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■クート・アッテルべリ(Kurt Atterberg 1887〜1974)

 交響曲第8番 作品48 (1944/45年)


 クート・アッテルベリは、20世紀前半に活躍したスウェーデンの作曲家です。技師の仕事の傍ら、9曲の交響曲を始めとする数多くの音楽作品を創作しました。

 彼の音楽は、基本的に19世紀的な民族楽派のスタイルの枠の中にあると言っていいでしょう(曲によってはマーラーの影響も感じられますが)。スウェーデンの民俗音楽の旋律を素材に用いたその作品は、極めて素朴で土臭い印象を与えますが、一方で近代的なオーケストレーションも取り入れていますし、構成力もなかなかのものです。

 交響曲第8番は、4つの楽章から成り、それぞれの楽章のフォーマットも至って正統的です。構成だけ見れば、アッテルベリの作品としては最も”古典的”と言えるかもしれません。
 第1楽章は、重々しい雰囲気の序奏部から始まり、かなり俗っぽい感じのリズミカルな第1主題と、言い知れぬ哀感の込められた叙情的な第2主題とが、ロマンチックで劇的な身振りによって展開されます。再現部で第2主題をトランペットで奏するところなど、いかにも切ない。一昔前の青春ドラマ的な味わいを感じます。
 第2楽章は全体に暗く幻想的で、濃厚な情緒に満ちています。中ほどに現れるチェロ独奏の表情が美しい。冒頭でイングリッシュホルンによって奏されるもの憂げな旋律が、後半に入ってからスケールの大きなオーケストレーションを纏って歌われるところなども感動的です。
 第3楽章は、いわゆる民俗舞曲調の音楽です。あるときは弦楽器によって軽快に、あるときはホルンによって勇壮に奏される舞曲の合間に、大らかに歌われる牧歌風の旋律が現れます。
 高らかに鳴り響くトランペットのファンファーレから始まる第4楽章は、極めて劇的でヒロイックな音楽です。第1主題の提示など、『新世界』の再来かと思ってしまいますが(調性も同じホ短調だけに)、一昔前のヒーロー物ばりの悲壮感漂う音楽にはただただ圧倒されるばかりです。そしてコーダではこの楽章の第1主題が第1楽章の第1主題と重ねられ、雄渾なクライマックスを形成します。

 大袈裟で時代がかった身振り、あまりにもストレートな感情表現・・・「俗っぽくて品がない」「20世紀の作品としてはアナクロニズムではないか?」という批判は当然あることでしょうが、私はそれでもいいのです。正直でいいじゃないですか。この音楽を聴いていると、「誰が何と言おうと、これが私の書きたい音楽だ!」という思いが伝わってきます。私はこういう音楽が大好きです。

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アリ・ラシライネン指揮 SWR放送交響楽団(シュトゥットガルト) cpo 999 641-2

2001.03.25
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