■クロード・ドビュッシー (Claude Debussy 1862〜1918)
フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ (1915年)
フランスを代表する作曲家ドビュッシー(フラン紙幣の顔にもなった)については、今さら私が説明をするまでもないでしょう。斬新な響きと豊かなイマジネーションに満ちた作品は多くの聴き手を魅了し、後の世代の作曲家たちに多大な影響を与えました。
私は『牧神の午後への前奏曲』、『夜想曲』、『海』などの管弦楽曲、『版画』、『映像』などのピアノ曲も好きですが、今回は室内楽の傑作である『フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ』を紹介します。
晩年のドビュッシーは、様々な楽器の組み合わせによる6つのソナタの作曲を計画していましたが、『チェロ・ソナタ』(1915年)、『フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ』(1915年)、『ヴァイオリン・ソナタ』(1916〜17年)の3曲を作曲した後、この世を去りました。
これらの3つのソナタは、若い頃の作品と比べて引き締まった響きの音楽になっていて、渋い味わいがあります。『牧神の午後への前奏曲』や『映像』のような幻想的な音楽を期待して聴くと肩透かしを食いますが、聴き込むごとに他に替えがたい魅力の虜になってしまいます。
『フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ』は、それぞれ「パストラール」、「間奏曲」、「フィナーレ」というタイトルの付いた3つの楽章から成っています。古典的なソナタとは違う楽章構成であり、個々の楽章も自由な構成で書かれています。
第1楽章「パストラール」は穏やかな曲想で、昼下がりの田園のような気だるい雰囲気を帯びています。『亜麻色の髪の乙女』(『前奏曲集 第1集』の第8曲)を連想させるモチーフも出てきます。第2楽章「間奏曲」は陰りを帯びた旋律で静かに始まりますが、しだいに活気を増していき、優雅に戯れているような曲想が繰り広げられます。第3楽章「フィナーレ」では音楽はいっそう快活になり、軽やかな風のように通り過ぎていきます。
フルートの軽やかな音色、ハープの典雅な音色がよく生かされた曲ですが、ヴィオラの苦味のある音色が曲想を引き締め、音楽に深みを与えています。汲み尽くせぬ滋味を湛えた名曲だと思います。
****************************** 所有CD ***********************************
『ドビュッシー:3つのソナタ・神聖な舞曲と世俗的な舞曲』 ERATO WPCS-21066
フルート:ジャン=ピエール・ランパル
ヴィオラ:ピエール・パスキエ
ハープ:リリー・ラスキーヌ
※フランスの名手たちによる名盤。
雰囲気に溺れない演奏が晩年のドビュッシー作品の渋さをよく表現していると思う。
DECCA 452 891-2(タイトルなし、THE CLASSIC SOUNDシリーズの一枚)
フルート、ヴィオラ:メロス・アンサンブル(個々の奏者名は明記されていない)
ハープ:オシアン・エリス
※メロス・アンサンブルとオシアン・エリスによる近代フランスの室内楽曲集
ラヴェルの『序奏とアレグロ』、ルーセルの『セレナード』、
ロパルツの『前奏曲、海景と歌』を併録。
2005.02.28
|