



751:花でなく実でなく茎や風でなく
種の香りに我一人なく
カップに紅の色なきはなぜ
752:あちこちで木々散らし染む大風の
8度の着替え勧める声に
重い腰上げ衣替えかな
753:風呂洗い久方にしてガラス越し
月みる月になりにけるかな
次は紅葉と露拭う我
754:幾千の時を超えたる思いをば
頬赤らめて一文字記すも
消える間近はわずか三行(みくだり)
755:草枕たびにしあれば涙から
まず始まりれどこころざし
実りあらんと行く道に華
756:遠き恋君を思ひてかわらじの
追い風に乗せいくら叫べど
こだまにもどる山はハードル
757:コインでもトランプでもなき我が心
マジシャンならば飛ばしてよすぐ
一目確かむ確かむる一目
758:ちらほらのわびさびに酔う雪もまた
般若の面になるぬるを知り
冬戦いし北国の人
759:食卓の椅子から寝床移すが衣替え
首掻きながら座る布団に
猫入ったりまた出たりかな
760:言の葉の衣ずれつなぐつづれ織
小さきマジシャン笑顔とし魅す
ただ一言も千金として
761:大掃除せねば気付かぬものありて
その手紙見て時過ぎたるも
おもいだしたる思いそめしを
762:松の内過ぎて背筋も伸びけるは
日々かわらじのすがすがしかな
庭にいでしもおりるつとめて
763:街の夜は雲を払いて月みえど
見つける星のむずかしさかな
さだめの人を探すが如く
764:久方の光ゆるみて甍(いらか)濡れ
つとめてになおうすやみつづき
昨日のことと思いけるかな
765:胸焦がし薄荷の味の飴いくつ
口の中には北風ふけど
その涼しさにまた君をおもふ
766:いたづらになびきおさめの髪なぜる
束ねようとする君の横顔
わずか凛々しくわずか悲しく
767:買わずとも態度でかくも客が神
だとするならば我認めたり
貧乏神に疫病神と
768:望月の笑み輝ける夜空見て
なぜに欠けたるごときにみゆる
君ひとりなくゆえに我泣く
769:辛きこと忙しきことおっくうに
君無きならば常套として
君あるがゆえたのしきとも思ふ
770:寒椿残暑の風に待ちきれず
心冬とていましばらくは
もゆる思いはまだスタンバイ
771:蝉時雨やんでせっかち木枯らしの
鳴き声ひとつ秋雲隠れ
物おもふ間もつれさらりけり
772:猫もまた夢見て翼あこがれて
うつつになれは君もう見えず
空飛んだかと見上げれば雨
773:薄墨の行きかふ道の月隠し
おぼろ月夜に似たる空とて
明日の雨風を憂う我哉
774:君はまた負けず嫌いを繰り返し
意地だけ張って友を失う
諭す私もメアド変えられ
775:降る雨は川のせせらぎ岩清水
命の母なる海とかえると
知れど恨みし時こそ多けれ
776:二人みた星なき空に咲く星を
けふはこの町の子供らとみゆ
君なき夏にもわずか横みて
777:望月のわずかな罅(ひび)にはじまりて
今別れては思い返すも
薄き幸有り貴方との日々