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■グスタフ・ホルスト(Gustav Holst 1874〜1934)

 吹奏楽のための組曲 第1番 作品28-1(1909年)


 ホルストと言えば『惑星』があまりにも有名です。私もこの曲は小学生の頃から親しんでいて、大好きな曲ですが、この曲だけが突出して有名なせいで、「惑星って、マグレ当たりじゃないの?」と思われていないか心配だったりします。ホルストなら、他にも注目すべき作品はたくさんあるんですよ。『サマセット狂詩曲』、東洋的組曲『ベニ・モラ』なども良い曲ですが、今回は吹奏楽の世界では比較的よく知られている『吹奏楽のための組曲』第1番を取り上げます。

 クラシックファンにとって吹奏楽(バンド、もしくはウィンド・オーケストラ)はあまり馴染みのあるジャンルではなく、音楽的な質に疑問を抱いている人も少なくありませんが、そんな中でホルストの2曲の組曲は、ヴォーン・ウィリアムズの『イギリス民謡組曲』とともに「優れたオリジナル作品」としてよく引き合いにだされ、高い評価を受けている作品です。

 『吹奏楽のための組曲』第1番は、それぞれ「シャコンヌ」「間奏曲」「マーチ」と名づけられた3つの曲(切れ目なしに演奏される)から成っています。全体で10分弱の短い曲ですが、非常に中身の濃い充実した作品です。

 「シャコンヌ」では、爽快感のある簡潔なテーマを繰り返しつつ、装飾的な変奏を被せていきます。雄大な展開が素晴らしい曲です。

 「間奏曲」は、冒頭に現れるリズミカルで躍動的なテーマがなかなか格好よく、聴いていてワクワクします。中ほどで民謡風のテーマが現れ、その後、これら2つのテーマのモチーフが組み合わされ、展開されます。

 「マーチ」は、いかにもマーチという感じでありながら、どことなくもの悲しさの付きまとうテーマと、民謡風のテーマから成ります。結尾ではやはり2つのテーマが組み合わされ、さらには「シャコンヌ」のテーマのモチーフも再登場します。軽快なマーチのテーマに乗って民謡風テーマが雄大に奏される様は壮観で、聴くたびに胸がいっぱいになります。

 個々の楽曲の造形は緻密、楽曲の配置も絶妙、極めて入念に設計された構成を持った音楽ですが、それでいてこんなに楽しいなんて。『惑星』は決してマグレ当たりではないのです。

 「間奏曲」と「マーチ」で現れる民謡風のテーマは、本物の民謡を引用したのかと思わせるものですが、実は「シャコンヌ」のテーマから派生した創作であるとのことです。ホルストは1900年代中ごろに、学友のヴォーン・ウィリアムズらと共にイギリス各地の民俗音楽の採取と研究を行っていますが、その優れた成果のひとつが組曲第1番であると言えます。

 この作品の民俗的な節回しの旋律の醸し出す独特の哀感は、イギリス音楽ファンには堪えられない魅力ではないかと思います。また、管楽器の表現力の豊かさも特筆すべきもので、吹奏楽の醍醐味を存分に味わえる作品でもあります。


****************************** 所有CD ***********************************
"WIND MUSIC of HOLST & VAUGHAN WILLIAMS" 
デニス・ウィック指揮 ロンドン・ウィンド・オーケストラ(1978年録音) ASV CDQS6021

フレデリック・フェネル指揮 イーストマン・ウィンド・アンサンブル(1955年モノラル録音)
 Mercury PHCP-20491 ※英米の吹奏楽作品集

2001.01.07
2003.01.20 所有CDを追加
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