どすん、とみぞおちにかかる衝撃。
「ぶっっっ!」
目がとびだすかと思うくらいに、腹の中の空気が一気に流出した。
瞬間、息が吸えなくなって、意識がふたたび白みかけ、ゆさぶられて、やっと入ってきた空気にむせながら体を起こす。重い。
「ほらほら、いつまで寝てるんだ。
そんなにロイヤルスイートは寝心地がいいのかい?」
腹に乗ってるのはアイラで、ぼこぼことエースの胸を毛布越しにたたいている。「おーきろー」て、いや、おきたからやめてくれ。
枕元に腕を組んで立っているクイーンがベッドから出ている足に蹴りをいれる。もう無茶苦茶だ。
「ってめえらなぁ、もうちょっと起こし方ってものが、ってぇぇ・・・・」
「美女二人に起こされるなんて、
あんたにはもったいないシチュエーションだろう、
感謝してほしいねぇ」
「あん?誰が?どこに?
ここにいるのはガキと年増だけだけどなぁ〜」
エースがとぼけた顔でキョロキョロしてみせると、
アイラがその頬をつかまえてひきのばす。
「あたしは子供じゃない!立派な一人前の戦士だ!
美女でもない…けど」
あっはっは、とクイーンが笑う。自分も何かしようとしたみたいだったが、アイラの攻撃がどうも微笑ましくて気がそがれたようだ。
エースは左右に頬を引っ張られたままで抗議する。
「いひにんまえのへんしがひほのはらにのっれんらよ!」
「何言ってるんだ?」
「はらへ!!!」
自分でひっぱっておきながら、本気で首をかしげるアイラをなんとかベッドから追い落とす。と、毛布が引きずられて足元に落ちた。
「ん、毛布?」
ふっと目をやると隣のベッドはシーツに皺が寄っているが中に入った形跡はない。毛布もない、ということは、これは。
「あ、また変な顔してる。」
「アイラ、これはイヤラシイ顔というのよ。」
横で二人が素直な感想を述べているが、エースは毛布の端をにぎってまた別なことを考えているようだ。
「これってイヤラシイんだ、エースは相当イヤラシイんだな、
昨日もこんな顔してたし」
「本当にイヤラシイねぇ」
すぐ側で勝手なことを散々いわれているが、でもまあ、イヤラシイ顔をしていることには間違いないので、仕方がなかった。
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