みちのく国際ミステリー映画祭1998in盛岡
ニューウェーブセッション
京極夏彦&斎藤純+明石知幸(映画監督)
6月20日(土)14:00〜15:30
大通りLILIOイベントホール

◇Movie Index
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*ほぼ聞き取れたのですが、どうしても聞き取れなかった部分は「・・・」にしてあります。ご了承下さい。

◆ミステリー談義 Part5
斎藤 そうですか。高橋克彦さんがね、えーと『総門谷』だったかな、映画化させて下さいっていうどっかからお話があった時に、スピルバーグが監督するんだったらいいよ、って(大爆笑)なんで笑うの?ここはさ「オー!」っというところなのに(笑)とお話してましたけど。
明石 それでそれっきりになっちゃった?(笑)
京極 『総門谷』の映画とか見たいですけどね。じゃ許してくれないですね高橋さん。
斎藤 スピルバーグを連れてこないと。映画会社の方は椅子蹴って帰っていったそうです。それは僕の創作(笑)原作通りじゃないとダメだ!って怒ったりしてね。
京極 いや、でも原作通り難しいでしょうね。
斎藤 難しいですね。(明石に)どうですか?
明石 いやぁ。難しいでしょうね。
京極 スピルバーグに勝ちます!という触れ込みで、行けば。
斎藤 大丈夫ですよ。もう映画の見方教わったから。
明石 いや、着ぐるみだったら勝てるんじゃないかと(笑)やっぱりアメリカには着ぐるみの技術あんまり。やっぱりそれは日本のほうが上じゃないかなと。
京極 あーそうですね。そうやると着ぐるみは日本にかなわないわけですよね。いくら高速で走ろうとゴジラはゴジラですものね。あんな鳥みたいなヤツ許せませんよ((笑)そして観客拍手)
明石 ぜひ私、復活ゴジラ期待してるんですけどね。
京極 そうですね。あれはあれでいいですけど、あれだったら別に『GODZILLA』ってつけるこたぁねぇだろ。ほかの名前つけてくれよと。ちょっとその辺はね。
明石 でもなんかあれもキャラクター戦略があるみたいですね。ゴジラの。やはりあの日本のゴジラに近いかたちでやっちゃって、それでまた売るじゃないですか、向こうは。フィギュアとか。弁当箱とか(笑)
京極 弁当箱ありますかね?(笑)
斎藤 弁当箱あるかどうか分かんない(笑)
明石 そういった場合なんか、あれが似てるとね、日本の、向こうのゴジラも著作権とか肖像権に抵触するんじゃないかと。それであそこまで変えちゃったんじゃないかという邪推をする人もいる。
斎藤 勉強になりましたねぇ。こういう裏話が楽しいんですね。知らない話をどんどんしてもらわないと。使えない、じゃなくて使いづらい役者さんとかさ。「そんなこと俺にやらせるのか?」みたいな(笑)
京極 (すかさず)館さんどうでした?(笑)
明石 いや(言葉詰まる)
斎藤 (爆笑)そこを言いたいだけど、名前を出すと言いづらいだろうなぁと思って〜。いい?もう?
明石 全然。はい。(強調するように)もう素直にやっていただきまして。
京極 あれでね、ぼく館さん別の面、出したとというか、監督が引き出したというか。芸の幅が広がった――
明石 (京極さんの言葉に被せるように)あははははっ。
斎藤 あの〜そう思いますよ。それで大沢在昌さんの『新宿鮫』BSでやった時に館さんが鮫島をやったんですけど、あれもちょっとそれまでの館さんの雰囲気と違う、芸暦の幅のある感じだったんでね、あれもやっぱりね『免許がない!』を通過したあれじゃないかなと思って。
明石 すごい役者さんだと思いますよね(笑)
(館さんのモノマネして)「監督、汁粉食う?」(笑)
京極 汁粉ですか?
明石 汁粉なんです。
斎藤 甘いもの好きなんですか?
明石 甘いもの大好きなんですよねー。だから例えば石原プロがCM、ぜんぜん関係ない話してすいませんねー(笑)だからCM撮影やってますよね。その時に、館さんなんかがお出になってると、もう1ステージ空けさせるんですよね。1ステージ。で、何をやってるかっていたら、大釜で汁粉炊いてるんですよね(笑)
斎藤 すごいねー。
京極 大釜で炊きますか?
明石 大釜で炊いてますよ。汁粉。
斎藤 軍団、に食べさせるわけ?あ、スタッフとか。
京極 1人で食うんじゃないでしょうね(爆笑)汁粉を大釜で炊いたら大変な量ですよね。はぁ。
明石 モチもハンパじゃないですよね。あれねぇ。
斎藤 モチもねぇ(笑)
明石 何を言ってんだか分かりませんっ!(笑)
斎藤 それを食べたんですか。
京極 ミステリーな話ですねぇ(爆笑)
明石 (京極のフォローに)ありがとうございます。
京極 杉本(哲太)さん、はあのー僕、今日見てて、すごく杉本さんらしいんだけども、今までちょっと、そうじゃないかなと思っていたのになかなか引き出せなかったところが出てたような気がするんですけど。いかがでした?
明石 だいたいもう現場でけっこう混乱に陥れましたから。
京極 難しい約ですよね。
明石 ええ、それをこう、どういう感情の流れでやってくれとか、大づかみであまり説明しないで、何にも言わないで現場でいきなりポッとやったりとか。けっこうそういうかたちでやりましたね。で、本人もなんかかなりやっぱり不安感を持っていたので、そういうのがけっこううまく出たんじゃないかなって気がするんですけどね。
京極 あの、たぶんね、役柄としてあとから考えると、すごく難しい役だと思うんですよ。自分を定められないじゃないですか。だからやってるほうもやりやすかったのかどうだったのか分からない話だと思うんですけど。じゃあ指導なしという、策があったんですね。
明石 最初に先入観を与えないで、安心感を与えないように、というかたちでやったんですけど。
京極 何ていうかなぁ。ストーリーとかね、あんまり関係ない。で、ディテール自体も関係なくて、エピソードの繰り返し、その反復と積み重ねで全然違う風景が見えてくるんですよ。あのへんの手法が、僕が気にしてるやり方と近かったので、けっこう衝撃がありましたね。あれはまず脚本がそういう脚本だったんだろうけれども、それをまぁ明石さんのほうでね、ああいうかたちでたとえば、最初と最後に黒い画面が数秒間、何コマか入ってて、あのあたりからね、展開の予測がされるっていう作り方がすごくスタイリッシュで面白かったです。計算されて全部やってるんだなっていう感じが僕はすごく受けたんですね。もちろんそれで難しいのは、計算しないでやっていても計算したように作っちゃう人っているじゃないですか。結果的にはものすごい計算通りっていう。感性なのか分かんないけど、そういうタイプなのかどうかご本人を知らなかったのであれなんですけど、僕が見るに構造的にしっかりしたスタイリッシュな作り方だなって。言ってみれば大作っていうスケールの作品じゃないですよね。舞台は1つの町で人数も少なくて、でもスケール感がすごくあったので感心しました。ああいう作り方って多分これからけっこういいんじゃないかと思うんですよ。他の作品もまぁ最近忙しくてあまり日本映画を見てないので分かんないですけど、ああやっぱ映画はいいなぁと。
斎藤 あの何となくほのぼのっていうか、ほんわかした雰囲気なのに、緊張感がこう漂っているという感じがしましたね。
明石 はい。ずっと緊張してますよね。
斎藤 そうでしょう?あれちょっと不思議なのね。
明石 お客さんを疲れさせる映画とずいぶん怒られてますけど(笑)
京極 確かに疲れるには疲れますよね。緊張しますからね。観客に緊張を強いる映画はいい映画ですよ。だから弛緩しちゃうと寝ちゃうわけでしょ(笑)
明石 睡眠不足だった京極さんが寝なかったということは喜んでいいんですね(笑)
斎藤 最大級の誉め言葉ですよ(笑)
明石 「俺が寝なかったんだ!」とこういう言い方して(笑)
斎藤 そのちょっと思い出したんだけど『カサブランカ』って、あれもあの、役者さんにホントに脚本が遅れたのかどうか、っていう話があって。バーグマンなんか「あたしはどういう演技をしたらいいの?」と聞いて「いや、脚本がないから分かんない」とそういう状態でやったから、あの映画の全体のテンションが出来た、集中できたと聞いてますけど。
明石 でも香港映画って、だいたいもう当日の朝になんないと脚本出てこないですからね(笑)
斎藤 「アー!」とか「チャー!」とか言ってるだけだからいいんじゃないですか(爆笑)
明石 じゃなくて、結局ね台本作っちゃうと、盗んで先作られちゃうんですよ。
斎藤 きびしい〜。
明石 だから、頭の中にあっても、脚本に、出さない。当日じゃないと。
京極 そんなことすんですか。わぁ〜。(←この言い方に観客笑う)
明石 だからアクションなんて。もうだいたいこう香港映画の現場見てると、ライターが横で書いてるんですよ(笑)
京極 それ、凝り過ぎかもしれませんね(笑)シーンやってる時に次のシーン書いたりして。
明石 書いてますよね。そういう作り方してますよね。昔『大福星』っていうジャッキー・チェンの映画ありますよね。あれも現場で作って。
京極 ジャッキー・チェン出るようなああいうやつもそうなんですか?
明石 そうです。(全員「へぇ〜!」)
斎藤 スタッフは。まぁ役者はいいかもしれないけど。
京極 交番表とか作れないじゃないですか。
明石 作れないですね。だからもうラフですもんね、だって。(ロケも)現場で走ってて「ああ、ここ!」って。
京極 じゃあなんとなくスケジュールおさえて、どことなくロケーションすると(笑)そういうことなんですねぇ(笑)それで作るのもアリかもしれませんね。
明石 それでだから、アクションなんかでも、あの、こう、流れるようなアクションじゃないですか。段取りってやらないんですよ。
京極 え?
明石 もう動きを最初から決めてやんないんですよ。
京極 ホントに戦ってるとかいうんじゃないでしょうね(爆笑)
斎藤 血だらけになっちゃって(笑)
京極 血糊いらずとかそういうんじゃないでしょうね(笑)
斎藤 さすが香港映画!
京極 あれ、でもじゃあ殺陣の段取りとか、その場で何となく決めちゃう?
明石 そうなんですよ。だから1アクションずつやってんじゃないかな。
斎藤 編集でじゃあ繋いでるいくわけ?
明石 というかね、1回やって、例えば(殴られるシーンを左から撮るゼスチャー)こっちで殴ったのを撮ったら、次に何をやるかっていうと、キャメラこっちで(今度は右から同じ殴られるシーンを撮るゼスチャー)だからホント、それのほうが逆に僕なんか面白いなっていうのありましたけどね。
京極 確かにそうですね。日本とか殺陣師が殺陣つけるってのがあるから、ワンカメでずっと流れるように被写体を追うっていうのが基本じゃないですか。それって舞台の感覚だから、映画だと1アクションにこだわりたいとかいうほうがあるはずなのに、意外とだから日本映画って喧嘩のところとかそんなに。迫力はあるけども、映像的にすごいっていうのが。拳一発に込めるその(笑)
明石 瞬発力というか。
京極 監督の拳一発に対する愛がない!という。向こうはやっぱり拳法が好きだからあんなにやるのかなぁと思ったら違うんですね。一発で行って撮っちゃうんですね。
明石 そうなんです。
斎藤 じゃあ僕でも京極さんでもアクションスターできるわけですね(笑)
明石 できるんですよねぇ。
京極 僕は無理でしょう!(弱々しく)身体弱いですからねぇ。
斎藤 編集にお任せで(笑)
えーっとすみません。こんなバカな話をしてる間に(笑)時間が来てしまいました(観客「え〜」)ご不満は多々あるでしょうけれども、何か最後に一言ずつうかがってこの回を終了したいと思いますが。
京極 (吃りながら)な、なん、何のために来て、何を喋ったのか(笑)ちょっとよく分からない状態で、たいへん申し訳ないんですけれども。ま、地方のね、こうしたそのイベントっていうのは、僕は大事だなあって思うし、日本映画もたいへん好きなので(笑)こういうことはどんどんいろんなところでやってほしいと思います。せっかくこうしてたくさんの方がね、集まっていただいたんですから、この機会に、少しでも多くの、日本の映画を見てくださいと。なぜ作家の僕が言う?っていう(笑)まぁあの日本映画がこう盛り上がってきてですね、名作がどんどん生まれるくると、とても僕は個人的には嬉しいんですけれども。僕として、何の利益もないんわけですけど(笑)まぁただそのそういうことで、そういういい映画に触れると刺激になりますからね、また違った人生がひらけていくかもしれないな、と思いますので、みなさん映画に、よく、理解と、礼節を持った観客と(笑)何よりも愛をということで(笑)今日はありがとうございました(大拍手)
斎藤 監督からも。
明石 どうもみなさん途中から出てきまして、京極さんに喋らせずにベラベラ喋ってすいませんでした(笑)目的が違うだろ!って怒られそうです。まぁあの京極さんもホントにいろいろと。斎藤さんも日本映画の正しい見かたというのをみなさんあの、いろいろご指導なさってくれたので、これから皆さんが(強調するように)愛を持って!日本映画を見て下さることを期待してます。それと僕もあの、何とかあの、難しい漢字いっぱい勉強して、京極さんの原作で何とか映画撮れるようにがんばりたいと思いますので、ご期待下さい!ありがとうございました!(大拍手)
斎藤 これは映画のイベントですから、僕とか京極さんは刺身のツマ(笑)おまけですので。えとですね、ほんとに今日はこんなにたくさんありがとうございました。朝から並んで整理券を手に入れという方も聞いてます。それと入れなかった人が下でモニターで見てるということですいませんでした。ありがとうございました。で、この映画祭は、170人くらいのボランティアのスタッフのみなさんで、うまく進行しているんですね。で、今日もたいして混乱もなく、これだけの人が集まってもできたのはみなさんの協力もあったし、スタッフの力もあり、帰る時にですね、ジャンパー着てますから「ありがとうございました」って言って(笑)帰って下さい。どうもありがとうございました(大拍手)
進行 ありがとうございました。それではこれでミステリー作家談義、終了させていただきたいと思います。それではゲストの方にご退席いただきますので、どうか拍手で(大拍手)ありがとうございました。

(斎藤さん、明石さんの順に退場。京極さん、大きな花束を貰い握手)
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