香りと匂い

外来の患者さんというのは、生活をしていて、その一部で病院に来ている。
そこが、入院中の病棟患者さんと大きく違うこと。
学生の頃の実習もそうだけど、私の初めての職場も、病棟患者さんの生活の場だった。
もちろん禁煙だし、全館空調であったかだし、生活の全てが私達の仕事。
だから、あまり匂いを感じることはなかった。

よく言われることに、寝たきりの患者さんの清潔面に関して。
汚なそうとか、臭いそうとか。
かなり失礼な言い方だけど、これは、やっぱりそういうイメージがあるんだと思われる。
でも、実際はそうではないのだ。
寝たきりの患者さんの部屋というのは、看護婦の訪室回数が多い。
やっぱり看護婦だって人間だから、勤務変更も含めて何回も何人も訪室していれば、
患者さんの身体に対して敏感になる。視覚や臭覚を通して。
「ああ、汚れてきてるなあ」と思えば、日々のケア(患者さんの身体を拭いたり、手足を洗ったり)に 励むのは当たり前のこと。そうすれば、患者さんの身体はとても良い香りがする。
それは、とても爽快感を感じる瞬間だし、寝たきりでも、お年寄りでも、せっけんの香りのする人と接するのは気持ちが良い。
だから、病棟で働いている頃は、香りをここちよく感じることはあっても、嫌な気分になったりすることはなかった。

今現在。外来onlyのクリニック勤務で、実際ちょっと匂いに敏感になった。
外来で良く見かけるオシャレな中年女性いわゆるおばさん達。
なぜあんなにも香水をふりまいてくるのか。
なんで、病人いっぱいのトコロへ、待ち合い室中がぷんぷん「臭う」ようなイデタチでやってくるのか。
受付の医療事務員が嘔吐を催すような、そんな香水はすでに「香り」ではなく「臭い」だ。
具合の悪い人にとっては強すぎる香水は嘔吐を促す作用があることを、誰かから教わらなければわからないのか。
彼女だって、つわりの時は美味しい御飯の炊ける湯気にさえ嘔吐していたはずなのに。
彼女はそうでなかったとしても、身の周りの誰かしらが経験したことあるんじゃないのかしら。
なんで、それを忘れてしまうのか。
なんで、病院は病人が集まる場所だということを忘れてしまうのか。

せっけんでも、清潔ならば、香りに、
しかし、過ぎた香水は臭いになるのです。

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