したい仕事

看護婦さんは、学生の時、一通り全科の事を学びます。まあ、得意・不得意はあるにしろ。なんといっても、国家試験には全科から出題されるからですね。でもそれ以前に、身体はほとんどの部分がそれぞれに関わりを持って存在しているので、一つのトコロだけを勉強しても、それはただの暗記に過ぎないのです。いろいろなことを知った方が効率的に理解できるのです。
卒後、総合病院に勤めてしまえば、院内で様々な科を移動するはめになるので、学生のうちに基礎的な知識だけでもまんべんなく入れておいた方がヨイのです。
私は遊んで、バイトしてばかりの不良学生だったけれど。

そんなこともあって、大抵の新人ナースは、勤めた職場の専門分野を先輩ナースに聞いたり、教科書を引っぱり出したりして猛勉強。私みたいに不マジメ学生だったりすると、新人時代に大変勉強しないと先輩についていけないわけです。
私も勉強しました。新人時代の1年で、看護学生3年分よりもたくさん。

そして、私は先輩ナースにたくさん影響を受けました。医学部付属の病院だったので、教育の上手な先輩ナースが多いことが幸いでした。
学生時代の平たい知識しかない頭に、老人看護の楽しさがどんどん積み重ねられていく。祖父祖母と暮らしたことのない私が、大家族の先輩にお年寄りを愛しく思う気持ちの持ち方を教わった。すると、まるで家に帰ってもそうしているかのように、おばあちゃんの患者さんに笑って声をかけられるようになるのです。毎日がすごくわくわく。
できるだけ勉強会には参加して、老人看護、デスエデュケーション、ターミナルケアについて知っていく。患者さんを見る目が変わったのが自分でも分かった位。

・・・結局その後、結婚して夜勤ができなくなり、退職してしまったけれど。あの頃のような、わくわくとする、自分の成長している音が聞こえるような仕事がしたい。
今私は消化器系のクリニックに勤めていますが、本当はターミナルケアがしたい。ホスピスで働きたい。
けれど、私が住むところには民間のホスピスはないのです。残念だけれど。
今している仕事も、それなりにやりがいがある。だけど、どこか釈然としない。


それは、いくら虫の居所が悪かったからといって、患者さんの目の前で看護婦に声を荒げる医師や、
医師がすべき(するのが当たり前なんですけどね)仕事を「看護婦が忙しそうだから俺がやってあげている」ということを、(患者さんの前なのに)平気で看護婦に向かって言う医師に愛想をつかしたから、というわけではありません。たぶん。

けれど、その瞬間私の心に、某スタッフサービスのCMミュージックが流れた事を、私は忘れません。 ・・・ほんとに、そんな瞬間があるんですよ。あのCM作った方って、凄い。
医療従事者は「してあげている」という言葉を言ってはいけません。それは、自分の仕事を冒涜する言葉です。
私は、そういう言葉が出てこない職場で、仕事がしたい。
小さな、ほんとに小さな願いです。

マッドナースのひとりごとTOPへ/ ベルタウン*マッドナース*プロジェクトTOPへ