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■アントニーン・ドヴォジャーク(Antonin Dvorak 1841〜1904)

 交響曲第4番ニ短調 作品13(1872年)


 ドヴォジャーク(ドヴォルザーク)は、交響曲第9番『新世界から』、チェロ協奏曲、スラブ舞曲集、弦楽四重奏曲第12番『アメリカ』などの名曲で、あまりにも有名です。彼がチェコの民族(国民)楽派の作曲家であり、スメタナとともにチェコを代表する存在であることも。

 ドヴォジャークの晩年の作品は優れて独創的なものであり、頻繁に演奏され親しまれていますが、それよりも前の若い頃の作品の中にも素晴らしい作品がたくさんあります。交響曲で言えば第6番よりも前の曲はあまり演奏されず知られていませんが、後年の作品ほどには個性的でないにせよ、十分に魅力的な作品が揃っています。今回はその中で私が一番気に入っている交響曲第4番を取り上げます。

 ドヴォジャークの第3番までの交響曲はベートーヴェン、シューベルト、ワーグナーの影響の感じられる大規模で雄大な曲想の音楽でしたが、第4番になるとブラームスの影響が顕著になってきます。構成がより簡潔なものになり、曲想もより素朴で民衆的な性格のものになっています。

 第1楽章はさざ波のような序奏で始まり、その序奏に導かれていかにもドヴォジャークらしい勇壮な第1主題が登場します。このあと現れるのはブラームスを連想させる穏やかな舞曲調の第2主題。第1主題との見事なコントラストを成しています。展開部もこの2つのテーマの交代によって起伏に富んだ展開を見せます。劇的な緊張感に満ちた展開は第1主題の再現に入ったあとも続きますが、この部分で第1主題のモチーフを奏するブラスは格好いいの一語に尽きます。

 第2楽章はワーグナーの『タンホイザー』との関連も指摘されていますが(確かに言われてみればという気もします)、ブラームスを思わせる部分もあるし、何よりもノスタルジックな夢に酔いしれるかのような憧れに満ちた音楽が感動的です。

 第3楽章は私の一番のお気に入りです。主部のおどけた感じの民俗舞曲調がとっても楽しくて、聴いていて思わず手を振って踊りたくなります。トリオはよりノスタルジックな趣の舞曲で、民衆の生活感情から滲み出した哀歓のようなものが感じられます。

 第4楽章は、いささかかしこまった感じのマーチ調の第1主題から始まります。このテーマは最初は辺りの様子を伺うかのように現れ、しばらくしてから堂々と奏されるのが面白いです。第2主題はワーグナー風の憧れの込められた美しい旋律です。これら2つのテーマが交互に現れてロンド風に展開され、音楽は高揚していきます。そして最後はお祭り騒ぎのようなクライマックスで締めくくられます。

 ワーグナーの影響によるロマンチックな表現、ブラームスから受け継いだ古典的な構成美、そして後のドヴォジャークに通じる民衆的な味わいとが無理なく結びついた魅力的な作品です。コンサートでももっと取り上げられるといいと思います。


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ヴァーツラフ・ノイマン指揮
 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 SUPRAPHON COCO-85080
スティーヴン・ガンゼンハウザー指揮
 スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団 NAXOS 8.550269

2002.07.08
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