はじめてのクーリングオフ
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(1)
業者の居座り
それは2006年の話です。千葉県の男性から訪問販売で布団を買ったが、クーリングオフしたい。業者が怖いのでクーリングオフの代行をお願いしたいというものでした。
依頼者は、相談の段階からかなり不安な様子であり、それを私に強く訴えてきました。しかし私は、訪問販売のクーリングオフは数限りなく処理してきましたので、仕事上の慣れもあり楽観的に考えていました。 と、言うのは、相談者が不安に思うほど威圧的だった訪問販売業者が、クーリングオフ通知書を送付したあとは、人が変わったように親切丁寧になり、笑顔でお帰りになるケースまであることを何度も経験しているからです。 今回も、相談者の思い過ごしで、無事に解決するだろうと安易に考えていたのです。
ところが、夜の9時頃だったでしょうか。一本の電話がなりました。
それは、業者が居座って帰らないというSOSの電話だったのです。話を聞けば、業者は「クーリングオフは認めます。しかし、あれだけ説明して納得して買ってもらったのに、それをクーリングオフすることが理解できない。」と言って、何時間も帰らないというのです。
そして、相談者は、トイレに逃げ込んで、携帯電話で私にSOSの電話をしてきたのです。電話の向こうでは、業者が相談者を大声で呼んでいる声が聞こえてきます。これは大変な事態が起こったと思いました。長年クーリングオフ業務をやってきた私にとっても初めての経験でした。
とにかく業者に電話を代わってもらい、私が業者と話をすることにしました。色々話をして行けば、誤解も解けて相手もわかってくれます。最後は業者も穏やかになり、お帰りになることになりました。私もほっと一安心して、最後に相談者に電話を代わってもらおうと思ったのですが、 どういうわけか相談者が見当たりません。業者さんもすっかり丁寧になって、探してくれたのですがどこにもいません。「靴はあるんですけど、いないんですよね・・・・。」
実は、相談者は、私と業者が電話で話をしている間に近所の交番に駆け込んでいたのです。
あとから聞いた話ですが、靴は履かずに靴下のまま走っていったそうです。
翌日は、相談者から元気な知らせが届きました。とにかく無事に解決してなによりだったのですが、業者がしょぼくれているのではないかと思い、何だかかわいそうになりました。
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