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メルマガ「映画日和」
   

流行なんかどうでもいい。面白いものは面白い。映画の知識ではだれにも引けを取らない筆者が、劇場やテレビで見た映画のことを自由に書きつづったメルマガ版映画日記。

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 映画日和 (マガジンID:0000151473)

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                             2005年3月15日発行
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映画日和: 創刊準備号
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                   http://www7.plala.or.jp./cine_journal
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これは創刊準備号なので、実際に発行したメルマガではありません。

■index■

 01: WHAT'S NEW:ベーラ・タルの新作はシムノンの映画化
 02: Cine-journal:『宇宙戦争』、エルロイ、『生血を吸う女』、『キシュ島の物語』
 03: VIDEO & DVD:ゴダールの『映画史』
 04: BOOKS
黒沢清『恐怖の映画史』
 05: POSTSCRIPT



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┃01┃WHAT'S NEW
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『ヴェルクマイスター・ハーモニー 』のベーラ・タルの新作は、ジョルジュ・シム
ノンの小説『ロンドンの男』の映画化に決まった模様。この小説の舞台はノルマンデ
ィーだが、ベーラは舞台をコルシカの港町バスティアに設定。2週間で古い港を駅の
舞台装置に変えてしまい、撮影を行うという。原作は43年にアンリ・ドコワンによっ
て映画化されているらしいが、日本では未公開のようだ。

 

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┃03┃
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▼『宇宙戦争』とオーソン・ウェルズ

この夏公開予定のスピルバーグ作品『宇宙戦争』が話題を集めている。この作品はH・
G・ウェルズの原作SFの2度目の映画化だ。最初の映画化作品は、バイロン・ハス
キン監督によって1953年に撮られた。小さいころあの映画をテレビではじめて見たと
きのことはいまだに忘れられない。あの不思議なかたちをしたUFOや、その奇妙奇
天烈な動き、コミュニケーション不能の異星人、全体に漲る終末的な世界観。ほとん
どトラウマというほど強烈な印象を残した映画だ。その後、ずいぶん昔にもう一度見
直したことがあるぐらいで、そのあとはたしか一度も見ていないと思う。なんだかあ
らためて見直すのが怖い一本である。ローランド・エメリッヒの『インデペンデンス・
デイ』が公開されたときは『宇宙戦争』の再来を期待したのだが、あれは「失敗作」
と呼ぶのもほめすぎになるぐらいのひどい出来だった。そのときのうっぷんは『マー
ズ・アタック』のティム・バートンがすぐにも晴らしてくれたとはいえ、スピルバー
グの『宇宙戦争』には、『マーズ・アタック』のシリアス版を期待したい。

ところで、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』には、ハスキンやスピルバーグなど比較
にならないほど偉大な映画監督の名前が結びついている。オーソン・ウェルズである。
H・G・ウェルズの原作をベースに、オーソン・ウェルズが音声を吹き込んだラジオ・
ドラマ『宇宙戦争』は1938年に放送された。このドラマは、ラジオのディスク・ジョッ
キー役のオーソンが軽音楽の番組を流しているところに、火星人が地球を侵略しはじ
めたという臨時ニュースが入るというかたちで、進んでゆく。ウェルズの実況中継の
あまりのリアルさに、大勢のリスナーが本当のことだと信じてしまい、全米がパニッ
クにおちいったという話は余りにも有名だ。

実は、このラジオ・ドラマは語学用の教材として発売されていて、わたしも買ってもっ
ている。ところが、この日記を書くときの参考にしようと本棚を探してみたところ、
わたしがもっているのは パート1 のほうだけで、後半のほうを買い忘れていたこと
に気づいた。しかも、そのパート1のほうの箱を開けてみたら、中のカセットが紛失
してしまっている。どこかに埋もれているとは思うのだが、探すのには時間がかかり
そうだ。テープに収録されているドラマは38年に放送されたオリジナルと同じもので
あるはずだが、パート1についているブックレットにはスクリプトが載っているだけ
で、詳しい解説がないので、はっきりとは断定できない。このカセットブックはどう
もいまは売っていないようで、その後同じ版元からこれのCD版がでていたようなの
だが、こちらもいまは品切れらしい(アマゾンの在庫が品切れなだけで、本屋で探せ
ばふつうにおいている可能性大。それにしてもCD版の方がずっとやすいというのは
納得できない)。伝説のドラマなので、CD版が手にはいるのならば、わたしもいま
のうちに買っておきたいと思っている。ちなみに、同じシリーズにはいっている『ヒッ
チハイカー』もオーソンが吹き込んだラジオ・ドラマ(タイトルは同じでもアイダ・
ルピノの『ヒッチハイカー』とは関係ない話みたいだ)。こっちはまだ聞いていない
が、評判はかなりいいようなので、これも手に入れておきたい。わたしにとってオー
ソンはなによりも声の人なのだ。



▼ジェイムズ・エ
ルロイと暗黒のアメリカ

イーストウッドの『ミリオンダラー・ベイビー』がアカデミー賞で作品賞・監督賞・
主演女優賞・助演男優賞の4冠を受賞したのは、まずはめでたい。スコセッシとディ
カプリオには残念だったが、ほかのところでもらいすぎるほどもらったからもういい
だろう。

ところで、その話題の『アビエイター』のなかでディカプリオが演じているのが、ハ
リウッドのプロデューサーとして名高いハワード・ヒューズの若かりしころであるこ
とは、もうすでにTVなどのメディアを通じて皆さんご存じのことと思う。ハワード・
ヒューズはハリウッドというか、アメリカの歴史上まれに見る変人として知られる人
物であるが、彼がその変人ぶりを遺憾なく発揮するのは、映画に描かれた青年時代よ
りはもう少し後になってからといえるかもしれない。いや、ふつうの人から見たら若
いころから十分変わり者だったかもしれないが、晩年になると政財界の大物やマフィ
アとも広いつながりをもつようになり、ますますスケールが大きくなってくるのだ。
まあ、いろんな意味でやっかいな男だったことは間違いない。

話は変わるが、ジェイムズ・エルロイの『アメリカン・タブロイド』という小説があ
る。この日記でもすでに何度かふれた。ジャンルとしては一応ミステリーということ
になるのだろうか。J・F・ケネディが大統領に就任する直前から、彼が暗殺されるま
での数年間をヴィヴィッドに描いた政治的犯罪小説、というよりも陰謀史観からとら
えられたアメリカ現代史とでもいうべき本だ。『アビエイター』では、プロデューサ
ーであったヒューズがハワード・ホークスを解雇して自らメガホンをとった映画『な
らず者』のエピソードも出てくるみたいだから、『アビエイター』は『アメリカン・
タブロイド』の約20年ぐらい前に時代設定されていると思われる。そんなことをな
ぜいうかというと、実は、この『アメリカン・タブロイド』という小説は、冒頭いき
なりハワード・ヒューズが自分にヤクの注射を打っている場面から始まるのだ。もっ
とも、別にヒューズが主役というわけではない。というか、これは主役がひとりもい
ない小説だと言った方がいいだろう。エルロイは、ケネディやFBI長官のフーバーとい
った実在の悪人たち、そして彼らのまわりを右から左へ、左から右へと(政治的にも
右から左、左から右という感じで)動きまわる小悪人たちを、まるで見てきたかのよ
うに至近距離から描き出していくのだが、その悪人たちのひとりとしてハワード・ヒ
ューズは登場するにすぎない。それでもこれを読めばハワード・ヒューズがどんな男
だったか充分伝わってくるはずだ。

『アメリカン・タブロイド』は〈アンダーワールドUSA三部作〉と呼ばれるシリーズ
の一作目に当たる。すでに二作目の『アメリカン・デス・トリップ』までは邦訳がで
ている。この三部作のまえに、ハリウッド・スターにあこがれて都会にやってきた女
性の惨殺事件を描く『ブラック・ダリア』にはじまる〈ロス暗黒史四部作〉というの
があって、映画化されて話題になった『L.A. コンフィデンシャル』もこの四部作の
ひとつだ。あの映画は結構評判が高かったが、原作を読めば映画のほうはオリジナル
をただ器用にまとめただけにすぎないことがわかるはず。この辺のエルロイ作品は、
特にアメリカ映画に興味がある人に是非読んでもらいたい。ここには闇のアメリカ現
代史と同時に、裏ハリウッド史とでもいったものが描かれているからだ。本など読ま
ないという映画ファンも、読んで損はないと思う。(聞くところによると、青山真治
もエルロイのファンらしい)


▼『生血を吸う女』

Amazon.com で北米版のDVD を大量に購入。さっそく、ジョルジオ・フェローニの
"Mill of the Stone Women"(『生血を吸う女』)を見る。黒沢清が『恐怖の映画史』
などで再三言及しているイタリアン・ホラーで、前から見たかったものだが、正直そ
れほど期待してはいなかった。黒沢清のパーソナルな思い入れがたっぷりはいってい
そうだし、まあ黒沢清を理解する助けになればいいかと思って、好奇心から買ったの
だが、これは意外とよくできた佳作だった。

ただし「生血を吸う女」という邦題にはちょっと首を傾げてしまう。たしかにこの映
画には、血がしだいに汚れていってやがて死んでしまうという不思議な病気にかかっ
ている女が登場し、彼女のマッドサイエンティストめいた父親が村の女をさらってき
てその生き血を娘に輸血する場面がでてくる。「フランケンシュタイン」を思わせる
その手術=実験の場面で、父親と彼に取り入って娘を妻にしようと思っている共犯者
の医者が、すでに死んでいる娘の汚れた血を機械で吸い出し、さらってきた村の娘の
生き血を同じ機械で娘に注入するのだ(でも、べつに自分で吸ってるわけじゃないで
すから、残念!)。すると死んでいたはずの娘は生き返るわけである。どうやらこの
女はこうした形で生と死のあいだを何度も行き来してきたらしい。はたしてこの女は
生きているのか死んでいるのか。

女が住んでいる風車小屋には、大学で美術を教えている彼女の父親が作った巨大なか
らくり舞台が設置されている。スイッチを入れるとその舞台の上を、魔女のような老
婆とか、首をくくられた女とか、不気味な姿をした人形たちが練り歩いていくのだ。
生命のない人形たちが、まるで生きているかのような妖気を漂わせながら、舞台をめ
ぐって消えてゆく。スイッチを切らなければ、彼らは舞台の上を永遠に回転しつづけ
るのだろう。これは、生と死のあいだを行き来しつづける女というこの作品のテーマ
とも見事に呼応する。考えて作っているとしたら、なかなかのものだ。

タイトルを見てきわもの映画を期待しているとがっかりするかもしれない。むしろ上
品で格調高い作品である。オランダが舞台になっていて、随所にカール・ドライヤー
の『吸血鬼』を思わせる場面が登場するのも興味深い。監督は意外とインテリなのか
もしれない。

▼『キシュ島の物語』

『キシュ島の物語 』:ジャリリの短編は悪くない。冒頭、男が電話をかけているとこ
ろ、面接の場面でのやりとり。ここだけが説明的な部分で、あとは注意深く見ながら
推測するしかない。どうやら男はキシュ島でガソリンスタンドの仕事を始めたらしい
(といっても、事務所をかねた粗末な小屋でひとり寝起きする、孤独な仕事だ)。貝
殻に溶かした鉛を流し込んでいるショットがなんの説明もなく映し出され、ついでつ
り下げられた鉛のクロースアップが挿入される。どうやら釣りのおもりを作っていた
らしい。ガソリンスタンドの仕事をするかたわら、すぐそこに見えている海で釣った
魚を売りさばいているのだ。一見ロビンソン・クルーソーのような世界が展開する。
しかし、男が横切っていく風景のなかには、文明の廃墟を思わせるさびた鉄くずの山
が広がっており、なにやら巨大な工場がうなり声をあげている。タイトルにもなって
いる「指輪」を男が買いに行くのは巨大なスーパーマーケットだ。キャメラは終始引
きの位置からすべてを冷ややかに見つめるだけだが、その一方で、決してグローバル
な視点から全体が提示されることはない。全体を組み立てるのは観客の仕事だ。

わたしはジャリリの映画はどうもいまいちピンと来ないのだが、この短編は悪くない
と思った。一言でいうと、短いのがよかった、ということになる。実際、映画の作り
方自体は『少年と砂漠のカフェ』となんら変わりないものだ。しかし、30分の短編を
そのまま2時間にのばしたら長編映画になるというものでもないだろう。ジャリリは
ひょっとしたら短編のほうがむいているのかもしれない。ちなみに、この作品は3人
の監督のオムニバスなのだが、マフマルバフともうひとりの短編は、大したことはな
い。両方とも口数は少ないが、しゃべりすぎなのだ。

 

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┃05┃VIDEO & DVE
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ジャン=リュック・ゴダール『映画史』

90年代ゴダールの総決算であり、20世紀最後のモニュメントである『ゴダールの
映画史』が、世界に先駆けて日本でDVD化された。5枚のディスクには、『映画史』
全8章が収められているだけでなく、DVDのデータ管理能力を駆使して、作品を見
ながら気になった映画の引用やナレーションの言葉、音楽や絵画の出典を瞬時に参照
できるように設計されている優れもので、その注釈画面は実に3,075ページにも
及ぶ。もはやこれなしでは『映画史』は語れないといっても過言ではない。定価は32,
000円と少々値が張るが、買っても損した気にはならない。

[定価¥32000/カラー(一部モノクロ)/268分(5枚組)/片面・二層ディスク/
1998年フランス/音声:フランス語 5.1chサラウンド/日本語字幕(のみです)/
4:3 スタンダードサイズ]

 

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┃06┃BOOKS
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『黒沢清 恐怖の映画史』(黒沢清・篠崎誠著、青土社)

『カリスマ』の黒沢清が、『おかえり』の篠崎誠を相手に、恐怖映画のすべてを語
り尽くす。ふたりの丁々発止のやりとりは、読んでいて非常に楽しいが、それ以上に
すごいのは、ここではかつてなかったほど精妙に恐怖映画の原理が語られていること
だ。これ以後は、ホラーを語るものはすべてこの本を出発点としなければなるまい。
黒沢清が、かれの敬愛して止まないトビー・フーパーとはじめて言葉を交わしたとき、
フーパーの口からこれもまた黒沢の愛する映画作家リチャード・フライシャーの名前
が真っ先に飛び出してくるというのもすごすぎる話だ。ただ、残念なのは、ここで語
られる映画の多くが日本では見ることが難しいということ。『生血を吸う女』が見た
い!

 

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┃07┃POSTSCRIPT
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【編集】 井上正昭
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