もあり、JFL時代とは見違えるほどの安定感だった。 ファジアーノの守備を支えるのは全員の激しいプレスと運動量にある。西野・喜山の両FWが積極的にプレスをかけて全員の運動量で技術不足を補おうという戦術だった。 この運動量とコンパクトなラインで相手に自由にボールを持たせないことでファジアーノの堅守は成り立っていた。 しかし、今年のJ2は超過密日程でハードワークし続けるのは無理があり、選手は疲労で動きが鈍くなってしまう。5節までに僅か3失点だった守備は10節までの5試合で11失点と4倍近くに膨れ上がり、最後の4試合では13失点と守備陣は大崩壊してしまった。 もちろん相手チームの研究が進んだこともファジアーノの守備陣が崩壊した大きな要因でもある。両CBの植田と金はスピードに欠けていて1対1でのスピード勝負に弱く、多くのチームが縦のスピードで勝負してくるようになって失点を重ねた。 植田は高さはあるものの、攻撃が好きな選手で度々上がって攻撃をしようとする。植田が上がった時に中途半端に取られて植田がDFラインに戻る前にやられてしまうという場面も多く、植田には特に0-0の場合は攻撃を自重することが求められる。 金は1対1で競り負ける場面が多く、フィジカルでゴリ押しされるときつい。金も植田ほどではないにしろスピードがないのでスピード勝負に持ってこられてもきつい。 2戦目の仙台戦の前半に負傷し、第1クール終盤の15節に復帰した野本だが、仙台戦までは非常に良いパフォーマンスを見せていたものの、怪我から復帰してからはまだパフォーマンスが戻っておらず、CBで使うのは厳しい状態だ。 CBの能力不足よりもボランチのパフォーマンス不足の方がより深刻だ。昨年もボランチに問題が出て関を緊急補強したが、明らかに能力的に抜き出ていた(フィジカルや足下の技術は異彩を放っていた)関を放出して、甲府から保坂を迎え入れたものの、保坂は関ほど足下もうまくなく、体も強くないのでボールが収まらず、相手が主導権を握り続けることになった。 保坂は2ボランチのどちらかといえば攻撃的な役割を担っているが、どちらかと言えば守備的な役割の小野のパフォーマンスも非常に厳しい。昨年よりも体も引き締まり、体も動けていて昨年よりは遥かにパフォーマンスは良いが、昨年のパフォーマンスはJFLでも厳しいものだっただけに飛躍的に良くなってもJ2レベルでは厳しい。小野も保坂と同様に足下は上手くなく、身長も低く、体も強くないので関のような体を張った守備が出来ず、相手にボールを持たれる時間を多く作られてしまっている。 ポゼッション率(ボール支配率)は数字が出ていなく感覚的だが、ファジアーノは4割にも満たない感じで相手が2倍ほど長い時間ボールをキープしているような感覚を受けるほどファジアーノはボールを持てない。ボールを持てないことを証明している事例としてファジアーノはシュート数がJ2最低の1試合平均9.17本でトップのセレッソは16.06本と違いが大きくかけ離れている。そしてシュートを打たれた数は1試合当たり12.41本とシュート数よりも1.35倍も打たれている。この数字はJ2の中でダントツに悪い数字となっている。 関を放出したのが監督の判断なのか、GMの判断なのか分からないが、加入直後から他のファジアーノの選手とは明らかに次元の違う体の強さとキープ力を持っていた関を放出したのは失敗だったのは明らかだろう。 ファジアーノ岡山は17位と最下位は免れているが、サッカーの内容は最下位レベルで特に妹尾がいなくなるとダントツの最下位であるというのが第1クールを終えての印象だ。 |
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