一人暮らし増加  孤独死 男性強い懸念
中日新聞 2011年7月

 2010年国勢調査の抽出速報が6月29日発表され、家族類型で一人暮らし世帯が初めてトップになった。専門家は「今後さらに孤独死の増加が懸念される」と話し、国や自治体による対策の必要性を指摘する。
 死後数カ月後に発見される遺体、室内に充満する腐敗臭…。孤独死の現場で、普通に見られる光景だ。
 東京23区で見つかった変死体の検案や犯罪死以外の行政解剖をする東京都観察医務院は、孤独死を「自殺や事故死、病死などのうち一人暮らしの人が自宅で死亡したケース」と定義。23区内での孤独死実態調査の結果を昨年公表した。
 それによると、09年に23区で孤独死したのは1990年の約3倍の3,875人(速報値)で、男性が約7割を占めた。女性は60代後半で目立ち始めるが、男性は50代前半から増加。発見されるまでの平均日数も、女性の6日に対し、男性は12日と大きく差がついた。
 「女性の方が地域での友だち付き合いが濃く、ネットワークも持っており、孤独死するケースが少ない」。大阪府内を中心に、孤独死や自殺など死後時間がたって遺体が見つかった現場を清掃する特殊清掃会社「ビー・アライブ」を経営する川上哲司さん(41)はそう話す。
 川上さんは、2,000件を超える現場を扱ってきた。遺体発見までに日数がかかることの多い孤独死の場合、夏場は匂いや遺体に群がる虫がきっかけで発見されることがほとんどで目を覆いたくなるような現場が多いという。
 川上さんは「町内会などのコミュニティーをもう一度つくるなど、どうしたら孤独死を防げるのか社会で考える必要がある」と訴える。

結婚未経験の50歳男性19%


みずほ情報総研の藤森克彦主席研究員の話

 調査結果を分析すると、50歳の男性のうち一度も結婚をしたことのない人の割合が19.4%に達する。20年前は5.6%だった。これまで一人暮らしの問題は、夫に先立たれた高齢女性が中心だったが、これからは妻や子どものいない中高年男性でも増えていく。一人暮らしには
1. 介護が必要な時に頼る人がいない
2. 失業時に貧困に陥りやすい
3. 退職すると社会的に孤立しやすい
―などのリスクがある。一人暮らしは誰でも起こり得るので、社会保障制度や地域コミュニティーを強化して、支え合いの社会を築く必要がある。