吹き荒れる風も、ガタガタとこの小さな小屋を鳴らしはするが、
部屋の中にともる火を揺らすほどではなく、戦いの合間ふと野暮用に旅立った二人を突然襲った嵐は、このまま通りすぎるならさほどの障害ともならないだろう。

もっとも、これですこしは時間をとられる羽目になったが。

ひとりごちて、ゲドは燃え付きようとする火に元は椅子であったものを投げ入れる。

「大将、薄っぺらいけど、ないよりはましですかねえ」
小屋の奥をあさっていたエースが色褪せたシーツを肩にひっかけて戻ってきた。
「服は大丈夫ですかい?乾かさないと風邪引きますぜ」
言いながら防具をばさばさと外しブーツを脱ぐ。
「いや、本振りになるまえに入れたからな…あらかたは乾いた」
向けた目を火に戻すと、そうですか?となにやら残念そうな声が降ってきた。

「明日はすぐに出る、早く寝てしまえ」
追いやるように手を振ると、大将は寝ないんですか?と聞かれる、それに答えようと顔をあげると。
ばさりと、視界が白く濁った。

「…おい、エース。」
シーツを頭っから被せられて、しかしそんな子供じみたおふざけもないだろうと、そこでもがく気にもなれずにただ呆れ混じりで声を出したのだが、背後からそれだけではなく腕が伸びた気配に、背中を包んだ体温に息が止まる。

「ぁあ、寒い!あー、寒くて、眠れないなぁ!」
腹のあたりにしがみついて、シーツに絡まったままエースが叫んだ。

「…おい」
そのあからさまにふざけた声色に、一瞬明滅した思考が落ち着きを取り戻す。
腕を外そうと掴んでみるが、きつく拘束されているわけではないのに、手は必死なほどがっちりと組まれていて外れない。

「エース」
今度は少し怒気を孕んだつもりだが、いつもなら弾かれるように反応するエースが、今日はなにやら決心があるらしく。

「ね、大将。ほらえーと、寒いですし。
 こうしてりゃぁ、少しは、あったかくありません?」
……決心というには、どうも、この腰の低さはなんなんだか。そのわりに、離れるつもりはまったくなさそうな腕の強さもなんだか。

しかし背中に感じる温もりはけして、不快ではないのも、自嘲気味にも自覚しているのだ。
ため息をつく。

「……お前のほうが、体温が高いな。
 こうしてる方が冷えるんじゃないのか」
「いやいや、俺にはこの燃え盛る熱いハートがありますから。」
それは答えになっていないだろう、と思いつつ、その自信たっぷりな言い方に苦笑する。
「…それなら俺もその熱いハートとやらにあたらせてもらうか…」

何の気なしに口にしたのだが、
回された腕が少しだけ力を強めたのが、分かった。



2002/11/25/BXB






ほら、勤労感謝ですし、ちょっとぐらい…いや、だばだばと耳から砂糖がでるような話でもいいですか…(逃げ腰)
トップ絵を書いたはいいものの、これだけなのもあれかと思いまして話を考えて見ました。仕事中に。そして、セリフが思いついて、自分で腰が砕けました。粉砕。
二人旅だわ山小屋だわ、コテコテです。それ逃げろ!


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