統合失調症・高木さん 遺作が詩集に
中日新聞2011年9月21日(水曜日)

 精神障害者の心の内を詩につづり、障害者の暮らしやすい地域づくりを願って講演活動をしていた愛知県日進市の高木雅康さん(49)が5月、自ら命を絶った。統合失調省を患いながら、障害者の力になろうとした雅康さんの思いを引き継ごうと、遺族が遺作の詩をまとめ、詩集を自費出版した。(佐橋大)

                      高木雅康さんの遺作の詩をまとめた詩集「まっぴょんの詩」


病苦の中で前向きな心 「仲間の力に」遺族が出版

ギターを弾く高木雅康さん=名古屋市内で(遺族提供)
 雅康さんは20代から幻覚に悩まされ、精神科病院への入退院を繰り返した。その後、日進市内の授産施設に通う中で、同じ病気の仲間との語らいを通じ、精神的に安定。病気による疲れやすさを抱えながらも、介護の仕事に就いた。
 病気の人たちが地域で暮らすときに大切なのは同じ境遇の人と語り合える居場所―。雅康さんは体験から実感したそんな思いを自作の詩に込めた。本紙は2007年11月20日付生活面で、その詩を歌に乗せて披露しようと準備する雅康さんを紹介している。
 兄(51)によると、雅康さんは介護の仕事や、そのころから始めた講演にやりがいを見せながらも、精神疾患への差別や病気でうまく生活できないことに悩んでいた。
 「僕の考える『働く』という事は、お金をもらって仕事をする事とはちがう、だれかの思いがだれかに伝わって幸せが一つ生まれる事が『働く』事と思う」。兄が雅康さんの死後、部屋を整理して見つけたメモには、弟の筆跡でこう書かれていた。

「詩に込めた思いをほかの人に伝え、幸せにしてほしい」。兄は、メモの言葉に雅康さんのそんな願いを感じとった。
 詩は、おどけた調子のものから、病気に伴う苦しさや、その中で前向きに生きる意欲を込めたものまでさまざま。
 「この世に生まれてきたのだから」という詩は退院後、地域でどう生活していこうかと思い悩みながら「でも、前向きに生きるぞ」という思いを詠んだ。
「この世に生まれてきたのだからしあわせになりたい 広い世界で 自分の足で ひとみを輝かせて」と繰り返すフレーズが印象的だ。
 別の詩では、「雑草を抜くって 病気と闘うことに似てるんだ(中略) 夢を追い続け自分を信じ続け 今日も雑草を抜き続ける 人生もきっと 雑草抜きと同じだろうな」とつづる。
 兄は「精神疾患には本人や家族にしか分からないつらさがある。弟と同じ苦しみを持つ人が詩を読み、一人でないと感じてもらえたら。病気でない人も、落ち込んでいるときなどに心に染みいると思う」と話す。
 雅康さんのニックネーム「まっぴょん」から決めた詩集のタイトルは「まっぴょんの詩うた」。表紙からは、ギターやバイクを愛した雅康さんの明るい人柄がしのばれる。雅康さんの遺作を使い、まず500部を印刷。最終的には3000部を刷る予定だ。
 希望者に送料負担だけで配付する。希望者は、ファクスか電子メールに〒住所、氏名、電話番号、ファクス番号を書いて、印刷元の合同印刷「まっぴょんの詩」係
= ファクス052(219)2035、電子メール mapyon@gdp.co.jp = へ。送料のみ着払い。