性の少数者に虹色の社会を 同一性障害の元男性活動
中日新聞2012年6月8日朝刊27面

 自分の性に違和感を持つ性同一性障害者ら、「セクシュアル・マイノリティー」(性的少数者)と呼ばれる人たちを支援しようと、名古屋市中区の元男性が、NPO創設やダイニングバー出店など、交流の場づくりに取り組んでいる。5月中旬には、性の悩みの電話相談に応じる「レインボー・ホットライン」を開設。「多様な性が尊重される社会になるよう、理解を広げたい」と願う。(名古屋社会部・島崎諭生)

バーで悩み相談 名古屋で「ホットライン」開設

 動いているのは、男性として生まれながら、女性として生きることを選んだ安間優希あんまゆきさん(42)。名古屋市の男女平等参画審議会で委員を務め、大学などで性同一性障害である自らの生い立ちを語ってきた。
 安間さんは、中学時代から姉の服をこっそり着たりしていたが、周囲には隠してきた。大学を卒業して政党職員となり、1999年に女性と結婚。子どもを3人もうけたが、父親として振る舞うことに違和感を覚えるようになった。
 2004年に性同一性障害者性別特例法が施行。この障害を紹介する報道が増え、「自分の違和感は、悪いことではないのだ」と気づいたという。
 08年ごろから同じ悩みを持つ人の集まりに参加し、専門医を受診。女性として生きることを決め、家族や周囲に告知して、戸籍名も変えた。


性的少数者を支援するためのダイニング・バーを営む安間優希さん=7日夜、名古屋市中区で

 

 妻とは離婚したが、今でも仲がいい。新たに「女性としての自分」を愛してくれる女性(28)に出会い、今月3日に2人でウェディングドレスを着て結婚式を挙げた。
 性的少数者の支援を始めたのは、社会の偏見や制約がまだ厳しく、生きづらさを感じるから。特に東海地方では、これまで当事者が声を上げる活動が活発ではなかった。
 政党職員を辞めたのを機に、昨年7月に仲間ら70人とNPO「PROUD LIFE(プラウド・ライフ)」を設立。12月には、内輪で固まりがちな性的少数者と「外の世界」をつなぐ場として、ダイニング・バー「Queer+s(クイアーズ)」を中区の新栄に出店した。
 先月開設した「レインボー・ホットライン」は、性的少数者を前提にした公的な相談窓口がないため、自分たちでつくろうと発案した。法律問題や恋人の暴力などの相談に、カウンセリングの指導を受けた支援者らが応じる。七色の虹のように多様な性を認める社会を目指そうと、名前をつけた。
 安間さんは「私は男性から女性に変わって、とても良かった」と言い切る。「性的少数者は『人並みの幸せは無理』と思いがちだけれど、権利は平等のはず。少数者が大切にされる社会は、多数者にとっても生きやすいことを理解してほしい」と呼び掛けている。
 問い合わせは
  レインボー・ホットライン=電052(931)9181(毎月第2、第4月曜の午後7~10時)。

性同一性障害
 身体上の性と、心の性が一致せず、著しい苦痛を感じる。原因は特定されていない。2003年に性同一性障害者特例法が成立。医師2人以上の診断が一致し、20以上で未婚などの条件を満たした場合に、戸籍上の性別変更が可能になった。条件の一つに子どもがいないことがあったが、08年の改正で、子どもが成人していれば性別変更できるようになった。