■ジャック・イベール (Jacques Ibert 1890〜1962)
バッカナール 〜管弦楽のためのスケルツォ(1956年)
ジャック・イベールと言えば、交響組曲『寄港地』をご存知の方も多いでしょう。生粋のパリジャンであるイベールは、近代フランスの新古典的傾向の音楽の重要人物の一人です。フランス6人組(オネゲル、ミヨー、プーランク、オーリック、タイユフェール、デュレ)には加わらなかったものの、彼らとは同世代であり音楽性もよく似ており、”もうひとりの6人組”ともいうべき存在です。
イベールの音楽は、明るく華麗なものが多いです。もともとフランス音楽というものは、ベルリオーズやサン=サーンスなどの作品を聴いても分かるように外向的な音楽は多く、イベールもフランス音楽のそうした面を受け継いだ作曲家と言っていいでしょう。オーケストレーションの手腕も卓越していて、ラヴェルも一目置くほどのものでした。
『バッカナール 〜管弦楽のためのスケルツォ』は、英国のBBC第3放送の10周年を記念する作品の委託に応えて作曲されたものです。演奏時間が8分ほどの単一楽章の作品です。3つのテーマがABACBAの順に配置されていて、やや変則的ながらも明快に構成されています。
曲は飛び跳ねるような伴奏で始まり、それに乗って金管が勇壮なテーマAを奏します。ここで聴き手は早くも雄大な響き、力強く生き生きとしたリズムに圧倒されることになります。このあと、音楽は緊迫した雰囲気になり、モチーフをひとつひとつ積み上げていくようなテーマBを、やはり金管が奏します。このテーマで音楽がじりじりと高揚したあと、再びテーマAが奏されます。
テーマAが一段落したあと、音楽はぴたりと鳴り止み、弦がテーマCをおもむろに奏します。このテーマは粋な感じのリズムを持っていますが、響きは重く、ふてぶてしい雰囲気も併せ持っています。パリの街をゾウが体を揺らしながら歩いているような、愉快な情景を思い浮かべさせる曲想です。このあと、テーマB、テーマAが再現され、音楽は熱狂のうちに締めくくられます。
全体に金管と打楽器の活躍の場が多く、吹奏楽的な華やかさと力感を感じさせる音楽になっています。”血沸き肉踊る”とは、まさにこの曲のためにあるような形容であるとさえ思わせるものがあります。クラシック音楽にも、こういう楽しみがあるのです。
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佐渡裕指揮 ラムルー管弦楽団 NAXOS 8.554222
2003.01.07
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