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■リヒャルト・ワーグナー (Richart Wagner 1813〜1883)

 交響曲ハ長調 (1832年)


 『ローエングリン』や『ニーベルングの指輪』四部作などの壮大なオペラ作品で有名なドイツの作曲家ワーグナーは、ヨーロッパの音楽界のみならず、文学、美術、演劇から哲学にまで影響を及ぼした、スケールの大きな芸術家です。その音楽は壮大なオーケストレーションと陶酔的な転調によって聴く者を捉え、圧倒します。また、彼がオペラ作品で効果的に用いた”ライトモチーフ”の手法は、現代の映画音楽でも生かされています。

 そのワーグナーが、若い頃に交響曲を書いていることはご存知でしょうか。1932年、19歳のときに彼は交響曲ハ長調を作曲し、プラハで初演しているのです。当時、ベートーヴェンに憧れて作曲家になるために勉強していたワーグナーは、自分もベートーヴェンのような立派な交響曲を書こうと意気込んでいたのでしょう。

 ワーグナーはオペラ作曲家として成功した後も、度々この交響曲を改訂し、コンサートで自ら指揮をしました。彼にとっては、それほど思い入れの深い作品だったのでしょう。ベートーヴェンやウェーバーの影響が強く、後のオペラ作品のような個性はあまり感じられませんが、極めて意欲的に書かれた作品であることは間違いなく、聴き応えのある音楽に仕上がっています。

 第1楽章は、4分もかかる堂々たる序奏部の後、高らかに宣言するような力強いテーマが登場し、活力みなぎる音楽が展開されます。若い作曲家の意欲と情熱が伝わってくる音楽です。

 第2楽章は憂いを帯びたテーマがなかなか魅力的ですし、威風堂々たるマーチ風の曲想も出てきます。この楽章が一番ロマンチックで、ワーグナーらしい音楽になっていると言えるかもしれません。

 第3楽章はベートーヴェンの生き写しのようなスケルツォで、特に交響曲第7番のスケルツォに雰囲気がよく似ています。ただ、ワーグナーのほうがややロマンチックです。

 第4楽章はウェーバーの『魔弾の射手』序曲の締めくくりの部分を思わせる、快活な曲想のフィナーレです。予備知識なしで聴いたらワーグナーの曲とはまず分からないでしょうが、強いて言うならば『ローエングリン』の第3幕への前奏曲に通じる魅力があります。

 ワーグナーらしさということを考えなければ、なかなかの秀作だと思います。ベートーヴェンやシューベルトの交響曲のお好きな方なら、きっと満足して頂けることでしょう。

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アリ・ラシライネン指揮 ノルウェー放送管弦楽団 apex 2564 60619-2 (FINLANDIA音源)
※ウェーバーの2曲の交響曲と併録。若々しい快演。


2004.03.08
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