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■アレクサンドル・グラズノフ (Alexander Glazunov 1865〜1936)

 弦楽四重奏曲第3番 ト長調 『スラヴ四重奏曲』 作品26 (1886-88年)


 日本でも『ヴァイオリン協奏曲』やバレエ音楽『四季』などが知られているロシアの作曲家グラズノフは、ムソルグスキーやチャイコフスキーのひと世代あとの人で、R・シュトラウスよりも1歳年下、フランスのデュカ、フィンランドのシベリウス、デンマークのニールセンとは同い年です。

 グラズノフは幼少の頃から音楽的才能を発揮し、16歳のときに最初の交響曲を発表して成功を収めました。リムスキー・コルサコフに師事したグラズノフは、ロシア五人組の民族楽派路線を受け継ぎつつ、交響曲や弦楽四重奏曲のような西欧の古典的なジャンルの作品も数多く作曲しました。20世紀に入ってからはペテルブルク音楽院の教職に就きました。ショスタコーヴィチも彼の教え子の一人です。

 グラズノフの8つの交響曲は割と録音に恵まれていると思うのですが、7つの弦楽四重奏曲はあまりCDを見かけません。私はごく最近になって下記のCDを店頭で見かけるまでは、グラズノフが弦楽四重奏曲を7曲も書いていたことすら知りませんでした。

 『弦楽四重奏曲第3番』は、2番目の交響曲を書いた1886年から1888年の間に書かれた曲で、スラブの民俗色の濃い曲想ゆえに『スラヴ四重奏曲』とも呼ばれています。20代前半の作品ですが、早熟な作曲家の作だけに十分に熟達した筆致で書かれています。4楽章構成で、演奏時間は28分ほどです。

 第1楽章は穏やかなロシア聖歌調の第1主題と、もの悲しい民謡調の第2主題から成るソナタ形式の楽章で、ゆったりしたモデラートのテンポによる叙情的な音楽です。第2楽章「間奏曲」はやはり古い聖歌を思わせる大らかなテーマによる美しい緩徐楽章です。

 第3楽章「マズルカ風」は第1ヴァイオリンが奏するひなびた旋律が印象的な主部と、粗野な舞曲調の中間部から成っています。その気分は演奏時間が全曲の3分の1以上を占める第4楽章「フィナーレ」でも受け継がれます。いくつかの民俗音楽風のテーマが自在に展開され、同じ作曲家の交響曲の中でもよく聴かれるような、お祭り気分の盛り上がりをみせます。

 前半二楽章のロシア聖歌調と後半二楽章の民俗調がそれぞれ魅力的な作品で、民族楽派的な音楽のお好きな方にお勧めです。一方、この種の音楽の苦手な方には、下記のCDに併録されている第5番ニ短調(1898年)のほうをお勧めします。こちらはベートーヴェンやメンデルスゾーンを思わせる西欧的なスタイルの作品で、”グラズノフのラズモフスキー”とでも呼びたい佳作です。

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『グラズノフ 弦楽四重奏曲全集 第1集』
 ユトレヒト弦楽四重奏団 MDG 603 1236-2(輸入盤)
 ※第5番を併録。

2004.06.21

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