携帯電話・プロバイダー・ケーブルテレビ(CATV)・
有線放送・衛星放送等のクーリングオフ

(神 行政書士事務所作成)
電話(携帯電話)・インターネット接続サービス(プロバイダー)・ケーブルテレビ(CATV)・有線放送・衛星放送等の通信事業、放送事業に関する契約には、クーリングオフ制度の適用はありません。

これは、通信事業、放送事業等を規定した法律(電気通信事業法、放送法など)においてクーリングオフ制度が規定されておらず、また、訪問販売や電話勧誘販売におけるクーリングオフ制度を規定した特定商取引法においても、 通信事業、放送事業等に関する契約が特定商取引法の適用除外となっているためです。

クーリングオフ制度の適用がない理由として、これら通信・放送サービスのような継続的役務(サービス)は、いつでも解約できるということから、クーリングオフ制度を規定するまでもないという点が一つあります。また、多くは、店頭や電話・郵便(通信販売)で自ら申し込むことが多いと思われます。 このように自分から申し込む形態の店舗販売・通信販売には原則としてクーリングオフ制度の適用がないことは言うまでもありません。

しかし、一番の理由は、二重規制を防ぐためです。通信事業、放送事業は認可制であり、電気通信事業法、放送法等によって厳しく規制されています。それをさらに特定商取引法でも規制したら二重に規制することになってしまうからです。

通信事業者、放送事業者は、悪質商法をしないという前提に立って事業認可がされており、そもそも悪質商法をしないわけですから、電気通信事業法、放送法等においてもクーリングオフ制度が規定されていないのです。

以上のように、通信・放送サービスにはクーリングオフ制度がありませんから、たとえ訪問販売や電話勧誘販売で契約した場合であっても、携帯電話やプロバイダー、有線放送などの契約はクーリングオフできないのです。

ただし、通信事業者、放送事業者の中には訪問販売や電話勧誘販売をする者もおり、苦情が出るのも事実です。そこで、業界団体の取り組みとして、あるいは個別の業者が自主的にクーリングオフ制度を設けるケースが多く見られます。

ですから、法律上はクーリングオフできないものですが、訪問販売や電話勧誘販売の場合においては、業者(業界団体)が自主的にクーリングオフ制度を規定している場合が多いので、受け取った契約書(約款、規約)を確認してみることです。そこに、例えば「契約から8日以内ならクーリングオフできる」と書いてあれば、その規定に従ってクーリングオフすることができます。

また、これらのケースでは、確実性を期待するなら書面でクーリングオフ通知書を送付することになりますが、業者のお客様相談室(カスタマーセンター)等に電話をすれば、クーリングオフを受け付けてもらえることも多いです。

もし、クーリングオフできなかったとしても、これら継続的サービスはいつでも解約できる種類のものですから、途中で解約を申し出れば良いでしょう。
(但しNHKを除く)
なお、2年間は途中で解約できないという種類の契約や途中で解約する場合には解約料が発生するケースもあります。それら契約の内容や解約については、業者に相談してみてください。

参考
通信契約・放送(受信)契約については、特定商取引法の適用はありませんが、消費者契約法の適用はあります。ですから、業者の説明に嘘があったり、業者から契約の根幹に関する重要事項についての説明がなかったために誤認して契約したような場合は、消費者契約法の規定により契約を取消すことができます。
ただし、この場合は、現実問題として相手業者との交渉が必要になるでしょう。また、この場合の契約の取消しは、クーリングオフという無条件解除とは異なりますので、使用利益・不当利得の返還義務等が発生する場合があります。



通信・放送事業者の物品の販売・貸与について

ところで、通信・放送事業者が、電話機や映像視聴機器等の物品を販売・貸与する行為は特定商取引法の適用除外になるのでしょうか?

通信・放送事業者の契約は、特定商取引法の適用除外となっていますが(特定商取引法第26条第1項第8号ニ)、この中で、例えば、電気通信事業法の適用を受けるプロバイダーの場合は、 「電気通信事業法第2条第5号に規定する電気通信事業者が行う同条第4号に規定する役務の提供(特定商取引法施行令第5条、別表第2、第32号)」が、特定商取引法の適用除外となっています。

つまり、プロバイダーの行う行為が、電気通信事業法第2条第4号に規定するサービス(電気通信事業)に該当すれば特定商取引法の適用除外であり、電気通信事業に当たらなければ特定商取引法の適用を受けることになります。

単なる物品の販売・貸与は、電気通信事業ではありませんから、例えば、プロバイダーが時計や洋服を販売するような場合は、特定商取引法の適用があり、訪問販売や電話勧誘販売、通信販売において特定商取引法の規制を受けることになります。当然、訪問販売や電話勧誘販売ではクーリングオフできることになります。

それでは、電話機や映像視聴機器等の場合はどうでしょうか?

結論を先に言えば、こちらは特定商取引法の適用除外となります。訪問販売や電話勧誘販売の場合でもクーリングオフできません。

通信・放送事業者が販売・貸与する電話機・映像視聴機器等は、それ単体では利用価値のないものであり、通信・放送サービスを伴ってはじめて利用価値の生じるものです。よって、それらの機器の販売・貸与は、単なる物品の販売・貸与ではなく、電気通信事業等の一部(電気通信事業等の一環としてなされるもの)と認められ、特定商取引法の適用除外になるのです。 このことは、それらの機器の販売・貸与(レンタル)が、無料であると有料であるとを問いません。

なお、もちろんこの場合でも、受け取った契約書(約款、規約)にクーリングオフできる旨の記載があれば、その規定に従ってクーリングオフできることは言うまでもありません。




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