告知

私の住んでいる地域は農家が比較的多く、
農閑期の晩秋から冬にかけて、患者さんが増えます。
主に、市町村の健康診断で異常を指摘された患者さんで、
二次検診を受けに来るのです。
その健康診断の受け方も色々。
毎年定期的に受けている患者さんから、
初めて受けて、異常の指摘を受けた患者さんまで、本当に色々。

毎年、冬は何故か癌の患者さんが見つかる割合が多いと感じるけれど、
それには健康診断を受ける絶対数が増えるからという理由があるようです。
ギリギリまでめんどくさがって、
年末に近くなってやっと重い腰をあげる患者さんも結構な数いますが。

今年の冬も次々と、癌の宣告をされる患者さんを看ます。
ウチのクリニックの院長は基本的に告知をする方針なので、
約9割の患者さんには告知をしています。
患者さんは主に診察室で告知を受けますが、
失神してしまう患者さんもいます。
泣き出す患者さんもいます。
呆然として、医師の言葉がほとんど耳に入っていない患者さんもいます。

告知を受ける患者さんの場面に遭うと、いつも思う。
誰だって、なりたくて病気になる人はいない。
否定したくて、嘘だと言って欲しくて、誰かに悔しさや怒りをぶつけたい。
そんな気持ちが言葉や行動の端々に感じられます。

幸い、(早期癌で)手術をすれば治る事例が多いのですが、そう言われた時の
患者さんの考え方で、術後の経過が大きく違うことがあります。
「事故にあうより、心構えができるから、儲けもん。」
「こういう時の為にガン保険入っといてよかったよ。」
そう言って大きな一歩を前に踏み出せる患者さんは、本当に経過が良い。

私がもし癌になったら、どうなるだろう。
告知されたら、私が出会ってきたたくさんの患者さんのように、
前への一歩を踏み出せるだろうか。
今のうちに、「先輩」たちの病気への立ち向かい方を、いっぱい知っておこう。
あの患者さんやあの患者さんのように、毎年元気に「もう◯年経ったのよ」って笑って言えるように。

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