そもそも私のジープがお蔵入りの憂き目を見る羽目になってしまったのは、他ならぬ私のせいだった。
実は平成9年の秋、ついついダイハツのミゼットUに浮気してしまったのだ。ミゼットUはモデルでいうと2代目の、「ギュ!ギュ!」のやつで、一人乗りのトラックのほうだ。
まずミゼットUのコンセプトに、いいな、と思い、さらに、冬はあったかそうだな、雨漏りもしないんだろうな、停めるとこにも苦労しないよな、軽トラだから金かかんないよな、こんなのだれも乗ってないしな、通勤専用なら一人乗りでもバイク代わりだと思えばどうってことないし、なんつっても新車だよ新車、などといろんなことを考えてしまい、たまたま少し金があったので、半ば衝動買い状態で即金で購入してしまったのだ。
そして一介のサラリーマンの私には、車を3台も(ジープのほかにも家族全員で移動するためのクルマがある)維持する余裕はなく、私の通勤車だったジープがお役御免となることになったのだ。
しかし私はジープを捨てることはできなかった。私はジープに「いつか必ずきれいに直して乗ってやるからな」と言い含め、車庫にしまいこんだのだった。
ミゼットUはなかなかいいクルマで、特に近所への買い物などのチョイ乗りには最適である。
ジープでは、特に冬場など、1分ほどもグローして(気温によってはもっと。厳冬期の始動直後の不安定解消のために、私はエンジンカットリレーを殺し、手動カットにして始動後もグローできるようにしていたこともある)、エンジンをかけたら不機嫌に白煙ボーボー噴き出すのをアクセル操作でなだめ、ハンドスロットルで回転が安定するまでにさらに数分、なことやってれば、やっと走り出すまでに、近所なら歩いて用事が済んでしまう。とてもチョイ乗りに使う気にはなれない。
そんなわけで、しばらくはジープレストアを夢見ながらミゼットUで喜んで走っていたのだが、翌年の新年度から、課長に昇進することになってしまった。
よそさまの会社はいざ知らず、私の勤める会社では、課長昇進は残業手当がなくなることによる収入の大幅低下を意味している。しかも定期昇給は殆どないも同然レベル。昇進後数年は辛い生活が続くのだ。
ミゼットUは、新車で買っても取得税がかからない値段だった。だからこそ私ごときが即金で買えたのだ。とはいえ、それだけの金があればジープを直してもだいぶお釣りが来る。
そういや、前にランクルの後釜としてニッサンのラシーンを新車で買ったときは、買ってまもなく3人目ができて、しかも3人目がどうもみつごで、ラシーンではイスが足りなくなって、仕方なく手放したのだ。
私は先を読む能力がないのか、それとも単にツイてないだけなのか。とにかく新車には運がない。
あの金で何が買えたか、なんて本がちょっと前にあったが、まさにそれを考えてしまう。今のエンゲル係数では、もう再びミゼットUを即金で買えるような身分にはなれないだろう。
あーーミゼットUなんか買わないでジープ直せばよかったーーー!!!