エンジン焼きついたサンバートラック復活作戦

2009年8月7日
絶好調だった。まさに突然のことだった。
通勤のため、普通に家を出て2-3kmも走ったろうか、オイル警報が間欠的に点きはじめた。
古いエンジンだし、オイル上がりか何かで減ったのか。仕事場まで十数kmだし、昼休みにでも見てみるか、などと考えていた。
さらに2-3kmも走ると、オイル警報は常時点灯になっていた。
さらに2-3km、エンジンから不穏な音がしているのに気づいた。
これはたたごとではない。
クルマを停めて見てみると、エンジン右下に数滴のオイルの垂れた跡があるが、路肩で草があったりすることもあり、どこから垂れたかはわからない。
エンジンはメタルが逝ったカンカン音がしている。水温計は正常だ。
家からは8kmくらい、仕事場へは10km以上ある。
とりあえずまだ動くので、Uターンして、戻ることを試みたが、数百m戻ったところで、完全に回らなくなった。セルを入れてもまったく回転しない。
かーちゃんにレスキューを頼み、ボンゴで牽引してもらって、何とか帰宅。完全に停止してからほぼ1時間。
庭で見てみると、オイルフィルターが錆びて、油圧でピンホールが開き、そこからオイルが噴出して、短時間でオイルを完全に失ってしまったようだ。
バイクに乗り換えて出勤。見ると、家から国道に出た直後あたりから、国道にオイルがスプレーされた跡がかなりの幅で続いていた。オイル警報が点きはじめたあたりでは跡も細くなり、それもまもなくほとんど見えなくなっていた。
オイルフィルターは、次のオイル交換で換える予定だった。先日メタルを交換したときは、どうせ切粉が出るかもしれないから、交換は次でいいや、と思い、交換を見送ったのだ。あのとき換えていれば・・・。
次 のオイル交換は、距離的にはあと500km位、次の次の燃料補給あたりのタイミングを考えていた。もう少し早めに換える気になっていれば・・・。
ともかく、なんとかしないと雨の日のアシに困る。中古エンジンに積み替えるしかないかな・・・。


焼きついてしまったエンジン

・・・とVOJ BBSで言いつつ、しばらく修理方法検討と称して放置。
雨だからってバイクに乗れないわけじゃないからね。
しかし、ここは北海道。雪の季節が近づいてくるにつれ、放置しとくわけにはいかなくなってしまった。さすがに凍結路面を二輪で走るのはヤだ。

冬のアシ確保について、いくつか選択肢はあった。

あと、 など。 俺の場合、経済的事情が優先されるので、費用的には
二輪<中古自前<リビルト自前≒オーバーホール自前<別のアシ<修理外注
となるか。
さらに、現実的には二輪は除外されるので、「中古エンジンに自分で載せかえる」ということになる。

まあ、予想はしていたことだ。

9月13日
サンバーを、かーちゃんの運転するボンゴで牽引してもらって、作業場所に移動。
勤務先の好意で、倉庫の片隅を使わせてもらえることになったのだ。


こんなの貼り付けて走った

エンジンをジャッキに載せて引っ張り出すのに、荒れた地面の庭先では苦しい。倉庫はコンクリ床で天井クレーンまであるのだから、もってこいだ。

同時に、オークションストアで目をつけていた、よさげな赤帽エンジンを落札。76704kmと書かれていたが、赤帽仕様でもあり、メーター一回転めかどうかは定かではない。

9月15日
エンジン入手。

パレットに乗ってきちんと梱包されて届いたエンジンは、まさに赤帽仕様、エアコンレスのNAキャブのエンジンだった。
ただ、オルタネータとスタータは付属せず、赤いヘッドカバー上の「赤帽専用」のシールは剥がれていた。


届いたエンジン。赤いヘッドカバーが赤帽仕様のシルシだ。

俺のサンバーは1990モデルだが、入手したエンジンは1993モデルだった。
両者には、赤帽専用というだけでない、若干の仕様の違いがある。

外観上、オイルキャップが黒から黄色に変わっている。黄色キャップのエンジンは、点火がポイント式のデスビからフルトラのデスビに変わっているという情報が、ネット上にあった。
果たしてそのとおりだったが、車体側のハーネスがフルトラに対応していないので、そのまま使うには改修を要する。
それなら元のデスビを移植したほうが手っ取り早い。システム的には退化だけどね。

あとはオイルゲージがちょっと違うのと、プーリーのタイミングマークがNA用の一本しか刻まれてないようだ。
でもそれはたいした問題ではない。

9月19日
秋の大連休初日。
午前中に工具等を準備。われながら道具持ちだ。多量なのでボンゴに載せた。
午後から仕事場に向かい、エンジン取卸に取り掛かった。


ケツ上げてウマかけた。エンジンフードはすでに外してある。後にボンゴが見える

手順を大雑把に言うと、マフラーをごそっと外し、エンジンとミッションを、マウントされているクロスメンバごと後に引っこ抜いて外すのだが、そう簡単ではなかった。
車体が新しいうちなら、俺のような素人でも、一人で2時間もあれば卸せたかもしれない。しかし、こいつは19年モノ、しかも塩をまかれる北国の車体だ。予想はしていたが、排気系統を中心にネジのカジリが多数あり、てこずった。
予想していたので、ガスのトーチやドリル、タップダイスなどは準備していた。
腐食でかじったネジは、あぶって外すのが確実だ。やばい手応えのネジはそのつど焼いて外してみたが、1本や2本じゃないから、やたらに時間を食う。
それでも何本か折れ込んでしまったり、さびてナットの角がなくなってたりするのがあったので、その処理にさらに時間を食われたのだ。
エアダクトや冷却水ホースのクランプ類もネジかじりが多発、というかほぼ全部がかじっていて、もういちいち相手してられないので、切断で対処した。
なんやかやで余計な時間ばかりがかかり、サビの粉にまみれた。
この日は、クロスメンバとミッションごとエンジンを車体から卸したところで、あとは明日、とした。
18:30。あ、残業じゃん(笑)。


ピンボケだが、エンジンが外されたケツ


クロスメンバごと外されたエンジンとミッション

9月20日
朝イチで用事があったので、そのあとバイクで向かい、10:30にスタート。
まずはクロスメンバを外し、エンジンとミッションを分離。
軽自動車なので、分離してしまえば一人で持てる程度の重さになる。エンジンはかなり重いが、80kgくらいだろうか。ミッションはそれよりだいぶ軽い。
エンジン単体ではバイクのエンジンのようだ。もっとも、660ccなのだから、いまどきのバイクでは大きいほうでもない。
クロスメンバはサビが目立つので、せっかくだからカップブラシでサビを取り、塗装してやった。これも時間を食われる。
  右のマウントは俺が交換したものなので、せっかくだから移植する。 スペアエンジンの、気になる部分を軽く分解して点検。
ウォーターポンプとタイミングベルトテンショナは、ベアリングがゴリゴリもしくはシャーシャー音を出していたので、2万kmほど前に交換されている旧エンジンから移植。タイミングベルトも、来歴がはっきりしている旧エンジンから移植した。
 


赤帽エンジンのタイミングカバー外したとこ。中央の歯のないのがウォーポン、歯のあるのがテンショナ、左がカムプーリ、右がクランクプーリ。


取り卸したウォーポン(の裏)とテンショナ

デスビは前述のようにフルトラのため、旧品に変更することにした。ただ、邪魔になるので、まだ組み付けはしない。
クラッチの形状がちょっと違う。これも赤帽仕様なのかもしれないが、互換は問題なさそうなので、クラッチはこのまま使ってみる。
ヘッドカバーを開けると、スラッジもひどくなく、一安心。バルブクリアランスを調整。
キャブのバキューム配管が若干違っていた。同じNAの4WDなのだが、キャブに付いているバキュームマニフォルドらしきモノの枝の数が少ない。キャニスタにつながるラインとエアクリにつながるラインが取れなくなりそうだが、両者をジョイントで直結にしてやることにした。理屈では、コレで問題ないはずだが・・・。
赤帽エンジンのエキマニに、折れ込みボルトが残っていたので、抜き取り。エキマニのヒートシールド固定ボルトの残骸だ。絶対腐る箇所なので、ボルトはステンにしてやることにする。
エンジン取り外し時か? 車体側の4WDソレノイドバルブのフィッティングを、1本折ってしまった。とりあえずありあわせのパイプとシール剤で処置してみた。だめなら買わなきゃ。あーあ。
この日は赤帽エンジンをミッションと合体させたところまでで、18:00で上がり。気を使う作業ばかりだったので疲れた。


合体!! スタータまだ付いてない。そういや分離状態の写真忘れたな。

帰りにホムセン寄って、ホースのクランプと折れたボルトのスペアを購入。

9月21日
09:00スタート。


まずはエンジンとミッションに塗装なったクロスメンバを取付け、車体へ取付け。スタータは旧エンジンから移植。
クロスメンバがやけに黒々している。

ファイターズのデーゲームをラジオで流しながら復旧開始。
ところが、14:00-16:00あたり、客に技術的なトラブルがあり、休日出社のメンバーで対処できず、仕方なく手を貸して、時間をとられる。休みなのに(怒)。
車載状態でオイルパンを取り外し。ストレーナは異常なし。オイルパンのサビを落とし、リペイントして、再取付け。
この日は排気系統の復旧まで終わらせ、1845上がり。


ピンボケだがマフラー付いた。


荷台アクセスパネルから。エアクリ付いてない。

9月22日
バイクで行きがけにホムセン寄って、バキュームホースに使える金魚用エアホースのジョイントと、エキマニに使うステンボルトを買った。
10:00スタート。
エキマニのヒートシールドと、キャニスタのバキュームホースを前述のとおり改修。
これで一応復旧完了だ。

火入れ前。まだプラグ付いてない。


荷台アクセスパネルから。

試運転に向け、まずはオイルを入れる。手持ちの7.5W-30があったので、それを入れた。
プラグを外し、充電したバッテリーを取り付け、旧エンジンから移植したデスビの点火時期を調整。
プラグを外したまま、スタータを回してオイルを回してみる。特に異常はなさそうだ。
デスビを移植したので、念のためプラグも旧エンジンから移植。2極のZFR6G。点火系統だけは旧エンジンのまま、ということになる。
ここでクーラントを入れるのだが、旧エンジンによる冷却系統のサビ汚れがひどいので、フラッシングすることにした。
戸口の排水溝の上まで、サンバーを押していく。左手でハンドルを操作しながら、右手でAピラーを押すのだが、軽だけに軽い軽い。
さて、まずは水だけ入れて、手順どおりにエア抜きして、エンジンに火を入れてみる。この瞬間はいつもキンチョーする。

排水溝の上で火入れ!! って写真じゃわからんか・・・。荷台にサービスマニュアルが載ってる。


あっさり普通に始動した。白い計器の左がタコ、右がバキューム。アイドリングしてるでしょ。
クーラントを見ると、水はすでにサビ色に濁ってきている。
ラジエタ電動ファンが作動するのを確認するまで回し、停止。ちょうど昼になったので、昼飯を食べつつ水を冷やす。
排水溝の上に移動し、エンジンをかけて、ラジエタから水をドレンしながら、上から水を入れてフラッシングする。サンバーにはエンジン側に冷却水のエア抜きがあるので、そこも時々開放しながら、だ。前に行ったり後ろに行ったり忙しいし、冷却水のフィラータンクにはゆっくり注水なので、腰が痛くなる。
小一時間もすると、やっと水の濁りがとれて、澄んできた。
頃合を見て、エンジンを停めて、水を流し出す。ドレンを閉め、LLCを3リッター入れる。これで、46%くらいの希釈率になる。道南では十分過ぎるほどだ。
入れたら再びエア抜きし、さらにエンジン回してエア抜き。、ヒーターから温風が出ることを確認し、電動ファンが回ったら、エンジンを停め、不足分の水を足す。
面倒だが、サンバーはエンジンが寝ているのと、ラジエタとエンジンが離れているのでエアが抜けにくく、ここで手を抜くとオーバーヒート必至らしいのだ。
ともあれ、冷却系統のエア抜きはこれで一応OK。あとはちょっとの間少し頻繁にLLCをチェックして、減った分だけ補充すればいい。
ジープはエア抜きの必要がなくて楽だったな。
チョークが効いているときのファーストアイドルは規定値だったが、サンバーは規定値がやたら高いので、少し下げてやった。冬の燃費にもろに響くんだよね。
さらに、アイドルを800rpmに調整。この調整だと、水温上がり始めの一時期、アイドルがやや低めになるけど、実用的には支障ない。
もっとも、参考にしようなんてヒトには、おすすめはしないけど。
とりあえず近くをテストラン。ちょっと心配だったクラッチも、ミッションも4WDもOK。エンジンは吹け上がりも良好。オイル及びLLCのリークもなし。
めでたく作業完了。

エンジンフードも付いた。アオリはなぜか営農仕様で、ステッカーの「営農」の部分が切り取られている。中古車はおもしろい。


わざわざフード開けてみた。サビだらけだな。


テスタ・ロッサ!!

16:00に、バイク+工具類を載せて、ほぼ最大積載状態で帰投。


バイクを載せて帰り際、東の空に虹が出た。バイクは本編の車検コーナーにも出てくる、1991 XT400E。レア車だ。
バイクの手前の黒い棒は、ガレージジャッキのハンドル。


無事帰宅、荷物降ろして自宅庭。やれやれ、だ。マツゲがキュートでしょ。


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