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超日常


時はある日、のいつもの朝。そんで、場所はカレリア。

その前日、カレリアにたどり着いたのはかなり夜も更けた後で、
毎日賑わっている酒場さえ人っ子一人いなくなってテーブルに椅子が上がっているような時間だった。
時計は見てないからわからんが、たぶん三時は過ぎていた気がする。呼び鈴をいくら鳴らしてもカウンターに誰もでてこねえものだから、しまいにゃそのまま空き部屋に転がりこんで、疲れ果てた俺達はそのまま寝ちまった。
勝手知ったるとはいえ上がりこんだのは悪かったとは思うが、ほとんどの客が傭兵連中だからって鍵もろくすっぽつけてねぇ宿のオヤジも悪いとおもうぜ。で、朝っぱらから怒鳴り込まれたわけだが、それで懲りる連中でもなく、二度寝を決め込んで今は昼だ。訂正。時はある日、いつもの昼。

目を覚ませば、誰も彼もベッドの中。あたりにゃ散らばった服やら道具袋やら武器やら、無防備だともいえるがある意味物騒なことこの上ない有様だ。
アイラは猫みたいに丸くなってるし、ジョーカーは解いた髪の毛がなんかおっとろしいことになってる。クイーンは壁向いてるから表情はわからないがまあ寝相はいいほうだ。で、いつものことだがジャックはいない。誰も彼もといってもあいつだきゃぁ数にもはいらないな。
で、大将は………や、やめとこう。目の毒だ。うん。

一通り部屋の中をみまわして、なんつうかやっぱり気になるわけよ。こう、床にゴロゴロしてる上着だのシャツだの靴下とかな。
そういう細かい自分の性格がたまには自分で疲れもするが、気になるものは仕方ないわけで、俺はそれを拾い集めては洗濯籠に突っ込み始めた。
基本的にゃここはセルフサービス、つまり勝手に洗濯でも何でもしとけって宿ではあるが、金を払えばクリーニングは頼まれてくれる。
財政難の時は仕方ねえが、なにもそうでないときに一人で小隊全員の洗濯なんて、町の奴らには後ろ指を指され、デュークの野郎にいたっては人差し指で指されるようなことは好んでしたくはない。
よって今回は頼むことにする。そう決めちまえばさして足取りの重い仕事ではないからして、さくさくと俺はそこらに散らばったアレやらコレを籠に詰めていった。

着たきりすずめで各地を練り歩き任務を遂行する傭兵って職業は罪なもんだ。なんたって、大きな声じゃあいえねえが靴が臭い。いやホント、疲れてるから夜はわからねえが朝になって我に返ると鼻がもげそうになるもんだ。我ながら。
代えの靴下でも持ち歩けばいいんだが、ちょっと代えるのを忘れちまって一晩とか過ごしちまったりすると今度は代えた後の靴下の処理に困るんだよな。こないだも鞄に適当につっこんで書類が…いや、この話はまた後日。なんなら忘れてくれ。あ、誰も大将の靴が臭いとかクイーンの靴がボソボソとかは言ってないのでそこんとこは宜しく。

床に散らばった物を集めたら今度は使ってないベッドに投げ出された上着から埃を払う。どっか破れてたりするのをうっかり見逃して洗濯しちまったりすると一度で使い物にならなくなるからな。良けりゃ雑巾にでもなるが悪けりゃそのまま見えなくなる…まあ、見せられない有様になるってことで。俺の一張羅もところどころほつれてきたような…今度ゼクセンに行ったら服屋を覗くか…
ばさばさと服を広げて、次のに手を伸ばすとその真っ黒でずるずる長い上着は見まごうこともないだろう大将の上着だ。見た目の印象より触るとしなやかな感触を覚える。まあくたびれてるとも言うが。
あー、大将の匂いが…いや、嗅いでない、嗅いで無いぞ俺は。
ぶんぶんと頭を振ってそれを持ち上げると、袖がぶらんと変な形に曲がった。おい。これ、ざっくりと切れてるじゃねえか。
すうっと血の気が引くのを感じて、あわててまだベッドの中の大将を見たが、別段変わった様子もない。
ってか、いつこんな切れ方するような傷を受けたんだ。あの人は本当そういうこと全然口にださねえし顔にもださねえし、ついでに言えば隠し方が下手なわけでもないっちゅうのが非常にタチが悪くてこっちは気が気じゃないんだ。
まあこないだは思いっきり血がボタボタしてたから分かりやすかったが、分かりやすけりゃいいってもんじゃないでしょうそれは!…ああ、思わず過去の大将にツッコミをいれてしまった。そうじゃなくて。
もう一度まじまじとその切り傷っぽい?裂け目を見れば、血が付いてない。ん、ってこたあ戦闘で付いたわけじゃない…のか。四日前にダッククランで宿を取ったときゃ切れてなかったし……まさかただぶっちゃけたのか…?そこまでくたびれてたのか………今度ゼクセン行ったら服屋だな。うん。俺のはまた今度でいいか…

残りの服をかきあつめて、ころがった武器もサイドテーブルにのっけて、ベッドの下にあった小銭はポケットに収めて、俺は籠を持って部屋を出た。

日は高くて窓から差し込んだ強い日差しが肌を焼く。
今から洗っても夕方までには乾くだろ。

…どうせそれまで皆さん起きないだろうしな。



2002/9/16/BXB





思いつくまま書きなぐったらこんな話に。
靴の話は失言のような気も。


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