<産業化に向けての考え方>

1.現代日本の抱える諸課題の解決に向けて、バイオマス利活用に期待されることが大きい。

 項目

現代日本での課題

バイオマス利活用による期待効果

エネルギー問題

化石燃料依存率が高く、輸入に頼っている、

バイオマスの比率を上げて(20%が目標)エネルギーの選択枝を広げる。

食品問題

自給率が40%まで低下している。安全性確保に問題がある。

生成するエネルギー、肥料、炭酸ガスを含むガスと農業生産と利用する。

環境問題

・炭酸ガスによる地球温暖化
・生ごみなどの廃棄物量多く、処理費負担が大きい。

・バイオマスはカーボンニュートラルである。
・食品廃棄物などをマテリアルやエネルギーとして有効利用する。

地方振興

地方の人口減少

バイオマスを生かした事業創出のよる活性化、森林、里山の整備など

2.バイオマス関連事業の現状は次のようにまとめられる。

 これまでに公表されているバイオマスタウン構想で取り上げられている技術手段としては、
堆肥化、木質ペレット・完全燃焼、廃食油の
BDF化)の3つ(これらを3点技術手段Aと呼ぶことに
します)が多い。

3点技術Aを含む

3点技術Aのみ

メタン発酵

家畜用飼料製造

木質のガス化・発電など

マテリアル利用、資源作物など

市部(83)

86%

25%

51%

19%

32%

22%

町村部
(80)

82%

35%

30%

13%

6%

18%

全体(163)

84%

30%

40%

15%

19%

20%

 それに続くのは、メタン発酵、木質チップのガス化などの利用、そして食品廃棄物などからの家畜用
飼料の製造の3つである。このほかにいくつかの技術が取り上げられているが、個々の技術手段だけでは、
産業化という点では十分なレベルに達しているものは少ない。

3.各技術手段単独では、次のような課題を残している。 
これらの課題を、各プロセスについては最適の技術を選ぶこと、補助的な技術を加えること、
またプロセスを組み合わせて物質、エネルギーのやりとり、などによって解決してゆく必要がある。

    技術手段

 残された課題

堆肥化

需要が着いて来ていない場合があり、堆肥の高品質化(元肥、追肥などの用途に応じた品質調整)が求められている。

木質ペレットの燃焼

ペレットの値段が高い。生成する灰の6価クロムが含まれる場合がある。

廃食油のBDF

副生するグリセリンが利用できていない。

メタン発酵

生成する発熱量の高いガスの多くがプロセス内で使われ(保温や排水浄化用)、外販できるエネルギー比率が低い。

木チップのガス化など

ガス化技術の種類にもよるが、一般に生成ガスの発熱量が低く発電などに利用する場合、効率が低い。

食品廃棄物などからの家畜飼料の製造

原料である食品廃棄物や竹チップの変敗を抑制するために、使用できる原料が限られたり、工程費が高くなっている。

4.歴史に学ぶ、バイオマス関連事業の産業化に向けてのヒント

 江戸時代の奥出雲のたたら製鉄は、今で言う中山間地域において、幕末には生産量が年間約2万t(全国の生産量の50%以上)で、1万人以上が従事する産業を形成していた。そして、大正12年まで操業が続けられた。
 他の地方では農閑余業の段階に留まるか、あるいは農業などに悪影響を及ぼし幕末までに停止されたのと比べて、奥出雲のたたら製鉄の特色は何だったのだろう

(1)江戸時代の奥出雲たたら製鉄の歴史

年代

時 期 

内 容

1601 1637

たたら製鉄操業
停止期

廃砂で斐伊川水系の川底が高くなり洪水がおきやすかった。農業生産を守るために砂鉄採取が禁止され、たたら製鉄の操業も行うことができなかった。

16381690

産業としては
胎動期

1637年に砂鉄採取は解禁されたが、奥出雲のたたら製鉄は農閑余業の段階であり、生産量も日本の他の地方と比べてとくに目立ったものではなかった。

16901750

産業化の確立に至る時期(操業技術の進歩と、松江藩の鉄行政確立)

(1) 砂鉄採取法は、洗樋を作って人工的に砂鉄を比重選別して採取する方式に徐々に移行してゆく。これによって川に流れる土砂量は減少するとともに、砂鉄の採取比率も約2倍に向上した。
(2) 1726年、松江藩は「鉄方御方式」を定めた。これは鉄師のうち9氏に限ってたたら製鉄を許可し、先納銀制を課するが、その代償として藩は9鉄師の関連する村々の山をたたら付きのものとして保護し、管理も任せて便宜を与えた。鉄師はこの広大な山林を利用して樹木の成長にあわせて計画的に伐採し、山を荒廃させることなく必要な炭製造用の樹木を得られるようになった。

1750
以降

 
操業改善、
合理化の時期

それまでは、たたらの原料である砂鉄と木炭は、人の背でたたら場に運ばれてきた。炭は三里が限界で、それを越えると炭焼き場を追ってたたら場も3年から10年ごとに移動せざるを得なかった。1767年、鉄師が藩の軍馬の飼育を引き受けたことから、その馬を使って砂鉄と木炭の搬送が行われるようになり、鉄師はたたら場を最も適した地に固定することになった(永代たたら) 設備、操業技術が進んで鉄生産量が増えて当時の緩慢な鉄需要の伸びを上回ったことから、1795年頃から鉄価格の暴落が起こった。その対応にため、たたら操業の合理化、改善が行われた。

奥出雲たたら製鉄における課題と解決策

課 題

解決のための方法

@ 砂鉄廃砂(採掘量の97%を占める)の処分法(環境問題)

川を使った選鉱法から地上で人工樋を用いた方法に代え、得られた廃砂は、谷間に埋め立てて農地拡大に利用した。

A 製鉄用の炭を作るための樹木の確保(資源量確保)

松江藩への上納金と引き換えに藩有林が利用できるようになり、約25年サイクルで伐採場所を移動できるようになった。

B 砂鉄、木炭などの輸送

人力では限界があった(炭3里)が、藩の軍用馬の飼育を引き受け、それを輸送に利用した。

C 製品鉄の需要変動への対応

送風力アップによる4日操業から3日操業への変化などの技術革新で対応した。

(2)バイオマス関連事業の産業化のためのヒント

奥出雲のたたら製鉄

現代のバイオマス関連産業へのヒント



経営

システム

鉄師という、水田地主、製鉄、山林管理、牧畜を兼ねた総合経営者が、松江藩と相益関係を背景に、農山鉱蓄一体型の経営体制を築き、長期的視点に立って全体の最適化を講じた。

バイオマスタウン構想の進め方に書かれている「行政、企業,住民が連携し、広い視点,総合的視点から課題の摘出と解決を図り,経済性も満足するものに仕上げてゆく」ということを、左と同様の効果が得られるものにいかにして具体化してゆくか。



技術

システム

原料の安定確保、輸送などのハンドリング工程費削減、製造プロセス(物質、エネルギー利用効率向上)、主製品(需要変動対応も含む)、副生物の有効利用の各々の課題を解決していった。

 以下のことについて課題を抽出し、その解決を図る。
・原料確保。輸送・ハンドリングの効率化。
・プロセスの組み合わせによる物質や熱の有効利用の追求
・製品の需要変動への柔軟な対応
・副生物の有効利用

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