非日常
そう、たとえばそれに、理由があるのだろうかと、思う。
そうやってふと目を伏せて動きを止めて、
物思いに沈むあんたに、俺は気づいて、
そのたびにそういうあんたじゃなく、自分が。
そういう自分が可笑しくなる。
本当にバカげてるなぁって、思う。
その何げないしぐさには意味なんかないのかもしれないのに。
でもそれに毎日のように気づいて、
俺はそのたびにいろいろなことを考える。
心配事があるんじゃねえかとか、
なにか厄介ごとが舞い込んでるんじゃないかとか、
いや、つまりはそれは同じことなわけだが…
そうやって、毎度、おんなじことを考えてる自分はバカだ。
毎度毎度あんたが…そういう顔をするのは、いつものことなのに。
「はぁ」
「なんじゃ。女にでも振られたか?」
「一言目からそれたぁご挨拶だなジジイ」
ため息なんて誰に聞かれたってかまやしないが、誰に聞かれたってこの面子じゃ絡まれるだろう。絡まれるのがわかってても出たわけだが。
「お前がため息をつくなんざ金か女のことだけじゃろう、
他に何かあるのか?」
「べっつにィ…」
「珍しい。この俺が女に振られるわけがねぇ、
俺から振ってやったんだ!とか言うと思ったんじゃがのぅ」
「だぁら、振られてねぇよ!」
「不能になったか?」
「誰がだ誰が!てめぇと一緒にすんな!」
「わしゃ現役じゃ」
そう、とてつもなくそれは日常風景で、
とてつもなく、いつものように、いつものようだ。
「…あんたら、下品」
どうしようもなく、変わらない。
「ぁあ、違うんだよ!俺はそういうことじゃなくてだなぁ、」
それが、俺は、嫌だった。
ある種の心地よさすらともなうその倦怠感に俺は飲み込まれたくなくてあがいていた、のだ。
「ぁ、ゲド」
「あ」
止まっていたら追いつけない気がした。
それは、勘違いかもしれないが。
「今日は早いんじゃなかったのかい?」
「……やかましくて、寝れん」
「へぇ、意外と神経質だねぇ」
「…やけに、響いてな」
頭を指して俺を一瞥した。
「…なんじゃ。なにをニヤついておる」
「べっつにィ」
「気持ち悪いぞ」
「うるせぇなあ」
俺はきっと本当にバカなんだろうなあと思う。
誰かに言われりゃ、腹が立つが。
2002/7/27/BXB
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