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日曜昼十二時四十分/一階ハンガー

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■   ■

遠く校舎から、昼間のチャイムが聞こえる。
岩田が生体部品を弄っていた為、自然に数値を調整する側に回っていた遠坂は、長いこと丸めていた背中を伸ばして腕を回す。

それにしても、今日は他のメンバーは誰も来ないんだろうか?
田代は時折授業に居ない事はあるものの、仕事はまだ真面目なはずだ。
そしてなにより主任がいない。
まあ、他の機体も修理が必要なはずだからそちらに行っているのかもしれないが…

軽く伸びをして、荷物を取りその場から離れる。
食堂に一人でいくのも何だし、かといって地面に座りたくもない。
何時間も人の流れがないのをいいことに、二階へ続く階段の中ほどに陣取ることにした。

士魂号をぼんやりと見上げながら紅茶のパックにストローを突き刺す。

それは戦いのための機械。戦いの為の人。
必死にそれを作り上げて、それは戦い殺す。

整備士の一人が、幻獣が士魂号とパイロットを殺す、だから憎いと言ったのを覚えている。
なら私は何を憎めばいいだろう。ただ自分の充足のために戦場へそれを送り出す自分は。
こんな思いをするくらいなら、自分が戦場に立ったほうがましかもしれない、そう思う。たとえ今以上の矛盾を抱えることになろうとも、何かに追われなければ押しつぶされそうだった。

どれほどの迷いを持っていても、戦場で迷うことはないだろう。
迷うことは死なのだから。

…迷い。恐れ。不安。
階下で踊っている…あれは踊っているんだよな、
あれは今までと似ているがただ踊っているだけだよな…
…あの彼にもあるのだろうか、そういうものが。


彼はパイロットになりたいと私が口にする前から、なぜか士魂勲章を持っていた。
志願するでもなく持っているということは、いずれ必要になったときのためだろう…あれにも戦場に出る気があるわけだ…私よりも具体的に、確実に。


「…岩田君」
ふと、呼ぶと岩田は回転しながら器用に階段を上ってきた。
「フフフ、なんでしょう?タイガァァァア」
「その名前で呼ぶな。……やはり、いいです。」
「フフフ貴方僕のことが気になっていますね?
 ヘンタイ、ヘンタイイィィイ!」
そちらを見もせずに右ストレート。階段の段に絡まりながら落ちていく岩田。

遠坂は、大きく息をついた。

とりあえず、これはほっといて、自分は自分でなにか行動を起こそうと。
今まで何度もそう考えたはずなのだ。何度も。



2002/3/6/BXB

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