ジープのユーザー車検@2004

前のページ「ジープの中古新規ユーザー車検@2003」で、
「ネタがあればまた書きます!
目新しいネタがなければ・・・書かないかも。」
と宣言していたが、目新しいネタがあったので書かなければなるまい。

今回は我がJ54復活後初の継続検査、つまりは普通の車検になる。
前回の新規検査と異なるのはすでに登録済みのクルマであるというだけだ。そのため、提出書類が異なるほか、新規検査で合格した形態からの改造等があっても、所定の範囲内であれば車検証には影響しなくなる。
また、今回の検査からは、スモークテストが行われる。キャラバンの車検でも述べたとおり、2004年の6月あたりからディーゼル車に排気ガスの黒煙濃度測定(スモークテスト)が行われるようになり、キャラバンはどうにか一発合格したのだった。
何が「目新しいネタ」なのかといえば、そのスモークテストで、ジープは不合格となってしまったのだ。

スモークテストは、「無負荷全噴射」つまり、めいっぱいの空吹かしを行い、その際の排気の一部をテスター内にバキュームで吸引採取して、採取したガスを濾紙に通し、濾紙に残ったPM(粒子状物質、いわゆるスス)の量を、面積当たりの濾紙の汚損の割合を光電管で測定(たぶん反射率で)して、%表示で評価するというものだ。きちんとアクセル全開になったときに吸引が行われるように、アクセルペダルは、検査官の手で、大きなスイッチを介して押される。全開でペダルが底突きしたところでスイッチが押され、吸引されるわけだ。したがって、半アクセルでスモークを減らす、というようなズルはできないのだ。
ウチのジープのように「J54」や、キャラバンのような「U-VRMGE24」といった、型式記号の前に付く排ガス規制適合記号(とでもいうのか?)が無かったり、古いクルマでは、50%が合格ラインになる。
手順は、
・排気管にプローブ挿入 ・事前に2-3回空吹かし(排気管内の滞留カーボン等を飛ばすため)が認められる
・空吹かし後、15秒程度アイドリングで置いてから、
・アクセルペダルにスイッチを乗せて、急速に全開ベタ踏みまで空吹かし
・テスターに吸引
・踏み始めてから2秒でアクセルを解放
・15秒アイドリングで置いて、再度同様に測定
・測定は3回行い、平均値で評価する
というものだ。
そして私のジープは、平均67%というハイスコアをマークしてしまったのだ。これは、検査結果の濾紙の地色がほとんど見えず、濾紙のススの付いている部分全体がやや濃いグレーに見えるような状態だ。50%を切っていると、グレーも薄くなる。

黒煙というのは不完全燃焼の産物だ。何らかの原因で、噴射された燃料に多くの燃え残りが発生しているのだ。
ガスストーブなどでわかるように、不完全燃焼は、燃焼用の空気が足りなかったり、逆に空気に対して燃料が過多だったりすると起こるが、シリンダ内の空気の圧縮熱で燃料飛沫を発火させるディーゼルエンジンの場合、圧縮漏れなどで十分な圧縮熱が得られなかったり、燃料噴射圧力が不足して燃料粒子が大きかったり、噴射タイミングが狂っていたりしても不完全燃焼が起こりうる。
単に排出される黒煙を抑制するというだけならば、排気管でススを濾過して排出を押さえる「DPF(ディーゼル粒子フィルター)」という手もある。しかし、それは単に外に出さないというだけのことなので、エンジン自体に問題があって黒煙をたくさん出していれば、すぐにフィルターが目詰まりしたりしてしまう恐れがある。したがって、黒煙を根本から低減するには、燃料をできるだけきれいに燃焼させることを考える必要があるのだ。
ユーザーレベルで通常できる基本的な対策としては、
・吸入空気量を確保するため、エアクリーナーはこまめに清掃し、定期的に交換する
・燃料フィルターやエンジンオイルも定期的に交換する
・「硫酸ピッチ」で有名になった密造軽油や、重油混合などの不正燃料の類は使わない
・ときどきはエンジンをぶん回して、燃焼室のカーボンを焼き切ってやる(スピードを出せということではない)
といったところだろう。私も当然このくらいは行っている。
あとユーザーレベルで比較的手軽に行える対策としては、燃料添加剤の使用がある。燃料に添加することで噴射系統のクリーニングを行い、燃料の燃焼を助ける、とか、黒煙を低減する、などと謳われたものが、手近に安く入手できる。また、燃焼室のカーボンをクリーニングできるケミカルなどもあるようだ。いずれにしても、添加剤はその場しのぎにすぎず、根本的な解決にはならない。それらの効果のほども、実際に体感できるものからプラセボなものまで、ピンキリのようだが。
そしてその先の対策となると、
・噴射系統のチェック
・燃焼室やピストンのカーボン除去
などということになり、素人ではちょっと手を出しにくい領域に入ってくる。このへんはいずれも、最終的にはオーバーホールになる可能性もあるのだ。

そしてジープは不合格となった。今回、ジープには、前日燃料を満タンにしてから、当日の朝、黒煙低減を謳った燃料添加剤を突っ込んできていた。車検の段階で、添加剤を入れてから約2時間、走行距離は45kmくらいだった。添加剤の効果がまだ出ていないことが考えられた。
担当してくれた検査官に善後策を相談してみたところ、私の立場でああしろこうしろとは言えないが、と前置きした上で、個人的な意見として、よく取られている(つまりは一時凌ぎの)対策について話してくれた。やはり添加剤が主流のようで、なかなか効果のあるものもあるらしいとのこと。それでダメなら噴射量をちょしたりしているクルマもあるらしい。そうしろとは言わないが、そうしている人が多いみたいだ、と話してくれた。
また、検査官が
「三菱系はねぇ・・・」
と話してくれたところでは、キ○ンターにしろパ○ェロにしろ三菱系は全般にスモークが濃いめに出てしまうらしく、ターボ車では顕著であるとのこと。なんでもデ○カワゴンなどでは80%以上というすさまじい数値を出してしまい、何をしても直らず、結局噴射系統のオーバーホールになったものもあるとか。80%というと、検査結果の濾紙がグレーどころかほとんど真っ黒になるレベルで、発進加速時には昼間でもくっきりと黒い煙がバックミラーにまで映りこむだろう。
確かに、路上で見ていても、三菱系とか古い日産系は派手に黒煙を噴くのが多いように思う。ウチのジープもキャラバンも要注意系なのだ。
ましてこっちは26年目、210,000kmオーバーの、廃車から蘇生したポンコツだ。
その昔、南先生のブロラン号(わかるかな?)は、危険なほどのポンコツぶりが南先生のキャラクターを象徴する小道具として描かれ、愛された。しかし、現代はポンコツをポンコツのまま走らせてくれるほど甘くないのだ。見た目がポンコツなのは勝手だが、中身がポンコツなのは許されない。当然のことだ。

さて、親切な検査官に礼を述べてラインから出てきたが、不合格になった以上、何らかの対策をとって当日中に再検査を受け、合格しないと、再び検査手数料を支払わなければならなくなるし、そのためにそうそう休んでもいられない。なんとか合格しておかないと、車検が切れたら通勤にも困るのだ。
とはいえ、どうしたものか。こういうときは専門家に頼るのだ!ということで、友人でクルマ屋のSさんに電話で相談した。付き合いのあるディーラーに詳しい人がいるとのことで紹介してもらい、そちらへ向かった。
紹介されたディーラーは認証工場と民間車検場を持っていたが、三菱ではなかった。カーボンを少しでも焼こうと3速でぶん回しながら、車検場から10分もかからずに到着した。
紹介された担当者は折悪しく接客中で、少し待つこととなった。コーヒーを入れてくれたのでそれを飲みつつ、タバコを3-4本も吸ったろうか。やっと手が開いて工場に入れてもらい、まずは黒煙測定。するとなんと、平均41%・・・って、合格じゃん。この時点で添加剤投入から約3時間、走行距離は50kmちょっと。車検場からは函館市内の走行で、ゴー&ストップの繰り返しだった。整備士さんの見解では、添加剤の効果が出始めたのではないか、とのこと。また、テスターのほうは定期的に較正しているので誤差は考えられない、とのことだった。
ものすごく黒煙低減効果のある添加剤(値段もなかなかものすごかった。普通の市販の添加剤なら何本も買えるだろう)も1本だけ在庫があると言われたが、すでに1本ありきたりのが入っているのに混ぜたりたくさん入れたりしてだいじょうぶか、と尋ねると、それは良くないだろう、との見解で、結局測定しただけで何もしなかった。
測定のほうはSさんの紹介なのでサービスします、とありがたい言葉を頂き、測定結果の濾紙をもらって、ディーラーを辞する。
その後、再び3速で吹かし気味にしながら車検場に戻り、再検査。この時点で添加剤投入から3時間半以上経過。
結果は、あらら、63パーセントォ???
先刻ディーラーで測定した結果を検査官に見せ、しばしディスカッション。検査官も多少は??と思ってくれたのか、相手してくれる。
まずはラインも空いていたので、空ぶかししてからの測定を行ってみてくれた。結果は53%。多少改善したが、なかなかそれ以上にならない。
実は、今回のジープのスモークテストは、キャラバンのときの小型車用のラインでなく、最初から大型車用のラインのテスターに誘導されて、そこで行っていた。たまたま空いていたというだけのことなのだが、私としてはひょっとして、と思い、小型車ラインのテスターで再測定してもらった。
結果は、49%!
ギリギリとはいえ、合格。テスター間に測定感度の個体差があるのではないか、と軽く抗議したが、定期的に較正しているのでありえない、の一点張りなので、まあ結局は受かったわけだし、すぐに引き下がることにした。しかし結果判定が光学式な以上、測定部にわずかでも汚れなどがあれば、それだけで測定値にもろに影響してくるだろう。そこまできちんと管理しているのだろうか?という疑問は、正直残った。

こうして車検自体は何とかクリアできたわけだが、実際夏過ぎからパワーダウンの傾向が顕著だし、ブローバイも著しく、燃焼室のカーボン堆積、ピストンリングの摩耗や固着などが疑われた。
おまけに車検後まもなく、クーラントの著しい減少に気づき、調べてみるとヘッドガスケットが抜けてきているらしいことがわかった。クーラントを補充し、ラジエターのキャップを外してエンジンを始動すると、クーラントがラジエターからドバッと溢れ出すのだ。これは、燃焼ガスの一部が冷却水の系統に漏れて、その圧力でクーラントを押し出しているためだ。クーラントのリザーバーがついていれば、リザーバータンク内のクーラントが沸いたようにボコボコ泡立つ。
ヘッドガスケットは交換するしかなく、交換には当然シリンダヘッドを外さなければならない。いいチャンスなので、カーボンを落とし、腰上オーバーホールを行うことにした。
作業の様子は、車検とは直接関係ないので、「VOJ復活作戦」のほうで紹介することにしよう。


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次回もネタがあればまた書きます!
目新しいネタがなければ・・・やっぱり書かないかも。