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■セルゲイ・プロコフィエフ (Sergey Prokofiev 1891〜1953)

 弦楽四重奏曲第2番 ヘ長調 作品92 (1941年)


 『ピーターと狼』や『古典交響曲』で有名なプロコフィエフは、スクリャービンやストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチ等と並ぶ、20世紀のロシア=旧ソ連の近代音楽を代表する作曲家です。1918年のロシア革命の直後にアメリカに亡命し、モダニズムが隆盛していたパリに移って活躍した後、1935年にソビエト連邦という名の国になっていた祖国に戻り、文化活動に対する当局の厳しい規制の中で創作活動を続けました。そんな波乱万丈の生涯の中で書かれた作品は、ピアノ曲からオペラまで様々なジャンルに及んでいます。

 協奏曲の分野では1910年代から1920年代初頭にかけて、ヴァイオリン協奏曲第1番やピアノ協奏曲第3番など、斬新な魅力を持った名曲を発表して時代の先駆けとなったプロコフィエフですが、彼が最初の弦楽四重奏曲を書いたのはずっと遅れて1931年のことでした。

 先鋭でやや晦渋なところもある弦楽四重奏曲第1番のちょうど10年後、既に第二次世界大戦が始まっていた1941年に、プロコフィエフは2番目の弦楽四重奏曲を書きました。彼はその頃、戦火を避けてカフカス地方北部のカバルダ=バルカル(あの学校占拠事件の起きた北オセチアの西隣り)に疎開していましたが、そこで当地の民俗音楽を聴きました。弦楽四重奏曲第2番では、その民俗音楽からいくつかの旋律をテーマとして借用しています。そのため、この曲は前作と比べて親しみやすい音楽になっています。

 古典的な楽章構成からスケルツォを省いた急緩急の3楽章構成で、演奏時間は全体で約20分です。

 第1楽章は行進曲風の曲調で、ソナタ形式で書かれています。テーマはいずれも素朴で大らかです。展開部はやや緊迫した感じになりますが、全体としては村のお祭りの賑わいを思わせる楽しい音楽になっています。

 第2楽章は、冒頭の東洋的な雰囲気の色濃い民謡のテーマが心に残ります。神秘的な雰囲気を醸し出す伴奏の美しさも格別です。中間部の軽快な舞曲のあと、冒頭のテーマがいっそう物悲しい感じで歌われます。

 第3楽章は荒々しい舞曲調です。ピチカートなど弦楽器の様々な奏法を駆使して色彩豊かな音楽を繰り広げます。中間部では心の叫びのような物悲しい旋律が歌われますが、やがて音楽は明るさと活気を取り戻し、華やかに締めくくられます。

 民俗音楽の素材の持ち味を生かしつつ、作曲者が創意工夫を存分に盛り込んだ傑作だと思います。

 プロコフィエフの室内楽曲は、2曲のヴァイオリン・ソナタ以外はあまり知られていませんが、下記の2枚の所有CDに入っている併録曲を聴くにつけ、室内楽曲は案外、名曲の宝庫ではないかと思っています。

****************************** 所有CD ***********************************
オーロラ弦楽四重奏団 NAXOS 8.553136
※弦楽四重奏曲第1番、チェロ・ソナタと併録。
 最も入手しやすいCDと思われる。粗野な感じのよく出た演奏。

ロシア弦楽四重奏団 ARTENOVA 74321 65427 2
※弦楽四重奏曲第1番、ヘブライのテーマによる序曲、五重奏曲と併録。
 より洗練された演奏。

2004.12.27

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