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■ クーリングオフは、全ての契約に認められているわけではありません。
クーリングオフは、訪問販売などの主として不意打ち性のある販売方法から消費者を守るために法定されている制度であり、消費者を保護する必要性のない場合は、クーリングオフ制度はありません。
例えば、自分からお店に出向いてテレビや時計を買ったり(店舗販売)、カタログを見て自分から電話やハガキで申し込んでパソコンや洋服を買ったような場合(通信販売)は、自分の意思で冷静に判断して契約の申し込みをしたと考えられるので、
消費者を保護する必要性に乏しく、クーリングオフ制度が規定されていないのです。
通信販売とは、雑誌・カタログ・ちらし・広告・ダイレクトメール・テレビ・ホームページ・メールなどを見て、電話・FAX・郵便・インターネット(ホームページ、メール)などで申し込む契約のことを言います。具体的には、カタログショッピング、テレビショッピング、ネット通販、ネットオークションなどです。
これら通信販売の場合は、電話勧誘販売に該当する場合を除き、法律上のクーリングオフ制度がありませんので、業者が任意(自主的)にクーリングオフや返品に応じてくれる場合でなければ、クーリングオフはできないのです。
消費者にとっては残念ですが、気が変わったからやめたいとか、イメージと違ったからクーリングオフしたいというのは、通信販売には適用されません。(通信販売は、お店に行かずに商品を購入できるという利点を消費者が選択しているため、商品を手に取って見れないリスクは消費者の自己責任となっています。そのため、通信販売を利用する際には、返品できるのかどうか事前に確認する心掛けが求められます。)
なお、業者にとっては、クーリングオフ・返品を受け付けるかどうかは自由であり、クーリングオフ・返品規定を設けている業者とクーリングオフ・返品を受け付けていない業者とがあります。
また、業者がクーリングオフや返品を受け付けていた場合でも、それは業者が自主的に応じているものですから、多くの場合、返品や交換に要する送料は、消費者側が負担することになると思います。
ところで、クーリングオフ・返品に応じていない業者に対しては、商品の発送前であれば、すぐにキャンセルの連絡をし、商品の受け取り後であれば、未開封・未使用の場合なら、送料・キャンセル料を支払うことや別の商品への交換を提案するなどして、返品に応じてもらえるよう交渉する余地はあるでしょう。
また、クーリングオフが認められない場合でも、申し込んだ商品とは別の商品が届いたとか、商品が破損・欠品・故障していたとか、広告の内容と違う場合は、クーリングオフとは別の問題であり、
返品、交換、修理の要求や代金の減額請求、あるいは契約の解除ができますので、第一義的には相手業者との交渉をして解決を図ることになります。
■ 【例外】 通信販売がクーリングオフ(返品)できる場合
通信販売にはクーリングオフ制度がありません。しかし、返品特約(返品の可否・返品期間等の条件・返品の送料負担の有無)に関する事項を広告に記載することが義務付けられています。
それは、消費者に対して、購入前に返品できるかどうかを知らせておく必要性がありますし、また、消費者の側としても、返品できるかどうかを確認することで商品や販売業者を選ぶ際の参考にもなるからです。
そして、この返品特約は、返品できる場合もできない場合も、いずれの場合も記載が義務付けられており、返品を受け付けていない場合は、返品できない旨を記載しなければなりません。
もし、この義務を守らず、返品特約を広告に表示していない場合には、商品の受け取り後、8日以内に返品(契約の解除)ができます。ただし、商品の返品に関する送料は、消費者側が負担する。(サービス契約は対象外。商品受領日が第一日目、8日以内に意思表示を到達。書面は要件ではない。)
(※2009年12月1日施行の法改正)
これは、8日間の返品が可能ということで、クーリングオフ類似の制度ですが、あくまでも返品特約を広告に表示していなかった場合に認められるものであり、返品特約が広告に表示されている場合はクーリングオフできません。(返品特約がある場合、例えば、返品期限が3日となっていればクーリングオフは3日間、返品不可となっていればクーリングオフはできない。もちろん、商品が広告の内容と違う場合や品質に問題がある場合等は、返品特約に拘束されない。)
返品特約は、それぞれの商品ごとに表示するのが原則ですが、「返品に関する事項」等のページにおいて一括して返品特約を表示する方法であっても、消費者にとってわかりやすい表示方法である限り返品特約として認められ得る。もちろん、「返品に関する事項」のページへのリンクがわかりにくいものや、当該ページ内において
返品特約について記載はあるものの、申込み方法等の他の事項に埋もれてしまってわかりにくいものは、不可と考えられる。
なお、返品特約をあえて広告に表示せず、8日以内にクーリングオフの申し出があった場合にはクーリングオフに応じるという姿勢で業務を行う場合、それはクーリングオフ受け入れ業者である以前に、特定商取引法の違反業者となりますので、返品特約を表示せずに業務を行うことは認められません。
【注意】
通信販売において返品できる場合は、クーリングオフのような無条件解除の規定が特定商取引法に定められていないため、民法の規定に従って処理することになる。よって、使用・消費したものや消費者の故意・過失により破損した商品を無条件に返品できるわけではない。(契約当事者双方に原状回復義務があり、使用利益・不当利得の返還義務や損害賠償義務が発生する場合がある。) このことから、原則として返品できるのは未使用の商品の場合と考えられる。なお、返品に係る送料は消費者負担であることは既述のとおり。
【通信販売のクーリングオフ類似制度の趣旨】
※2009年12月1日に施行された改正特定商取引法のポイントは、通信販売にもクーリングオフ類似制度を導入したことにあります。そして、販売業者に対しては、法律を守って返品特約をきちんと表示した場合には、クーリングオフ類似制度を免除してあげます、というものなのです。(趣旨は業者に法律を守らせるための法改正)
【原則】 通信販売はクーリングオフ類似の返品ができる。
【例外】 ただし、業者が法律どおりに返品特約の表示義務を果たした場合には、その特典として業者はクーリングオフ義務を免除され、消費者はクーリングオフできない。
● インターネット通販の返品特約
インターネット通販の場合は、広告に加えて、最終申込み画面にも返品特約を表示しなければなりません。広告に表示し、かつ、最終申込み画面にも表示して、はじめて返品特約を有効なものとすることができます。つまり、どちらか一方にだけ返品特約の表示があっても、
法律上返品特約として認められませんので、この場合、クーリングオフ類似の返品ができます。もし、8日以内に消費者から返品の申し出があった場合には、送料消費者負担で返品に応じなければなりません。(原則として未使用商品の場合であることは既述のとおり)
【参考】
最終申込み画面とは?
インターネット通販においては、必ずしも販売サイトのトップページや広告のページから消費者がアクセスするとは限らず、返品特約を見落とす可能性がある。
そこで、必ず消費者が確認することとなる最終申込み画面に返品特約を表示させることにしたのである。
ところで、法律の条文では、最終申込み画面とは書かれていません。条文上は、「広告に表示する以外の方法であって経済産業省令で定める方法。その場所は、売買契約の申込みとなる電子計算機の操作を行うための表示において」となっています。
つまり、広告以外の画面で売買契約の申込みをする画面ということになります。これが、いわゆる最終申込み画面と言われるものですが、一般的に考えて、商品名や数量、金額などが表示された注文確認画面、最後に申込みボタンを押すところということになるでしょう。
ただ、サイトの構成によっては、例えば、第1段階として注文の確認をし、第2ページで住所・氏名の入力、第3ページで支払い方法の入力、そして、申込みボタンというようなケースもあるでしょう。こういう場合は、どれが返品特約を表示すべき最終申込み画面になるのでしょうか?
筆者の私見とお断りしますが、こういう場合は必ずしも一番最後の画面を最終申込み画面と考えるのではなく、全体として一つの最終申込み画面と考えられますので、第1ページの注文確認画面に返品特約の表示があれば問題ないと思われます。
なお、返品に関する事項を記載した共通ページを表示させるためのインデックスタブやリンク(但し、わかりやすいもの)を設置する方法でも返品特約の表示と認められますので、申込み画面が複数ページにまたがっても、通常はインデックスタブやリンクの設置という形式でサイトを構築すると思われます。
■ 個人でネットオークションに出品する場合
個人が単に自分の所有物をネットオークションに出品するだけの場合で、反復継続性が認められない場合には、特定商取引法の適用はありません。
よって、個人のネットオークションにおける売買の場合は、クーリングオフ制度はありませんし、返品特約の表示義務もありません。
しかし、営利の意思をもって反復継続して取引を行う意思が客観的に認められる場合には、特定商取引法上の「販売業者」に該当します。
そして、たとえ個人であっても「販売業者」に該当する場合は、特定商取引法の規制対象となります。この場合は、特定商取引法に基づき販売業者としての表示義務があり、返品特約についても表示しなければなりません。 |
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