★「みかん」日記 その1 

ペットショップで、「みかん」と目が合った時に運命みたいなものを感じ、すぐに飼うことを決断しました。

生後2ケ月で我が家にやって来た3月生まれのわんこは「みかん」と名付けられすくすくと成長..する予定でした...
しかし、夏を迎えたころから体調が思わしくなく、吐くことも多く、時には呼吸がぜ〜ぜ〜するようになってきました。
そして、興奮すると気道が完全にふさがってしまい呼吸ができなくなることが起きるようになってきました。
救急外来で何度も動物病院にかかりましたが、対処のしようがなく、呼吸が止まる時間がどんどん長くなってきました。
呼吸がとまったまま、このままでは死んでしまう..という最悪のとき、必死になって指を喉の奥まで入れて気道を押し開いてあげると回復させることができました。

(あぁ〜よかった)
ですので、過度の興奮や運動ができない状態でした。

このころから、食べたものを吐くことも多くなり、何度も病院にかかるようになりました。
でも、体重も順調に増えており、特に大きな心配はしていなかったんです。

ところが、年の暮れを迎えたころ、食べたものを全て吐くようになってしまいました。
それまでも、レントゲン検査もずいぶんと行い、普通の写真よりもレントゲン写真のほうが多いんじゃないか..っていうくらいです。
そこで、遠方ですが機材のそろっている病院で更なる精密検査を受けることにしました。そして得られた診断結果は、巨大食道症。
食道の扇動がなく、胃に食事を送れないものでした。
後天性のものであればある程度対処方法はあるそうですが、先天性の場合、回復する見込みは数%だとのことでした。

また、このころから胃の幽門が閉塞し、まったく栄養が取れない状態となっていました。
そこで、入院することとなり、点滴による栄養注入をおこない血液検査も遠くアメリカまで依頼し、いろいろな検査を行いました。
もう、ころからはまったく歩くことができなくなり、寝たきりになってしまいました。

大事な家族ですので、費用のことはできるだけ考えないようにし、良かれと思うことは全てやろう!と家族で決意しました。

ところが、入院も1週間を過ぎたころ栄養剤の点滴だけでは体を維持することが難しくなり、体重も半分近くまで減ってしまいました。
もう、限界でした。医師と相談し、胃にカテーテルをいれて直接流動食を入れることにしました。
治療を施すにしても、体力を回復させないことにはどうにもならないからです。

そうして、手術によりカテーテルをお腹に取り付けました。

その後、ICU(!)に入り、酸素吸入を受けながら体力の回復にかけたのですが、体重も増えることなく、呼吸も荒い状態が続きました。そうして1週間ほど過ぎた夜、医師から連絡があり、「危篤状態です..」
病院で最後を見取るか、自宅に連れ帰りますか..とのことでした..
覚悟はしていましたが、とても残念な気持ちでいっぱいでした。

そして、いろいろな思いを巡らせながら病院まで迎えにいきました。
すると、目もうつろで呼吸もままならない「みかん」がICUのケースの中に横たわっていました。
その姿に、もう厳しいことを感じ、自宅に連れ帰ってきました。

車の中では、妻がずーっと抱いていたのですが、不思議に呼吸が楽になってきている気がしました。(実は、「みかん」..とっても寂しがり屋なんです)
こうして、娘をはじめ、家族でかわるがわる抱いていてあげると、不思議なことに助かるような気がしてきました。
そして、一日、二日と過ごすうち、目も輝きを増してきて、生存に望みが出てきたんです。

食事は、ADという缶詰の中身をスプーンで丁寧に擦りつぶし薬と混ぜて、シリンジでお腹のチューブから入れてあげます。
これを一日4回..夫婦で勤務していますので大変でした..

そのうち、意識もはっきりしてきて、目で私たちを追うことができるように回復してきました。もちろん、まだ体はまったく動かず寝たきりです..

こんな「みかん」なので、目を離すことができず、夫婦で茶の間(フローリング)の床に「みかん」とともに寝る生活が始まっていました。そうして、一月が過ぎたころ、なんと、這って動くことができるようになりました。これはうれしかった..家族で喜びました。
このころの「みかん」はオムツをして、お腹にチューブをつけ、体はネット包帯で包まれ、顔は鼻からカテーテルを入れ、首には傷口を舐めないようにネッカーを巻いた..なんともいえない状態です。

食道には胃に入っていかない痰のような物や唾液がたまるのですが、それが気管に入ると誤嚥性肺炎になってしまうため、数時間ごとにシリンジで吸引する必要があります。
事実、何度も誤嚥性肺炎で危ない目にあっています。また、胃捻転も併発し、何度慌てて病院にいったことか..

そういえば、ある日悲惨なことが発生しました..
元気だったころ、トイレ以外では用を足さなかった「みかん」ですから、多少でも動けるようになると真っ先にトイレに向かうようになりました..
そして..ある日、仕事から帰ってくると部屋の中が異様に臭い..あぁ..○ンコだらけ..そう、オムツの間からはみ出た○ンコを這いずりながら部屋中に撒き散らしてしまいました..
我が家の暖房は、ボイラーによって温水を床のフローリングにまわす仕組みで、床のどの部分も温度は40度くらいあります。
○ンコは、伸びた状態で乾燥し、悲惨な状態でした...
そして、「みかん」の体も乾いた○ンコまみれ..体は前述のような状態なので洗ってあげることもできず、悲惨でした...

その後、さらに数週間が過ぎたある晩、「みかん」がお座りしているような錯覚?を感じました..(夫婦とも)
寝ぼけ眼でう〜ん..と見ると、やはり「みかん」は横たわったままです。
「あれっ..気のせいだった?」状態でした。

ところが、さらに数日後の深夜、枕もとにちょこんとお座りしている「みかん」を見てしまいました。
そう、やはりお座りできるようになってきていたんです。
これは、うれしかったです。ひょっとしたら歩けるようになるかも..と小躍りしてしまいました。

それからは、やせ細った足と肉玉の補助のために、滑り止めを足に巻きつけ歩行訓練です。
そうして、1週間が過ぎたころ、なんと!歩けるようになったではないですか!
家族みんなで、飛び跳ねるほどの喜びを感じました。

その後、順調に回復を続け、歩き回れるまで回復しました。
ようやくオムツも不要になり、うれしさ倍増です。
そして、あきらめていた彼女の1才の誕生日を迎えることができました!!
うれしくってうれしくって、みんなで誕生ケーキを買ってきてお祝いしました!

そうして、どんどん体力も回復してきました。
しかし、ある日..床に血を発見しました..ザワ〜っとしましたが..なんと、生理でした(笑)。
病気のせいか、生理はこないかも..とあきらめていましたが、なんといつの間にか女の子になっていました(喜)

しかし、相変わらず食事は口から取れないため、お腹が空くので、床を舐めまわすようになってきました。

そうした日々を過ごすうちに、鼻から吸引する液が血に染まるようになってきました。
おそらく、食道壁に異常をきたしているのではないかとの判断で、食道内壁にコーティングをする最新の治療を施すことにしました。
その治療を行うために、ある機械が必要でしたが、とても高価なもののためめったに在るものではありませんでした。
しかし、先生の計らいで輸入元(大阪)からお借りすることができることになりました。

出血も多くかったので、機材を空輸し、メーカーの方も機械操作の補助のため病院まで来ていただきました。
そして、手術が始まりました..しかし、ずいぶん時間がかかっています..

なんと、出血の原因は別な理由でした..

床を舐め回していたことは、知っていましたが、まさか床に落ちている自分の毛があれほど食道に溜まってしまうとは...

そう、その毛が溜まりに溜まって、鶉の卵状に固まり、石のようになって沢山食道に詰まっていました。それが食道壁と擦れ合って出血を引き起こしていたんです。(胃と食道が塞がっているんですから、溜まって当然といえば当然でした..)
そこで、ファイバースコープにマジックハンド?を取り付け、丁寧に少しずつ除去していきます..
大変な作業です。いろいろな方法を試みましたが、結局地道に行うしか手はありませんでした。
午後3時から始まった手術は終了したのが午後11時過ぎ..
何百回とファイバースコープ内をマジックハンドが行き来しました..
先生も体力の限界までがんばってくれました。もちろん看護師の方も...なんと感謝してよいやら..涙が出てきました..

おかげさまで、その後1週間ほどで出血もなくなり、あれほど匂っていた食道内の液体も匂わなくなってきました。(よかった..よかった)

以後、絶対に床を舐めれないように、首に巻いたネッカーに透明ビニールを張り、ますます情けない姿になってしまいました(笑)。

その後、鼻のカテーテルが抜けたりで何度も慌てた病院通いがありましたが、今ではカテーテル挿入時にの食道と気道の違いがわかるようになり、何とか自分で処置ができるようになりました。
(最初のころは、鼻のカテーテルは絶対に触らせてくれなく、逃げ待っていましたが、ようやく落ち着いてくれるようになりました..)

また、お腹のカテーテルも数日ごとに消毒しガーゼを換える必要がありますが、お腹の手当ての時はとってもいい子です。
(手当ての間は、じっとして動きません..命にかかわる大事な作業と認識でもしているのでしょうか?..)

そうして、1年が過ぎ、2年が過ぎ..とうとう3歳の誕生日を迎えることができました。
状態は、相変わらずですが、元気に暮らしています!
彼女は、「みーちゃん」と呼ばれたり、「おみかんさま」と呼ばれたりですが、なんともマイペースに暮らしています。

今までにかかった費用は、考えないようにしています(笑)
だって、保険利きません..なので改めて計算すると、きっと気絶します..

このようになんとも、大変な日常ですが不思議と苦労を感じません。
こんな大変な子ですが、私たちが今度生まれ変わったときに「みかん」と逆の立場かもしれません。
そんなときは、「みかん」に世話をしてもらう予定です(笑)
だから、いまは家族一同みんなで目一杯の世話をしてあげています。